【新卒営業まや日記】~四杯目~うっかり惚れそうに……昭和のプレイボーイと電気ブラン
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明治創業のバー、ということで、「きっと渋いおじさまたちがしっぽりお酒を嗜んでいるのだろう…」と思い店内へ入ると、中は超満席!50席を超える広い店内は、バーというよりレトロな洋食屋さんのような内装。大き目のテーブルに相席するような席が多くみられます。浅草のおじさま、おばさまに加え若い方も多く、予想以上の活気にあふれていました。
入口で食券を買うスタイルのようで、私はもちろん名物の「電気ブラン」を注文。事前に編集長から「すごく不味いらしい」と聞いていましたが。一体どんな味がするのか……ドキドキです。
6人掛けの机に相席させてもらい、いざ、電気ブランに挑戦!口に入れた瞬間は薬っぽい甘さを感じますが、すぐにきついお酒の風味が広がり、体がカッと熱くなります。電気ブランの「電気」には、明治時代に目新しいものを「電気○○」と呼んでいたことと、度数の高いことから「電気」のイメージにぴったりだった、という二つの由来があるそうです。
不味いか不味くないかで言ったら……言うほど不味くないというのが正直なところ。ビールをチェイサーとして飲むのが粋だそうで、ビールと交互に飲んでみることに。……電気ブランの味が強すぎて、ビールが水のごとく飲めちゃいますね!恐ろしい!
初めての電気ブランを楽しんでいると、「電気ブラン美味しいだろ?」と話しかけられました。同じテーブルに座っていた、仲が良さそうな老夫婦と、舘ひろし似のおじさまです。赤ワインのボトルを空け、コルクを箸置きにしてお酒を嗜むさりげない作法……どうやら常連さんのようです。
舘ひろし似のおじさまは、御年72歳にして彼女が8人いらっしゃるそうです。なんていうプレイボーイ!最近は彼女たちに、「俺は奥さんもいて、彼女も8人いるような男だからやめておきな」と説得し、4人に減らしたそうです。すると老夫婦の奥様が「こんな男やーよね」とバッサリ。旦那さんは静かに笑っています。この凸凹3人組の掛け合い、面白いぞ……!
そんなプレイボーイおじさまが初めてこの神谷バーに来たのは、おじさまが学生の頃。当時お店には大人の兵士さんであふれていたそうで、兵士さんに「お前らは自由に道を選べていいよな」と言われたことを今でも覚えている、とおっしゃっていました。「だから俺は、自分で決めた道には命をかけられる」と、ありがたいお話をいただきました。
「最近の若い男は軟弱だ!女を口説くときは…」と言ってじっと無言で見つめられました。少年のようなまっすぐで綺麗な目です。そしてグラスをすっと出してきたので、少し戸惑いながらグラスを合わせると、そのまま一口お酒を飲み、また無言で見つめあい……たっぷり時間をおいて、「これだけでいいんだ」と一言。
うっかり本当に惚れそうになったところで、奥様が「かっこつけちゃって!やーねえ」と目を覚ましてくれました。プレイボーイおじさまは笑って「かっこつけてるんじゃない、かっこいいんだ」と冗談を返します。彼女が8人いるのも納得、これぞ昭和のプレイボーイ!文句なしでかっこいいです。
このままだと9人目の彼女に立候補してしまいそうだったので、電気ブランを飲み切ったところで失礼することに。浅草のおじさまと飲むにはまだまだ修行が足りませんでした。毒の一つも吐けません……出直してきます!
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