一般社団法人電気通信事業者協会(TCA)が“歩きスマホ”の実態および意識に関するインターネット調査を実施したところ、スマートフォン保有者の半数近くが習慣化し、3人に1人はぶつかりそうになったことがあると回答した。
危険性のある“歩きスマホ”。特に日常的に利用する駅施設内でトラブルが起こるケースが多いことから、TCAは東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)と協力し、11月2日~14日の期間、『やめましょう、歩きスマホ。』啓発キャンペーンを実施する。
今回のプロモーションや“歩きスマホ”の実態について、TCAの矢橋康雄氏とJR東日本の本室匡一氏に話を聞いた。
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新宿駅でのキャンペーンロゴ入り特製ウェットティッシュのサンプリング
TCA側も「2014年12月に『歩きスマホに関する意識実態調査』というアンケート調査を実施したところ、特に駅の通路や施設といった場所で使用している人に危険を感じたことが多いという結果が出たので、特に駅施設では積極的な啓発活動を行いたいと思っている」と、両社の思いが一致した形になった。
実際の駅構内などにおける“歩きスマホ”のトラブルは、「正確な件数を出すことは難しいが、“歩きスマホ”に起因するケガなどが年間通してみると起こっていることは事実。2年ほど前には駅のホームで小学生がながら歩きにより線路に転落する事故も発生している」(JR東日本・本室氏)。そういった事例もあり、JR東日本でも問題意識を抱えていたという。
TCAが実施したアンケートによると、10代が特に多くはなっているが、年代性別関わらず、ほとんどの人が“歩きスマホ”が習慣化。ぶつかりそうになった、ぶつかられそうになった経験があるという回答も相当数にのぼっているため、利用者も生活する中で“歩きスマホ”に関して意識したことはあるようだ。
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新宿駅でのポスター掲示
携帯電話は、いわゆる通話をするツールだったが、スマートフォンの進化によって更に高機能となり、今では会話以外のメールやLINE等でのコミュニケーションや情報を検索するツール、読む、見るツールへと大きく変わってきている。先日の災害時にもTwitterで救助を求めるなど、災害時には生き抜いていくツールにもなり、以前と比べてより肌身離せないものになっていることも確かだ。
TCAの矢橋氏は、「基本的に通信というのはリアルタイム性があるものなので、とりあえず連絡が来たらすぐ見たい、という欲求が強いのではないかと思う。特に携帯電話が普及した世の中が普通である若い世代はそれが強い。“既読スルー”といった言葉もあったり、すぐに返事をしなければ怒られてしまうと考える人も多いのでは。そういったリアルタイム性に加え、スマートフォンは画面も大きく精密なので、夢中になって没入しやすい傾向があるのかも」と、危険意識を持っていても“歩きスマホ”をやめられない理由を分析する。
スマートフォンやタブレットなど、多様化するモバイルデバイス。“歩きスマホ”に限らず、携帯電話やスマートフォンなど、公共の場で使用する上でのモラルの問題は、車内での通話のマナー、最近改定となった優先席での携帯電話使用マナーなど、利用者にとって非常に関心度が高いとJR東日本の本室氏は話す。
「特にお客様から指摘を受けるのが、車内での通話問題。車内でのスマートフォンは許せるが、通話だけは鉄道会社としても利用者にきちんと伝えて欲しい、という反応が多い。そして最近増えてきているのが、“歩きスマホ”に関する意見。不特定多数の多くのお客様が利用する鉄道では、様々な考えを持つお客様がいらっしゃる中で一定のマナーをご理解いただき守っていただくことがとても大事なことだと考えている」(JR東日本・本室氏)
■地道にモラルとして確立できるよう努める
今回のキャンペーンでは、首都圏主要路線トレインチャンネルにおける動画広告の実施、駅構内でのポスター掲出、車内中吊り広告、キャンペーンロゴの入った特製ウェットティッシュを配布するなどの各種PRに加え、キャンペーンロゴ入りの特注トイレットロールを山手線主要駅構内のトイレに設置するなど、鉄道利用者に広くキャンペーンを知ってもらう工夫を施している。
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キャンペーンで配布するウェットティッシュと駅に設置されるトイレットロール
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JR東日本の本室匡一氏(向かって左)とTCAの矢橋康雄氏
また、“歩きスマホ”でよく言われるのは、ぶつかられそうになるのと、自分が“歩きスマホ”をしていて人にぶつかりそうになるという、被害者と加害者が入れ替わる可能性が高いということ。TCAでは、誰もが加害者になる可能性があることを理解してもらい、少しずつでもモラルが浸透していくことを目指す。
今回の啓発キャンペーンは11月14日で一旦終了となるが、TCAとJR東日本では今後も“歩きスマホ”に関して引き続き利用者に呼びかけていく方針だ。