“JASRAC独占”の対抗軸になれるのか?新会社「NexTone」設立
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荒川氏:管理システムなどで、2社の開発スタッフが10数年かけて培ってきたノウハウが蓄積されている。権利者には何が必要で、どう適切に提供できるかといったもの。イーライセンスはインディーズ系アーティストとの接点が強く、JRCはメジャーなミュージシャンとの接点が色濃かった。同じ著作権管理事業とひと口に言っても、それぞれが違うアプローチで事業を育ててきた。それを統合することでシナジーを得られる。また周辺事業でもメリットがある。著作権管理は委託してないけれど、サービスの一部を利用している、そうしたお客様に対して、より強化したサービスメニューを提供していく。入り口を増やしていくことで、著作権管理事業へと誘導できる。
--- 年内に移管できる楽曲数は?
阿南氏:音楽著作権の移管はJASRACの約款上、3年に1回しか認められていない。全ての著作者・共同出版者に署名、捺印いただいた書類を2015年12月28日までに提出することにより、来年4月1日からNexToneで管理できる。2015年12月末を逃すと、次は2018年12月末まで待たなければならない。株主や文化庁との調整などに時間がかかり、作業を開始できたのが11月半ばになった。5,000通を超える同意書を届けたが、現時点で返信いただいたのは3,000程度。年末までに動かせるのは5,000曲くらいと見ている。非常に残念。3年待つのか、あるいは制度の見直しを含めた話し合いの場をJASRACさんや文化庁さまなどと持てるか。現在は時間と制度の壁に阻まれている状況。
--- 現在、シェアは全体の2%と言われているが、今後の展望は?
阿南氏:JRC、イーライセンスが持つ10万弱の楽曲のほとんどは、2002年以降に作られたもの。いわゆる生きている楽曲。今後、エイベックス・グループでは年間3,000曲ほどの新譜を出す。それに加えてソニー・ミュージックさんや、ユニバーサルさんが新譜の半分でも預けてもらえるなら、10%のシェアが早期に見えてくる。
--- 旧態依然なJASRACが1社で独占している、との批判がある。具体例は?
荒川氏:近年、新しいテクノロジーによる新しいサービスが海外から入ってきている。JASRACは、そうした新しいものに対応するスピードが遅いのではないかと言われている。事業者の特性を適切に理解して、実現していくアプローチが硬直化しているとよく聞くし、私もそう感じている。NexToneでは個別の事業者さん、新しいサービスに対するアプローチに、迅速に対応していく。それがJASRACとの差別化のポイントになる。
阿南氏:私は当時、エイベックスグループで経営企画をやっており、NTTドコモさんとの映像配信サービスのdTV、ソフトバンクさんとのUULAなど映像配信事業を取り扱っていた。こうした新規サービスに対して、JASRACでは著作権使用料をいくら徴収するか、決定するまで2年以上もかけた。これでは、こちらの事業計画が立たない。例えば3%を徴収して、後から調整するなど、柔軟な対応をして欲しかった。サブスクリプション元年と言われる2015年には、AWA、LINE MUSICなど、さまざまなサービスが開始したが、JASRACでは高い使用料を設定しており、また決めかねているものもある。過去にはライブ・ビューイングについても、開始して3年くらいはいくら徴収するか決めかねていた。となるとサービスの提供者側では適正な入場料、アーティストにいくら分配するかが决まらない。こんな基礎的な計算もできない業界に、新規参入なんてできない。
--- 楽曲の移管が思うように進んでいないことに、時間以外の理由はあるのか?
阿南氏:世界に冠たる著作権管理事業者であるJASRACには安定感がある。これまでの数十年間、JASRACに楽曲を預けてきた作家さんが、うちに楽曲を預けても良いのか、信用の問題から逡巡されているのも事実。また演奏権をJASRACに残したまま移管することになるので、手続きの面でも都合が悪い。これはこちらの反省材料。今後、管理手数料の経済的なメリット、柔軟性などをお示ししていくことが必要。想定以上に時間のかかることと改めて感じた。正直なところ考えが甘かった。力量不足だった。
《近藤謙太郎》
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