欧州研究機関が熱視線!“夢の素材・グラフェン”から生まれる新たなデバイス【MWC 2016 Vol.38】 | RBB TODAY

欧州研究機関が熱視線!“夢の素材・グラフェン”から生まれる新たなデバイス【MWC 2016 Vol.38】

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欧州の研究開発機関がグラフェンを使ったデバイスを開発中
欧州の研究開発機関がグラフェンを使ったデバイスを開発中 全 10 枚
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 元素1つぶんの厚さという、炭素原子がハニカム状に結合したシングルレイヤーシート構造のナノマテリアル「グラフェン」。電気・熱・光の伝導性が高く、3次元加工や液体にも変えることができ、しかも人の髪の毛よりも薄く軽量でありながら、鋼鉄よりも200倍高い強度を持つ点など、さまざまな物理特性が優れる“夢の素材”として期待されている。

 その「グラフェン」を使ってデバイスや製品を研究・開発を手がける、ヨーロッパの学術機関によるプロモーション団体・Graphene Plagshipが「MWC 2016」(スペイン・バルセロナ)に共同でブースを出展している。

 The Barcelona Institute of Science and Technologyのメンバーからなる「ICFO-The Institute of Photonic Sciences」では、グラフェンを使った極薄透明シート状の電子回路を開発中だ。光学センサーやRFIDタグ、バイオメトリックセンサーなどに応用することで、一般的なシリコン素材よりも柔軟でありながら成形の自由度が高いグラフェンの特徴をいかしたさまざまなアプリケーションに展開できる事例を紹介している。

 同所のスタッフによれば、抗菌性が高く、摩擦性を低く抑えることができるため、人の肌に触れる心拍センサーなどに応用しやすいメリットがあるという。ウェアラブルデバイスの装着性や情報解析精度を一段高いレベルに押し上げられる可能性についても強調している。また極薄のグラフェンシートの特長を活かすことで、例えば自動車のハンドルにもセンサー回路を仕込むことなども可能になり、ドライバーの安全運転をサポートするサービスが展開できるという。同所ではまた、グラフェンの電子電導性の高さを活かした次世代イメージセンサーの開発にも注力しているそうだ。

 イギリスのケンブリッジ大学・グラフェンセンターでは、グラフェンを液体状にしたインクを開発。一般的な家庭用のプリンターをつかって透明シートの上に電子回路を成形する活用例を紹介している。

 グラフェンは紙の上にも電子回路をプリントすることができる。その特徴を示すため、厚紙の上にピアノの模様をプリントして音が鳴らせるトイ・ピアノも試作した。同所のスタッフによれば、さまざまな素材の上に回路を成形できる特徴を活かしたタッチスクリーンの研究にも力入れて取り組んでいるという。

 同じイギリスのベンチャー企業、Zapgochargerはグラフェンを使ったポータブルバッテリーを開発中だ。電導性の高いグラフェンインクを塗布したアルミシートを複数層重ね合わせて、5分間でiPhone 5の内蔵バッテリーの容量に匹敵する1,500mAhの電源容量が一気にチャージできる蓄電装置を搭載する。同社のスタッフは「もう5分間チャージすれば3,000mAhの電源を蓄えられるので、たいていのスマートフォンの内蔵バッテリーを充電できる利便性は確保できる」と説く。また一般的なリチウムイオン充電池と比べて安全性やリサイクル性も高いのがメリットであるとも主張している。

 同社では先行して蓄電容量900mAhのポータブルバッテリー「ZAP/GO」を製品化。すでにクラウドファウンディングによる開発資金集めを完了しており、まもなく初期購入者に向けた2,000台のユニットを生産・出荷予定だという。年内には量産化も視野に入れている。

《山本 敦》

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