【現場レポート】東京都が主催する「若手防犯ボランティア育成講座」とは? | RBB TODAY

【現場レポート】東京都が主催する「若手防犯ボランティア育成講座」とは?

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東京都青少年・治安対策本部 総合対策部 安全・安心まちづくり課の矢向弘明課長。大学生と地域の人との橋渡しを目的とした今回のイベントは、今年度からの初の試みだという(撮影:防犯システム取材班)
東京都青少年・治安対策本部 総合対策部 安全・安心まちづくり課の矢向弘明課長。大学生と地域の人との橋渡しを目的とした今回のイベントは、今年度からの初の試みだという(撮影:防犯システム取材班) 全 4 枚
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 都内では現在約4,000の防犯ボランティア団体が活動しており、子どもの登下校時の見守りや防犯パトロールなどで身近な犯罪の減少に貢献しているといわれている。

 一方でメンバーの高齢化が進んでおり、若い世代の「新たな担い手」の育成が大きな課題となっている。その課題を解決するために東京都が開催したのが今回の「若手防犯ボランティア育成講座」だ。

 東京都青少年・治安対策本部 総合対策部 安全・安心まちづくり課の矢向弘明課長によると、この取組みは、防犯に関する知識・情報等を提供する「育成講座」と地域の防犯ボランティア団体とともにパトロール等を体験する「実地体験」で構成しており、これにより、大学生の防犯に対する関心を高めるとともに、大学生と防犯ボランティア団体との橋渡しを図りたいとしている。

 そうしたなか、東京都は14日、「新たな防犯力の確保事業」として、大学生を対象とした「若手防犯ボランティア育成講座」の第1回を多摩市にて開催した。

●「監視」でなく「見守り」という心構え

 講座が始まりまず最初に講師として登壇したのは「うさぎママのパトロール教室」主宰の武田信彦氏。約20年間防犯活動に携わり、現在は安全インストラクターとして活動している武田氏によると、一般市民の防犯活動においてポイントとなるのは「監視」ではなく「見守り」という考え方だという。

 犯罪や非行を「監視」するのではなく、あくまで「見守り」として地域や子どもたちに目を向け、一般市民にできる範囲で無理せずに活動する。それだけでも犯罪が起きにくい環境を作ることができ、十分に効果が期待できると語っていた。

 次に講義を行ったのは、多摩市で実際に防犯ボランティア活動を行っている、3名の青少協(青少年問題協議会)地区委員会会長。多摩市には小学校や中学校の通学区域を単位とした15の地区委員会があり、それぞれの地区ごとに活動を行っている。今回は豊ヶ丘地区、鶴牧・大松台地区、貝取地区の各会長が登壇し、それぞれの地区における防犯パトロールの様子などを語った。

 同じ多摩市の中にあっても、大型マンションが増え小学校の児童数が増えている地域もあれば、学校の統廃合が行われ高齢化が如実な地域もあるなど、各地区の住民構成は異なっている。そのため防犯パトロールなどの活動も、地域特性に合わせた形で行うことが重要になってくる。ただ防犯活動を行うメンバーの少なさや高齢化などの理由で思ったとおりに活動できないこともあり、大学生の参加は大いに歓迎したいとのことだった。

 最後に登壇したのは警視庁生活安全部警部補の佐藤英明氏。佐藤氏は犯罪発生数などの具体的なデータを示しつつ、警察官の立場から見た防犯ボランティアの功績などについて講義を行った。

 昨年度の東京都における刑法犯の認知件数は約14万件で、平成14年の30万件からほぼ半減している。佐藤氏によると、その大きな理由として挙げられるのが防犯ボランティアによる見守りだという。特に空き巣の件数は平成14年の21,000件から昨年は2500件と88%も減少しており、これは何よりも「見られる」ことを嫌がる犯罪者にとって、防犯パトロールが大きな効果を発揮しているとのことだった。

 他にも電話をしながらATMコーナーにいた高齢者に声掛けをしたことでオレオレ詐欺を防いだというケースや、犯罪が多い自治体という不名誉なイメージがあった足立区が、防犯ボランティア活動を強化して犯罪を減らした事例などについて語った。

 育成講座の後に予定されていたパトロール活動等の実地体験は、残念ながら雨天のため中止となったものの、実地体験については今後も多摩市で何度か開催する予定。また、多摩市以外の自治体でも大学が多い地域を中心に、今回と同様のイベントを開催していく予定だ。

《防犯システム取材班/鷹野弘》

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