被曝71年の広島、ポケモンGOなしでおごそかな「原爆の日」
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広島県に住む筆者が胸をなでおろしたのが、直前になって入ってきたポケモンGO削除のニュースだった。実は1週間ほど前、筆者がいつものように平和記念公園を通りかかった際、スマートフォンを見ながらいわゆる「ながら歩き」をする若者や少年少女たちの多さに驚かされた。しばしスマホ片手にうろついた後、今度は慰霊碑の横の木陰でひたすらスマホをいじり続ける若者たち、子供たち。見慣れないその姿に違和感を覚えたのは否めない。
広島市のポケモンGO削除依頼に、鎮魂以外の来場者を拒んでいる、との意見もあるようだが、それは大きな勘違いだ。毎年桜の時期になると、広島の人々は平和記念公園に集い、酒を飲みながら花見を楽しむ。平和記念公園は厳粛でありながら現在の平和な広島を楽しむことが許された、市民に愛される憩いの場でもあるのだ。
もしも今回の削除がされぬままであったら、果たして今日という1日はどうだったであろう。人間は弱い生き物だ。滅多に訪れることがないスポットに来た喜びで記念式典の間にもスマホを開き、灯篭に平和のメッセージを書くよりもポケモンを探すのに熱中してしまったのではなかったか。鎮魂の思いも平和への願いもそこそこに、飛び跳ねるポケモンたちを見つめていたのではなかったか。
平和の言葉を綴った灯篭を手に、多くの人々が原爆ドームの前の川辺に集まった。灯篭を川に横たえるもう一方の手にはもちろんスマホがあって、川を流れる灯篭を写す者、ライトアップされた原爆ドームを写す者、友人との笑顔を自撮りする者と様々だ。きっと「世界平和サイコー!」とメッセージを添えて、イベント気分でたくさんの絵文字ともにツイッターあたりに投稿するのかもしれない。
それで、いいのだと思う。少なくとも彼らは、「さも本当にそこにいるようなポケモン」ではなくて「今ここに本当にある平和」を手のひらから逃さないために、スマホを使っているのだから。
《築島 渉》
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