【自社システムを外販する】VRギャラリーを不動産業に転用!
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▼売る側は開発コストを収益に転化、買う側は廉価で導入できる
▼取引先へのテスト依頼で一般化を進め、外販の可能性を探る
▼システムの利用現場を見せることが、大きな販促効果を生む
■「外販」でシステムの開発コストを収益に転化
自社で構築したシステムやノウハウを、他社に販売するというビジネスモデルがある。かつては大手企業がIT部門の機能を子会社として独立させ、利用していた情報システムを販売するものが多かった。しかし、最近では開発コストの低下から、システム開発案件が中小企業にも広がり、それを外販する動きが表れている。
売る側はシステムの開発コストを収益に転化でき、買う側も身の丈に合ったシステムを廉価で導入できる外販モデル。新規に外販ビジネスを始める場合、どのようにスタートさせるべきなのか? 2016年11月からVR(バーチャルリアリティ)コンテンツを自動作成するクラウドシステム「3D Stylee」の外販を開始した、エフマイナーCEOの森田博和氏に話を伺った。
■取引先を巻き込んだトライ&エラーで、外販の可能性を探る
エフマイナーは元々アート業界の企業。2013年に現代アートを展示するギャラリーとしてスタートし、アート作品のオンラインレンタルや販売サービスなどを展開してきた。その中でも、3D Styleeについては、「ギャラリーにおける空間のアーカイブをVRでやると面白そうだ」と思いついた森田氏が独自に研究をはじめたものだという。
森田氏が3D Styleeの開発を手がけた背景には、これまでの経歴が深く影響している。東京大学大学院で航空宇宙工学を学んだ森田氏は、元経済産業省の官僚。内閣官房宇宙開発戦略本部事務局出向などを経てアメリカでMBAを取得した後、2013年に同省を退職しエフマイナーを創業した。
なお、外販ビジネスのスタートにあたっては、ギャラリーという業態が「テストのしやすさ」に繋がり、それがメリットになったという。
「2016年2月に制作をはじめて、夏ぐらいからテスト運用を行っています。仕事で付き合いのある店舗や不動産の方にも試用していただき、最低限どの機能が必要か、適切な価格設定はいくらぐらいかなど、色々な意見をいただくことができました」
中でも、空間内を歩いて移動するような見せ方の演出については、フィードバックを受けながらも、作りこみにかなりの時間をかけたとのこと。「ローンチにあたり、あの部分ができているというのは大事なステップでした」と、森田氏は当時を振り返る。
既存の取引先へのテスト依頼は、外販ビジネスを成功に近づける鍵となるだろう。「3D Stylee」がローンチに至る過程で作りこみを行ったように、多様な事業者からフィードバックを受ける時期は、外販ビジネスの始動期において必須となる。その中でも、森田氏がシステム開発の中でこだわったコンセプトが、“普通の人が扱えるサービス”だったという。これがシステムの使い勝手を一般化する上で一役を担ったことは間違いない。
■レクチャーを兼ねて、利用現場を見学させる
「3D Stylee」を導入している業種としては、不動産関係の事業者が多いという。今回の取材にあたり、システムの使い方を不動産業のクライアントにレクチャーする現場に同行することができた。12月上旬、森田氏が訪れたのは東京・板橋区の賃貸マンション。クライアントの担当者によれば「主に来日した外国人が活用する物件なので、ウェブサイトに部屋をVRで紹介して安心感を伝えたい」という。
現場での説明に要した時間は1時間弱。部屋の内外を専用のカメラで撮影し、その場でシステムにアップロードした。スマートフォンとヘッドマウントディスプレイを使い、クライアントはその場でVRを体感。「思っていたより簡単でした。次からは私だけでも部屋のVR化ができると思います」と話している。
外販ビジネスにおいて、実地の現場を見せることでクライアントに「これならシステムを使えそうだ」と感じさせる説得力に勝るものはない。手際の良いレクチャーの実践も、外販ビジネス成功の重要な要素といえそうだ。アート業界から生まれた「VRコンテンツ生成システム」の外販ビジネス。ジャンルや規模が異なる企業でも、外販ビジネスをスタートさせるにあたり、同社に倣うべき部分は少なくない。
~自社システムを外販する:1~VRギャラリーを不動産業に転用!
《本折浩之/HANJO HANJO編集部》
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