大型客船製造事業撤退とMRJの納入延期、根は同じ?
ビジネス
経営
注目記事

造船事業について、同社は130年超の歴史を持つ「祖業」でもあった。同社としても自信をみせる事業でもあり、2011年には客船世界最大手カーニバルの欧州法人コスタ・グループ傘下にあるアイーダ・クルーズから10万トン超となる大型客船2隻の建造を受注した。
ところが「11年ぶりの大型客船製造受注」ということに加え、発注側要求による度重なる仕様変更と、それに対応した設計変更に苦しめられ、納期は再三にわたって延期となった。約2400億円という巨額の損失も生じさせてしまい、大型客船の製造からは撤退するとともに、造船事業自体の抜本的な見直しも強いられる結果に。小型・中型規模の客船や貨物船の製造は継続して行ってきたものの、大型客船の製造については11年というブランクにより、経験や知見の継承が上手くいってなかったり、それらを有していない人が手探りで従事したことも少なからずの影響を与えていたとみられる。
MRJも事情はあまり変わらない。YS-11以来、約50年ぶりの国産旅客機製造ということになったが、「三菱はこれまでも国産の戦闘機を製造してきたのだから、航空機製造の技術については問題ない」との楽観視が多数を占めていた。実際に「MRJという機体を作ることや、飛行させることは問題なくできた」わけだが、ここにきて「型式証明試験をクリアする方法についての知見が足りていなかった」といった話が出てくると、「三菱なら大丈夫」というのは希望的な観測でしかなかった。
MRJの場合は大型客船事業とは異なり、製造技術そのものの問題ではなく、型式証明という付帯する書類上の問題であり、外国人エキスパートに知見を求めることでこれをクリアできることはできそうだ。ただし、納期の遅れであるとか、開発期間延長による費用の増大は避けられそうになく、「知見が足りない」ことにもっと早く気づけなかったものか。
《石田真一@レスポンス》
特集
この記事の写真
/