地方が抱える課題こそが事業家にとってビジネスのネタ | RBB TODAY

地方が抱える課題こそが事業家にとってビジネスのネタ

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都会も田舎も共に課題を抱えている。双方が持つ課題を交換しあえれば、双方にベネフィットがあるはず
都会も田舎も共に課題を抱えている。双方が持つ課題を交換しあえれば、双方にベネフィットがあるはず 全 3 枚
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 私は、自らが経営するIT企業「サイファー・テック」の徳島県美波町という小さな過疎の町への移転を通じて、多くの事を学んだ。

 都会を目指す若者が多い一方で、都会から地方を目指す若者も存在し増えていること。地方には仕事が無いのではなく、仕事や役割はたくさんあるけれど、それらを担うプレイヤーが圧倒的に不足していること。都会には匿名性の自由があるが同時に不安もあり、田舎には匿名性は無いが、繋がりあえる幸福があること。ビジネスにおいても、チャンスの総量は都会が大きいのだろうけど、触れうるチャンスという点で考えると田舎の方が多いのではないかと思えること。

 結局、都会も田舎も共に良いところがあり、都会も田舎も共に課題を抱えているだけで、問題はミスマッチということに尽きる。双方が持つ課題を交換しあえれば、双方にベネフィットがあるのではないか。強くそう思う。

 例えば採用力強化のような経営課題の解決や、自社のアイデンティティの発露の場として地方を志向し、美波町へサテライトオフィス進出をした企業はここ数年で16社を数える。通信インフラや移動手段の拡充がそんなリモートワークを格段に容易にしてくれている。

 美波町ではこのところ、過疎化や高齢化、人口減少等により生じた地域課題をビジネスチャンスと捉えて進出する経営者が増えてきている。先日、美波町に進出してきたIoTや通信技術関係のベンチャー企業の社長から面白い話を聞いた。

「僕たち技術系の会社は作るのが得意なので、まずは作ってみることから始めます。例えるなら良く切れる刃物を作って、完成してからこの刃物で何を切ろうか?と悩むような感じ。都市部にいると技術トレンドと大きなマーケットを追い求めてしまい、顧客不在のモノづくりをやってしまうことが往々にあります。しかし、ここでは違う。行政の方や、漁師さんや農家さんや観光関係の方から、直接具体的な悩みが聞ける。こんな風にすれば便利になりますか?と作る前から反応を聞ける。その過程は大いなるビジネスチャンスを生むのです」

 地方創生時代、各地は企業誘致や移住者誘致に懸命に取り組んでいる。しかし補助金に代表される“ニンジン作戦”をやったとしても、それは持続性が疑われるドーピングであることが多いのも事実だ。地域の総合的な実力向上が図れない限りは本当の地方創生には繋がることはない。人口の年齢構造に代表される社会動態や個人の志向の変化にどのように対応していくか? その解決策が求められているのではないだろうか。少子高齢化・過疎化・人口減少という社会の構造変化が急激に進む世界の先進地である日本の「地方」。その地方が抱える課題こそが実は事業家にとってはビジネスのネタなのではないだろうか?

 課題の解決策を持つプレイヤー(企業や技術)を求める地方と、ビジネスのネタが欲しい企業。この相思相愛の関係が繋がる場を作り、事態を前進させたいーーそんな思いから、私の経営する「あわえ」では企業と地方自治体とのマッチングの会を催すことにした。企業経営者の皆さんには、“課題”と言う名のビジネスネタを持つ選りすぐりの自治体との出会いの場を、ぜひ活用していただきたい。


●吉田基晴(よしだもとはる)
サイファー・テック(株) 代表取締役社長/(株)あわえ 代表取締役社長
1971年美波町生まれ。神戸市外国語大学を卒業後、ジャストシステムなどを経て、サイファー・テック(株)を設立。2012年に美波町に「美波Lab」を開設。「半農半IT」など、人間らしい働き方の創造に挑戦する。2013年、(株)あわえを設立。


■イベント情報 「サテライトオフィスマッチング」

雇用創出や産業振興で悩んでいる自治体と地方ビジネスへの参入や社員の定着で悩んでいる企業。この2つの悩みを解消させる「サテライトオフィス」設立に向けたマッチングイベントが5月に行われる。

日時:2017年5月16日(火) 15:00-18:30
場所:イトーキ東京イノベーションセンター SYNQA
参加費:無料

参加対象企業
地方創生ビジネスに参入したい/地方自治体などの行政顧客を新規獲得したい/地域課題解決型の商品・サービスを開発したい/テレワークを推進したい/サテライトオフィスに興味がある/優秀な人材を確保したい

参加予定自治体
徳島県美波町/秋田県大館市/静岡県南伊豆市/静岡県浜松市/静岡県袋井市/神奈川県真鶴町/熊本県天草市/熊本県菊池市

主催:株式会社あわえ
詳細/申し込み:http://www.awae.co.jp/archives/699

地方と企業の悩み交換、引き受けます

《吉田基晴》

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