参加企業のひとつ、ディーリンクジャパンでは今回、「D-Link Business Cloud」や無線APソリューションなど、大きく4つの展示を実施する。その見どころや出展製品などについて、同社でプロダクトエンジニアリング部部長を務める澤太一氏に話を伺った。
■SNS認証や接続時間管理など、公衆無線LAN機能が進化
今回、ディーリンクジャパンが出展する製品やサービスの中でも、特に注目したいのがD-Link Business Cloudだ。これは同社のWi-Fiアクセスポイント「DBA-1510P」の設定、監視をクラウド上から行うというもの。複数台、複数拠点にわたるAPを一元管理できるので、導入や運用における管理者の負担を軽減できる。
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澤氏によると近年では、コスト削減や利便性の面から、クラウドの利用が各方面で進んでいるという。
「現在、当社では全世界で約500万台のWi-Fi機器やカメラなどをクラウド管理していて、加入者数も順調に増加しています。その背景としては拠点あたりのWi-Fi機器やカメラの導入数が増え、管理のしやすいクラウド型管理ソリューションが選ばれていることも一因となっています」

D-Link Business Cloudについて、Interop Tokyoの会場ではGUIのデモを実施する予定だ。同ソリューションではクラウドへのAP設定の登録について、“最短5分”をうたっているが、その様子を実際に見ることができる。
また、会場ではD-Link Business Cloudの新機能についても、展示やデモが行われる予定だ。同ソリューションではAPを公衆無線LANとして開放するための方法として、新たにメール認証や、GoogleやFacebookのアカウントによるSNS認証などを実装している。2017年の夏ごろまでには、さらにWeChatやLINEによる認証にも対応予定。WeChatはGoogleやFacebookが利用されていない中国からの旅行者向けとして。LINEは国内はもちろん韓国や台湾、東南アジア圏からの訪日客に向けての対応となる。
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その他、D-Link Business Cloudの新機能としては、ユーザごとのWi-Fi接続回数や時間の制御、AP間に渡って移動するクライアントのトラッキング、Excelファイルによる設定のインポートなどが実装された。これらの機能についても、会場ではデモや展示を行う予定となっている。

「近年ではクラウドに対応するネットワーク機器が増えていますが、中でもAPについてはそのメリットが明確です。管理者の作業時間が圧倒的に短く済むと思います。コントローラの導入では、お客様自身が運用する際のハードルが上がりますし、ハードウェアなので故障の際の対応や予備機の用意なども問題になりますよね。トラブルがあったとしても、使用する機器が少ないほど原因の特定が容易になります」
■総務省の推進する防災Wi-Fiにも対応
総務省では地方公共団体によるWi-Fi環境整備に向けて、2016年12月に「防災等に資するWi-Fi環境の整備計画」を策定した。これは防災拠点や災害対応の強化が望まれる公的な拠点に対して、公衆無線LAN環境の整備費用の一部を補助するというもの。2019年までの整備目標数として、約3万カ所を設定している。
D-Link Business Cloudは同計画の要件に対応している。災害時におけるD-Link Business Cloudの用途として考えられるのが、被災者向けのAPの開放だ。管理者が現場にいなくても、いけないような状況下でも、瞬時にAPの設定を変更して公衆無線LAN化できる。グルーピング機能が用意されているので、個別に設定をExcelでインポート/エクスポートしておけば、緊急時用の設定を読み込ませて特定のAP群だけを開放することも可能だろう。
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なお、APの開放となると気になるのがセキュリティ。施設内のネットワークに上乗せする形でWi-Fiを運用している場合、APを外部の人間が利用しても、セキュアな環境を維持できるかが問題となる。
この点について、D-Link Business Cloudではゲストモードの提供で対応している。これにより、ゲストユーザによるAPの先にあるネットワークへの接続を遮断しながら、インターネット接続環境を提供できるという仕組みだ。
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「D-Link Business Cloudはこれまでホテルや百貨店、学校、飲食店など、複数拠点を持つ、もしくは単一拠点でも複数台のAPを設置する企業や団体で利用されてきました。今後は、これに加えて自治体やそこにサービスを提供しているSIerなどの需用にも、応えていきたいと考えています」
現在ではD-Link Business Cloudを利用したサービスも登場しており、NTT東日本の中堅中小企業向けWi-Fiサービス「ギガらくWi-Fi」では、同社のAPなどが利用されているとのことだ。
■無償ソフトやWebベースでのAP管理も充実
ディーリンクジャパンでは「D-Link Business Wi-Fi Solution」として、3種類のWi-Fiソリューションを提供している。D-Link Business Cloudはその一つだが、スタンドアローン環境への導入では、「Central WiFi Manager」にも注目したい。無償で提供されているサーバインストール型のソフトウェアで、最大1000台までのAPを管理できる。
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Central WiFi ManagerではSSIDやWPA-PSK、電波感度など、ネットワーク内のAPを一括して設定できる。SNS認証などの公衆無線LAN向けの機能は実装されていないが、ビジネス拠点のAPを一括管理することにおいて、その使い勝手はD-Link Business Cloudによく似ているといえるだろう。
他にも、ネットワーク機器の一括管理という用途においては、主にスイッチ製品をWebベースで管理する「D-View 7」。DDP(D-Link Discovery Protocol)対応のスマートスイッチなどで利用可能な「D-Link Network Assistant」などが用意されている。
また、ディーリンクジャパンでは、壁埋め込み型のAPとして「DAP-1850AC」を展開しているが、同製品に向けて新たに「簡易設定ツール」を開発した。
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DAP-1850ACは主にマンションやアパート向けとして、ISPが回線とセットで提供しているケースが多いという。ただ、このような状況下でWebベースのGUIで管理を行うと、SSIDを部屋ごとに割り振るのが、設置業者にとって大きな手間になっていた。
簡易設定ツールではSSIDを連番にしたり、末尾に“2.4G”の表記をつけるといった設定を、簡単な操作で行える。ファームウェアの一括アップデートもワンクリックで実行。設定はCSVでアウトプットでき、履歴管理にも利用できる。
「用途や環境によって、利用できるWi-Fi機器は異なります。例えば、オンプレミスの環境では、セキュリティ上の問題などからクラウド管理に抵抗のあるお客様も多いようです。その場合にはスタンドアローンの環境を構築して、コントローラでネットワーク機器を管理することになるかと思います。
■APからカメラまで、充実のネットワーク機器
会場では、他にも2種類のネットワークカメラを展示する予定。DSC-4000シリーズは機能をスタンダードなものに絞ることで、標準価格を2万円台にまで抑えている。一方、「D-Link Omna TM 180 Cam HD」はコンシューマー向けの製品となり、AppleのHomeKitに対応。iOS標準の「ホーム」アプリなどで、映像を遠隔視聴することが可能だ。
また、LTE関連では“IoTゲートウェイ”と呼ばれる製品群を出展。こちらは、自販機やATMなどで利用されており、光回線を引けないような狭い空間にある機器をネットワークに接続できる。
他にも、屋外用の「DAP-3662」、屋内用の「DAP-2610」といったAPをはじめ、多種多様な製品群を用意するディーリンクジャパン。会場ではそのラインナップを、まとめて見て、体験することができるだろう。
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「今回の出展ではクラウドを中心に、無線LAN、防災Wi-Fiなど幅広い展示を行います。工数を削減できるソリューションなどは、その効果をデモで体験してもらいたいですね。ぜひ弊社ブースに足を運んでください」