小室:「もったいない」と言っていました。
――良いメロディーが作れないというのは、どういったレベルでのお話なのでしょうか?
小室:つい最近もTVの番組収録があったんですけど、ブームという言葉があって。なんとなく93年、94年からぎりぎり2000年ぐらいまでがブームだったかなと思うんですけど、音楽という意味で影響があったと感じています。それを超えることはもちろん出来ないですし、下回ると、レベルが下がったか枯渇した、期待に応えられない、という感覚です。「あの時が良かったよね」と言う方がほとんどなので、時代の流れもありますが、やっぱりあれを基準にして、「そこから上じゃないと」と比較してしまう。
――小室さんの35年の音楽人生で一番うれしかったこと、辛かったことは?
小室:一番というのは非常に難しいです。90年代のみなさんがヒット曲を歌って楽しんでくれている姿を垣間見ることが多分一番幸せだったと思います。一番辛いのは今日です。
――安室さんの引退発表は影響はあった?
小室:安室さんの引退宣言は、非常にすぐ理解はできました。海外ではマイケル・ジャクソンであったり、プリンスであったり、僕と同世代の方たちなど美学を貫く意味では非常に素敵だなと思いました。自分もいずれ、素敵な形で身を引けたらいいなというのは正直思いました。
――音楽活動は引退するが、制作以外に携わっていくことはないのか?
小室:まだ一週間足らずの決断ですので、何が許されて、何をやることが許されないのか判断がまだ出来ていないんですね。どこまで「いいんじゃないの?やってよ」って言われるのか、「やっちゃダメだよ」と言われるのか、まだ何ひとつ反応を聞いていないので、線引がまったくわかっていないんです。僕の勝手な公式で、「お騒がせした罪、それを償うために退く」という図式しか今はないです。
――引退された後、KEIKOさんや関係者の方と共に幸せになって過ごしていくという気力は持っていますか?
小室:みなさんの前でお話するというこのエネルギーだけで今精一杯というのが正直なところです。これがふと一人になった瞬間に涙が溢れ出るのか、「なんてことをしてしまったんだろうか」、「なんてことを言ってしまったんだろうか」という悔いが出てくる可能性は十分にあると思います。「悔い無し」なんて言葉が、一言も出てこないです。例えばライブをやって何日をもって引退、など楽しく計画を立てて勇退が出来る環境だったら、「悔い無し」と言えたのかなぁと思いますが、遅かれ早かれこういった涙ぐんだ顔を見せる日は来るのかなとは思っています。
――年末に気に入った楽曲を作ることができたとおっしゃっていましたが?
小室:万全な体調ではない中、非常に良い環境で年末まで音楽制作をできたと思います。まだ発表されていませんが、もし発表していただける状況であるのであれば、多少気に入っていただけるというか、自分の中での基準を超えた曲はあると思います。