iPadをワンタップするだけで、飛行・撮影が可能な「DroneRoofer」
日本屋根ドローン協会 理事の夏目和樹氏が取締役を務める株式会社CLUEでは、ドローンによる屋根の空撮に焦点を当てたiPadアプリ「DroneRoofer」を提供している。「DroneRoofer」では“25mの高さまでまっすぐ上昇”といったかたちで、ある程度自動でドローンが飛行するようにプログラムされており、iPadの画面をワンタップするだけで簡単に操作が可能になる。これにより、操縦を習得するまでに必要な訓練時間も従来比で大幅に短縮できることが見込まれている。
なお、同社ではドローン機体の選定・購入から、初期設定、ドローン保険の加入、飛行許可の申請、アフターサポートまで、ワンパッケージでの提供もおこなっている。
雷門の瓦はなぜ落下したのか
夏目氏は、2016年に浅草寺 雷門の瓦が落下したことを引き合いに出し、「瓦はある日、突然落ちるわけではありません。落ちる前には、浮く、剥がれる、といった症状が起こっているはず。それに誰も気が付けなかったのが問題」と話す。浅草寺のような重要文化財に指定されている建物の場合、周囲に足場を組むことが容易にはできず、日常的に屋根・瓦を点検することが困難な事情がある。だからこそ、ドローンが活用できると指摘する。
「もし、空撮写真を1枚撮らせてもらえていたら落下は防げたでしょう。ドローンの撮影画像を専門家が見れば、異常はひと目で分かります。万が一、ドローンが墜落したらどうするのか、と人は言うかも知れない。DroneRooferなら建物から少し離れたところから垂直に飛ばして、数十m四方の写真を撮影できる。建物の上に落下する心配はないんです」(夏目氏)。
浅草寺のような一件が、今後ほかの寺社で起こらないという保証はない。そこで夏目氏は、日本全国にある国の重要文化財で半年、あるいは1年に1回といった頻度で、瓦の点検のためにドローンを飛ばせないだろうかと提案する。「年々、データが貯まっていくことで経年劣化の状態も分かるようになる」と同氏。ちなみに浅草寺で落下した瓦は、重さ約1キロもあった。幸運にもけが人は出なかったが、仮に人に当たっていれば、大事故につながっていた可能性がある。ドローンによる点検作業は有用だろう。
DronRooferでは今後、どのようなバージョンアップを予定しているのだろうか。「人工知能を搭載することで、瓦の欠損箇所を自動判別できるようにしていきます」と夏目氏。チェック段階で必ずしも目利きの職人が見る必要がなくなるため、人手不足の叫ばれる現場で、効率的に作業を進められるようになりそうだ。
ドローンの利活用についてはまだまだルールや規制が整備されておらず、課題も多い。しかしのんびりと構えていてはいつまでも屋根点検に関わる事故やトラブルが起こり続けてしまう。日本屋根ドローン協会では今後、ドローンを正しく使うためのセミナー開催、資格制度の確立などをおこない、屋根業界におけるドローン技術の活用を推し進めていく。