オーケストラの中心で、クラシック愛をさけぶ!東京交響楽団はなぜVRアプリを作ったのか? | RBB TODAY

オーケストラの中心で、クラシック愛をさけぶ!東京交響楽団はなぜVRアプリを作ったのか?

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「VRオーケストラ~東京交響楽団~」から。5箇所のカメラ位置から360度の映像を楽しめる。写真は客席からのアングル
「VRオーケストラ~東京交響楽団~」から。5箇所のカメラ位置から360度の映像を楽しめる。写真は客席からのアングル 全 8 枚
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 「オーケストラのド真ん中でクラシックの演奏を聞けたら、どんなに素晴らしいだろうか」―――。そんな妄想がついに実現する。東京交響楽団が、VR(仮想現実)を活用した動画コンテンツを楽しめるアプリを作成したのだ。専用のゴーグルを装着すれば、約70名のプロオーケストラの中心で演奏を楽しめる趣向。どのような経緯で開発が進められたのだろうか?

「VRオーケストラ~東京交響楽団~」から。5箇所のカメラ位置から360度の映像を楽しめる。写真は客席からのアングル
「VRオーケストラ~東京交響楽団~」から。5箇所のカメラ位置から360度の映像を楽しめる。写真は客席からのアングル


クラシック好きにはたまらない


 東京交響楽団が提供する「VRオーケストラ~東京交響楽団~」は、実際の演奏を全天球カメラで撮影したもの。視聴者は、5箇所のカメラ位置(指揮者 / 第1ヴァイオリン奏者と第2ヴァイオリン奏者の間 / ヴィオラ奏者とチェロ奏者の間 / 打楽器奏者 / 客席)を移動しつつ、各箇所で360度の映像を楽しめる。筆者も楽団事務所にて体験させてもらったので、まずはそのファーストインプレッションからお伝えする。

なんとも気分の良い、指揮者のアングル。思わず指揮棒を振り回したくなる
なんとも気分の良い、指揮者のアングル。思わず指揮棒を振り回したくなる


 なるほど指揮台から見る景色は壮観だった。自分を取り囲む弦楽器奏者たち。団員とアイコンタクトをとりながら、良い気分で指揮棒を振り回したくなる。弓の動きが揃っており、見た目にも美しい。次にヴァイオリン奏者の間に置かれたカメラに移動。すると、ヴァイオリンの音が大きくなり臨場感が増した。心憎い演出だ。前後左右には、懸命にメロディを奏でるヴァイオリン奏者たちの姿。次第に、自分もパートの一員になった気がしてくる。

ヴァイオリン奏者の間に置かれたカメラから。前後左右、どこを向いても演奏に集中している団員の姿がある
ヴァイオリン奏者の間に置かれたカメラから。前後左右、どこを向いても演奏に集中している団員の姿がある


 次にチェロとヴィオラの間に移動した。すると中・低弦の響きが大きくなる。楽器が変われば出る音の高さが変わり、担当する旋律も変わる。当たり前のことだけれど、クラシック音楽はそうやってつくられているのだ。いま正に音楽がつくり出されている現場に立ち会っている幸せを感じる。

左を向けばヴィオラ奏者、右を向けばチェロ奏者。ここでは聞こえてくる音色も、ズシリとした中低音に変わる
左を向けばヴィオラ奏者、右を向けばチェロ奏者。ここでは聞こえてくる音色も、ズシリとした中低音に変わる


 最後に移動した打楽器の位置は、オーケストラの最後尾だった。思っていたよりも、ずっと遠くに指揮者が見える。打楽器奏者は、どうしても生じてしまう"時差"を計算したうえで、ここでティンパニやシンバルを鳴らしているのだ。見上げれば、ミューザ川崎シンフォニーホールの螺旋構造の客席が目に入る。「普段は、あの席からステージを見ているのだな」などと物思いにふけっていると、華々しくオペラの序曲がフィナーレを迎えた。

打楽器と指揮者までは、相当な距離がある。打楽器奏者は、この時差を考慮して楽器を叩いている
打楽器と指揮者までは、相当な距離がある。打楽器奏者は、この時差を考慮して楽器を叩いている


 演奏者の目線に立ってみて、はじめて気が付くことも多かった。クラシック好きにはたまらない体験になるだろう。ちなみに動画コンテンツには、ビゼーのカルメン組曲から「前奏曲」(約1分半)と、モーツァルトの歌劇 フィガロの結婚から「序曲」(約5分)の2本が用意されている。指揮は同楽団 名誉客演指揮者の大友直人氏。東京交響楽団の64名の演奏者が撮影に協力している。
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《近藤謙太郎》

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