なぜ、電気通信事業者がユーザーの暮らしをサポートするサービスを続けているのか? RBB TODAYのブロードバンドアワードでキャリア部門・東海地域の最優秀賞に選ばれた「コミュファ光」を運営する、中部テレコミュニケーション 執行役員 コンシューマ営業本部長 横井和英氏に話を伺った。
■自転車からパソコンまで、コミュファ光が故障対応の窓口になる
【編集長】まずは今年の事業戦略に関して、その柱になるものについてお話をお聞かせください。
【横井氏】2017年4月から、「中部電力forコミュファ光」に新たにガスサービスを加え、ネット・電気・ガスという、いわゆるトリプルプレイのサービスを提供しています。ほかにも、ベースの通信サービスに加える形で、「コミュファ光 くらしサポート」というオプションサービスを提供していますが、こうした通信以外でもお客様の暮らしをサポートするようなサービスを、順次拡大していくという戦略を進めています。
【編集長】「コミュファ光 くらしサポート」のオプションサービスとは、どういう内容なのですか?
【横井氏】例えば、「自転車プラン」という、自転車ロードサービスとその付帯保険があります。これは、最近自転車で事故を起こし、何千万円という賠償金を請求されたというニュースがあったこともあり、自転車保険に対するお客様の関心が高まっていることを受けて、提供を開始したものです。名古屋市では2017年10月から、条例によって自転車損害賠償保険等への加入が義務化されたこともあり、積極的にご提案を進めています。
【編集長】御社は何か自転車と関わりがあるのでしょうか? 例えば、通信で繋がっているようなサービスというわけではないですよね。
【横井氏】通信とは直接関係ないですね。最初は「なんでコミュファが?」という声もありましたが、商品の説明をさせていただくことで、「コミュファ光」加入希望のの半数以上に利用していただいているサービスになっています。
【編集長】お客様の暮らしのサポートを拡大していくとのことですが、他にもどのようなサービスがあるのでしょうか?
【横井氏】今年の1月からサービスを始めたものでは、パソコンやタブレット端末、テレビ、周辺機器の故障に修理対応する、「安心サポートPlus」と「コミュファ光修理サポート」があります。PCやタブレットは修理に何万円という費用がかかるので、お客様に安心してインターネットをお使いいただくためのサービスですね。
■オプションサービスによる満足度が、解約率低下につながる
【編集長】“通信以外でもお客様の暮らしをサポートするようなサービスを拡大していく”とのことでしたが、なぜこのような戦略を取られているのでしょうか?
【横井氏】「コミュファ光」をご利用いただく中で、お客様に安心して便利に日々を暮らしていただくためです。その結果として、我々のサービスをより長く使っていただければと考えています。例えば、「コミュファ光」だけをご利用の方より、「コミュファ光テレビ」とセットでご利用いただく方の方が、解約率は低くなります。さらに、電気・ガスサービスもご契約いただくと、解約率は1/3まで下がるんです。
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【編集長】「コミュファ光」には今どのぐらい会員の方がいらっしゃるのでしょうか?
【横井氏】中部電力の社内カンパニー時代からはじまって、昨年は「コミュファ光」がサービスインしてから15年目の年でしたが、おかげさまで会員数は80万人を突破しました。
【編集長】会員数について、何か今年度で目標としているものがあれば教えてください。
【横井氏】公開しているものではありませんが、80万人の後半ぐらいまでは増やしていきたいと思っています。この地区ではプレイヤーが増えているので、そう簡単なことではありませんが、昨年と同じペースで、通会員数を増やしていきたいですね。
【編集長】最近では、パソコンを使わない人も増えています。そういう人にインターネット回線をアピールするというのは、以前よりも難しいのではないでしょうか?
【横井氏】我々がお客様にご提供させていただいているホームゲートウェイ(ルーター)は、WiFiが標準機能になっています。皆さんスマホやタブレットでコストセーブするために、家ではWiFiでインターネットをご利用されているようですし、そこに親和性はあると考えています。
■通信速度への満足度は高いコミュファ光
【編集長】通信回線の高速化について、お客様のニーズは高まっているのでしょうか?
【横井氏】通信速度について、お客様の不満が高いのはフレッツ系のサービスではないでしょうか。我々はKDDIグループの電気通信事業者なので、それとはまったく別の設備で、上位の外部コネクティビティも含めて品質管理しています。例えば、1Gbpsの回線であれば、それに近い速度が出ますので、「コミュファ光に変えてネットが速くなった」という声は聴きますね。
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【編集長】ということは、競合になるのはケーブル系の回線事業者になりそうですね。
【横井氏】例えば三重県では行政が旗振りをしてケーブルの普及を進めていたので、確かに競合としては意識しています。
■ホームIoTの第一歩としてショールーム開設
【編集長】先ほど、社内でホームIoTについてのデモ展示を拝見しました。こちらも、ユーザーの暮らしをサポートするサービスとして、何か展開を考えているのでしょうか?
【横井氏】ホームIoTは今後の成長分野になると考えています。ショールームに来ているお客様などに体験していただいてますが、多くの方に「これは面白い」と喜んでいただけました。そうして、コミュファ光のファンになっていただく、きっかけになるといいですね。今はまだ準備段階ですが、今後はこの分野における先行者となって、何らかのサービスを提供していきたいと思います。ただ、今の世の中にはない商品なので、お客様に認知していただくためには、プロモーションに一工夫が必要になるでしょう。
【編集長】セールスを考えると、なかなかタテ付けに苦労しそうだと。
【横井氏】アメリカではイノベーターの方から普及が始まっていますが、日本では店頭に置いておけば売れる商品というわけではないでしょうね。全く新しいものなので、そもそもどう使えばよいのか、お客様が分からないわけです。
■ホームIoTは、この先10年で一気に身近なものになる
【編集長】「コミュファ光 くらしサポート」の「おうちプラン」に、鍵やガラスのトラブルにも対応するとありました。この延長線上で、防犯システムの提供なども考えられそうです。
【横井氏】そうですね、防犯についてはサービスのラインアップを検討しているところです。
【編集長】ほかにも、2020年の東京オリンピックでは、4Kなどの高画質な映像配信サービスの需要も高まりそうです。そうなれば、より高速な通信速度が求められるケースも増えてくるのではないでしょうか?
【横井氏】東京オリンピックを待つまでもなく、通信トラフィックは年々増えています。一番大きいのはYouTubeだと思いますが、映像系の通信量が今後も増えていくのではないでしょうか。
【編集長】将来的には1Gbpsの回線でも、ユーザーが不足を感じるようになるかもしれませんね。
【横井氏】どのタイミングかはわかりませんが、今後10年のスパンで考えれば、確実にその時期がやってくると考えています。
【編集長】先ほど、ホームIoTのお話がありましたが、今後10年を考えたうえで、ホームIoTを取り巻く環境はどのように変化していくとお考えですか?
【横井氏】この10年でスマホが一気に普及したように、これからの10年でホームIoT、その後ろにあるAIは、より生活に身近なものになっていくと考えています。このようなインターネット回線から派生していくサービスを、これからもお客様に提供していきたいと思います。