大崎:ない!(笑) まぁ、あったとしても言ったらいかんなというのは強く思っていますね。4月1日に社長から会長になって、正式には6月の株主総会から会長職になるんですけど、6月になったらもう一切口出しせんと決めています。『会社には月のうち10日くらいしか出んと、あとはいないからな』みたいに、皆に言うて回っているんですよ。
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――後任の方々に託すのですね。
大崎:まぁ、10年社長やったら飽きたいうのもありますしね。飽きたし、自分の能力の限界も感じていますし、そもそも賢くもなかったし、リーダーシップもなかったし、中学・高校の時に水泳やサッカーやってても途中でケツ割ってたし、オネエちゃんも二股かけたし、碌なやつちゃうかったんですよ(笑)。
――ちなみに、これまでのキャリアを振り返って大変だったことは?
大崎:大変だったことでもあり、楽しかったことでもあるんですけど、やっぱりタレントとの向き合いですかね。一番楽しかったこともタレントとの思い出、一番大変だったこともタレントとの思い出、みたいな。
――どのタレントさんと向き合った時間が一番濃かったですか?
大崎:松本人志、明石家さんま、島田紳助、のりおよしお……それぞれみんな濃かったですよ。心斎橋筋2丁目劇場の時は、朝から晩まで一緒やったし、その前の漫才ブームの時は朝から朝まで一緒やったし……(笑)。まぁ、ず~っと濃いっちゃ濃い。濃密な時間でしたよね。
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――会長の半生を描いた本『笑う奴ほどよく眠る 吉本興業社長・大崎洋物語』にもその時のことが語られていますよね。
大崎:あの本、『噂の真相』で僕のことを「悪いヤツや」って6回連続で記事にした常松っちゃん(常松裕明)が書いてくれたんですよ。「お前、俺より俺のことよう知ってるやろ。書くんやったら書いたらええんちゃう?」って言って(笑)。
――そうなのですね(笑)。その本の中で「会社は時代に即した組織であるべき」という旨のことが書かれていたかと思うのですが、吉本興業は新たな時代に向けて今後、どうあるべきだとお考えですか?
大崎:個人であろうが、法人であろうが、当ったり前の話ですけど、やっぱり時代の空気を吸っていないと生き残れないじゃないですか。転がる石に苔は生えないですから。そこで誰が一番時代の空気を吸っているかといえば、中学生や高校生といった若者ですよね。少なくとも、65歳のオジサンは時代の空気を吸ってるつもりでも、吸ってませんからね!(笑) だから一切口出しはしないし、いらんことは言わないほうが良いと思うんですよ。で、20、30、40、50代前半くらいの社員があーだこーだとやってくれたら良いんじゃないですかね。だって、Tシャツ着たってもう似合ってへんし。何やったら、前と後ろ反対の時もあるし。 そんな状態で「これからの吉本は~」なんて言ったって、何の説得力もあれへん!(笑)