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初めての本格VR演劇! テクノロジーが切り開く体験型エンタメの未来とは

KDDIの「VR同時視聴システム」を舞台演出に活用

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初めての本格VR演劇! テクノロジーが切り開く体験型エンタメの未来とは
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KDDIの「VR同時視聴システム」を舞台演出に活用



ゴーグルやヘッドセットを着用することで360°の仮想空間に身を置くことができる「VR(Virtual Reality=仮想現実)」。ゲームや動画のみならず、近年は様々な分野への応用が進んでいる。

2019年6月27日~7月1日、東京・中目黒ウッディシアターで上演された『Visual Record ~記憶法廷~』(主催:テラスサイド)では、VRを演劇の舞台演出に活用する画期的な取り組みが行われた。これまでもコンテンツ販売などでVR技術を演劇に活用することはあったが、舞台演出に本格的にVRを取り入れるのは前例のない試みである。









この『Visual Record ~記憶法廷~』は観客参加型のミステリー演劇。4人の役者が代表陪審員、そして観客ひとりひとりが陪審員となり、劇中の判事役からの指示でゴーグルをのぞき、VR内の証拠映像を見たうえで、殺人容疑の被告人を裁く。

無罪か有罪かの評決を下すのは陪審員である観客自身。物語の終盤、挙手による多数決で評決を下す。無罪か有罪かによって異なる結末が用意されている。



VR内の証拠映像は上下左右180°の視野を自由に観ることができる。これは視点が舞台上に限られている通常の演劇とは決定的に違う部分だ。それぞれの観客は証拠を見逃すまいと、首を動かし、映像の隅々まで目を凝らす。



この作品で採用されたのは、KDDIが開発した「VR同時視聴システム」。このシステムでは最大100人まで同時に同じVR体験をすることができる。

いかに自然にVRを取り入れるかに苦心した



長い歴史を持つ演劇において、VRというテクノロジーを活用することはどのような意義があるのか。そして、テクノロジーの進化が演劇をはじめとするエンタメ業界にもどのような影響をもたらすのか。

「今回初めてVRを取り入れた舞台を演出させていただきましたが、とても楽しく、また有意義な経験となりました」

そう語るのは、『Visual Record ~記憶法廷~』の演出を手がけた西条みつとしさん。



今回の作品において西条さんは、舞台の演出に加えて、VRの撮影監督も務めたが、そこにも通常の撮影とは違った難しさがあったという。

「VR映像は180°映ってしまうので、見せたくない部分まで見えてしまうこともあるんです。撮っているときはわからないけれど、撮ったあとにリプレイすると、こんなところまで映ってしまうのか、と驚くことがありました。そこで、カメラを置く場所を工夫するなど、試行錯誤しながら撮影を進めました」

VRを、表現の幅を広げるツールに



今回の演劇で採用された「VR同時視聴システム」はどのような仕組みになっているのか。そして、どのような特徴があるのか。開発を担当したKDDI 経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部の唐戸佑輔と吉村隆史に話を聞いた。



「この『VR同時視聴システム』の特徴は、リモコンやコントローラーを使わず、ゴーグルを装着するだけで最大100人が同時にVRを体験できること。一般の方がご体験いただく際、セッティングや操作方法などの課題がありますが、今回のシステムではなによりも“わかりやすさ”を意識し、誰でも体験できることを心がけました。すべてのゴーグルは1台のタブレットで一括管理でき、利用者の着脱状況や電池残量の確認など細部にわたってコントロールすることが可能です。将来的に5Gが本格化すれば、映像のストリーミング配信も可能になります。まず現時点では普及をめざすことを優先して考えており、ゴーグルやタブレットなどのハードウェアは市販品を活用することで、採算性にみあったシステム構成にしています」(吉村)



「デバイスの台数が多ければ多いほど複雑な処理が必要になります。今回の客席数は40席ほど。観客用と役者用をあわせて約100台のVRゴーグルを用意しました。演技を止めないように安定稼働を最優先に考え、システムを構築、運用しました」(唐戸)

KDDIの吉村と唐戸は、「VRはあくまでもツールにすぎず、それをどう活用するか、クリエイターさんのアイデアにいつも耳を傾けている」という。

「私たちとしては、なんでもおっしゃっていただきたいですね。西条さんのようなクリエイターの方には『こういうことやりたいんだけど、できる?』『こういう使い方ってできるの?』というリクエストがあれば、どんどん言っていただければ。無茶振りも大歓迎です(笑)」(吉村)

「メインとサブでいえば、当たり前ですが、演劇がメインで、VRはサブに過ぎません。クリエイターの方には、演劇の表現の幅を広げるツールとして、VRを積極的に活用していただきたいですね。個人的にも、西条さんがVRを活用して次にどんなことをやってみたいかが気になります。今回は裁判もので、僕らとしてもVRの活用シーンのイメージが湧きやすかったけれど、次にたとえばコメディや恋愛ものが題材になったとき、VRをどのように活用できるのか、とても興味があります」(唐戸)

演出家が考えるVRの可能性とは



『Visual Record ~記憶法廷~』の上演後、観客からは次のような感想が寄せられた。

「VRゴーグルを手に観劇のワクワクとテーマパークのアトラクションで味わうようなドキドキを両方堪能。観ている間は謎解きに必死でした。まさに新感覚演劇体験!」

「終演後の余韻がすごくて、台本のバカ売れが納得です。可能性の塊のような舞台、楽しかった!」

「新しい世界観で、観ていてワクワクしました。臨場感がすごかったです! VRと演劇の融合にいろいろな可能性があると感じました」

当の西条さんも「VRには無限の可能性を感じる。またぜひやってみたい」と意欲的だ。



「舞台の演出に初めてVRを活用してみて、もっとこうしたい、ああしたい、といったアイデアがたくさん湧いてきました。今回は舞台上の空間とVRの映像空間は完全に別物でしたが、たとえば、それらを同じにしたらどうなるか? お客さんがVRを通じて舞台上の映像が見ることができたら、自分が役者になった気持ちで役者の視点を追体験できるわけですよね。

それも、舞台上に役者が6人いたとして、それぞれの視点で撮って、自分で切り替えることができたら、これまでにない面白いことができそう。自分が客席にいるのか、舞台上にいるのかわからなくなるような、これまでにない不思議な感覚を与えられるんじゃないかな。事前に映像を撮る準備が必要なので、作業としては大変になりそうですが(笑)。

まあ、それらはあくまでも例に過ぎず、やりようはいろいろあると思いますし、そういうアイデアも今回初めてやってみたからこそ思いつくことですね」(西条さん)

「VR同時視聴システム」のエンタメへの活用はまだ始まったばかりだが、次世代通信規格5Gと組み合わさることで、その可能性はさらに広がっていく。高速・多接続・低遅延が特長の5Gが本格化すれば、たとえば数千人が同時視聴する演劇やスポーツ観戦、あるいは音楽のライブの演出としても、「VR同時視聴システム」が活用できるかもしれない。5GとVRの融合が、エンタメの新しい楽しみ方を切り開いていくことを期待せずにはいられない。



文:榎本一生
インタビュー撮影:有坂政晴(STUH)

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