【仏教とIT】第19回 僧侶派遣サービス「お坊さん便」の彼方へ | RBB TODAY

【仏教とIT】第19回 僧侶派遣サービス「お坊さん便」の彼方へ

「お坊さん便」という黒船

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【仏教とIT】第19回 僧侶派遣サービス「お坊さん便」の彼方へ
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「お坊さん便」という黒船



2015年12月、インターネット通販サイトAmazonが、お坊さん派遣サービスの取り扱いを始めたとき、お寺社会には激震が走った。

その派遣サービスの名は「お坊さん便」。株式会社よりそう(旧:株式会社みんれび)が手掛ける事業である。戒名授与の有無などによって金額の設定は異なるが、自宅などで一か所で法要をつとめるだけの「基本(移動なし、戒名なし)」プランなら45,000円で、商品として提供されている。カートに入れて注文すれば、法要日程の希望日時、場所、宗派を確認するメールが届き、それに返信すると適切な僧侶が手配してもらえる。お車代やお膳料なども一切不要である。実にシンプルで便利なシステムだ。

Amazonの商品となったことで一気に注目を集めたお坊さん派遣サービスだが、実際のところはそれ以前からいくつも存在した。これだけネットインフラが整備された時代。ネット上でお寺を探そうと発想するほうが自然である。私はかねてから、各宗派こぞって全国のお寺の情報や、人気僧侶ランキングなどをオンラインで開示していくほうが、お寺や僧侶の質の向上につながると考えている。しかし、このようなスタンスは、残念ながら圧倒的にマイノリティである。大抵の僧侶は、江戸時代からの檀家制度を延命させようと、檀家さんとのオフラインでのつきあいに固執してきた。

これが時代錯誤であることはいうまでもない。だから、Amazonの「お坊さん便」に対して、公益財団法人全日本仏教会が「宗教行為としてあるお布施を営利企業が定額表示することに一貫して反対してきました。お布施は、サービスの対価ではありません」などというプレスリリースを出したとき、世間からは大ブーイングが起こった。このような主張よりも、「お坊さん便」のほうが、「檀家でなくても法事をしたい」という素朴な宗教心情にずっと寄り添ってくれていると受け止められたのである。

もちろん、商業ベースのロジックで、宗教さえも商品として消費されていくことを、私も手放しで喜ぶつもりもない。ただ、「お坊さん便」という黒船の砲撃によって、「寺院社会のオンライン化」に本格的に向き合うようになったことは、お寺の現代化への大きな一歩だった。


「indeed×お寺」という夢告



「indeed×お寺」という夢から誕生した「お寺の窓口」


そんな時代状況のなかで、ネット時代における健全なお寺インフラの在り方を模索している気鋭の男性僧侶がいる。真宗大谷派の遠島光顕さん(30)である。

「求人情報検索エンジンindeedとお寺を掛け合わせる夢を見たんですよね。それが2015年の10月21日。3日間つとめられる報恩講(親鸞聖人の忌日法要)の中日で、お告げのような気がしました」という。

突拍子もないような話だが、この夢にはいちおう背景がある。北海道のお寺の次男として生まれた遠島さんは、大学卒業後に教師取得資格コースにて僧侶の資格を取得したが、その後はお寺を離れて広告代理店に勤務し、indeedのサービス普及につとめる仕事などをしていた。そのような生い立ちを考えると、見るべくして見た夢だとも言える。

企画書をまとめ、株式会社AVENILを立ち上げ、サービスリリースに向けて準備を始めていた矢先に、Amazonの「お坊さん便」騒動が起こった。僧侶たちのあいだで不安感や危機感が極度に高まったが、新米僧侶の遠島さんに味方してくれるほど気概のある人はほとんどいなかった。それでも2016年6月にポータルサイト「お寺の窓口」のサービスを開始したが、登録してくれたのはわずか4ヵ寺。半年間、運営してみても展望は見えなかったので、サイトを閉鎖することも脳裏をよぎった。

「閉鎖したら閉鎖したで、それまで協力してくださってたお寺に迷惑かけることになります。どうやって収益をあげるか悩むところもあったんですが、その当時はお寺から登録料や月額使用料をもらう有料プランしかなかったため、無料プランを作りとにかくお寺のために尽くすことにしました。一人の僧侶が顔も名前もさらして、真剣にやっているところをなんとか評価してもらおうと腹をくくりました」


宗教ベースのサービスに賭ける



この遠島さんの決断から、一気に登録寺院が20ヵ寺まで増えた。

そして、サービスリリースから3年が経った現在では、およそ150ヵ寺が登録している。多くのエリアをカバーできるようになり、ポータルサイトらしいサービスになった。葬儀や法事の依頼などを通じて、お寺と新しい縁を結ぶ人が後を絶たない。

「『お坊さん便』はじめ僧侶派遣サービスは、お寺と利用者が直接つながることを嫌います。手数料が取れなくなるからです。でも、『お寺の窓口』は、利用者をいかにお寺につなぐかを目指しています。紹介手数料も取りません。どちらがお寺社会の将来に寄与できるか、利用者に満足してもらえるか。答えは明らかだと思います」と遠島さんは自信をのぞかせる。

遠島さんは姉妹サービス「専門家の窓口」も運営し、双方向から課題解決に取り組む



僧侶の資質向上のために、定期的に勉強会「お寺の窓口会」を開いているのも特徴的だ。弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士などの専門家とも連携し、遺産相続など人の死にまつわるトラブルをうまく解決する対応力を、お寺に提供している。このトラブル解決のネットワーキングの仕組みを、日本最大級のQ&Aサイト「OKWAVE」が高く注目し、昨年、事業提携を果たした。

遠島さん(左)と、OKWAVEの創業者で会長の兼元謙任さん(右)。感謝経済プラットフォームローンチ発表会に


「生まれたときからお世話になってきたお寺を残したいなぁぐらいの軽いモチベーションで始めた事業でした。でも、多くの利用者から評価されるなかで、やっぱりお寺なくして日本文化はありえないと気づかされました。お寺のある日本の風景を残したいと本気で思っています」

いくつものサービスがしのぎを削るなかで、「お寺の窓口」が本当に軌道に乗っていくかどうか、まだわからない。ただ、私としては、せっかくなら「お寺の窓口」のような良質なサービスこそが、正しく評価されて生き残ってほしい。商業ベースではなく、宗教ベースでサービスを展開してこそ、お寺は生き生きとした宗教的・文化的な力を保ち続けるはずである。

僧侶と経営者の2つの顔を持つ遠島さん。実際に葬儀や法事を執り行っての経験を、「お寺の窓口」運営に生かしている


池口 龍法氏
池口 龍法氏

【著者】池口 龍法
1980年兵庫県生まれ。兵庫教区伊丹組西明寺に生まれ育ち、京都大学、同大学院ではインドおよびチベットの仏教学を研究。大学院中退後、2005年4月より知恩院に奉職し、現在は編集主幹をつとめる。2009年8月に超宗派の若手僧侶を中心に「フリースタイルな僧侶たち」を発足させて代表に就任し、フリーマガジンの発行など仏教と出合う縁の創出に取り組む(~2015年3月)。2014年6月より京都教区大宮組龍岸寺住職。著書に『お寺に行こう! 坊主が選んだ「寺」の処方箋』(講談社)、寄稿には京都新聞への連載(全50回)、キリスト新聞への連載(2017年7月~)など。

■龍岸寺ホームページ http://ryuganji.jp
■Twitter https://twitter.com/senrenja

《池口 龍法》

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