NTTドコモがFOMAの終了を正式にアナウンス~FOMAの功績を振り返る~ | RBB TODAY

NTTドコモがFOMAの終了を正式にアナウンス~FOMAの功績を振り返る~

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発売開始初期のFOMA端末。電子手帳型端末、テレビ電話機能をアピールするようなデザインの端末など当初はユニークなラインアップだった
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 NTTドコモ(以下、ドコモ)は、第3世代移動通信方式の「FOMA」とモバイルインターネットサービス「iモード」の提供を2026年3月31日もって終了すると正式にアナウンスした。「FOMA」は、2001年10月に商用サービスを開始した。これは世界初の第3世代移動通信サービス(以下、3G)の商用化として歴史に刻まれている。また「iモード」はFOMAスタートに先駆けて、第2世代移動通信サービス(以下、2G)の「MOVA」のインフラと端末で1999年2月にサービスを開始した。携帯電話から9600bps(1999年当時)の通信速度でインターネットや電子メールの送受信が可能だったが、これがFOMAに代ることで通信速度は384kbps(2001年当時)と飛躍的に向上し、より大容量な動画やゲームなどが楽しめるようになった。

 わが国ではスマートフォン(以下、スマホ)の普及が他の先進国より遅れをとってきたが、それはFOMA以降の携帯電話がすでにスマホに匹敵する機能を搭載しており、むしろスマホ普及以前に世界のどの国よりも早く、わが国のユーザーの多くがスマホで得られる利便性を携帯電話端末で享受していたといえよう。

■今では当たり前となったことの数々がFOMAの時代に誕生

発売開始初期のFOMA端末。電子手帳型端末、テレビ電話機能をアピールするようなデザインの端末など当初はユニークなラインアップだった

 現代はもはやスマホなしの生活など考えられないほど、その様々な機能やサービスが日常生活の中に溶け込んでしまっているが、それらのほとんどはFOMAの普及発展の時代に生まれたものばかりである。しかも世界に先駆けて日本で考案され、わが国の携帯電話サービス上で定着したものの数々が、その後スマホに取り入れられて世界に広まっていった。FOMAの普及発展期はまさにわが国の携帯電話産業が世界最先端を突っ走っていた時代だった。FOMAの進展の過程で登場した携帯電話機能やサービスを振り返ってみたい。

●アプリ
携帯電話上でプログラムを動作させる機能、いわゆるアプリの提供が開始されたのは2001年1月。じつはここにたどり着く前に、携帯電話には画像をダウンロードできる機能(待受画像など)や、楽曲ファイルをダウンロードできる機能(着信メロディ)などが順次実装されていった。そしてこのアプリ機能は「ゲーム」がダウンロードできるようになったという触れ込みで広がっていった。

これは一般のユーザーに携帯電話で可能になったことを、わかりやすく伝えるためのキャッチであり、技術的にはプログラムが動作する環境(ドコモの場合はJava仮想マシン)を端末に搭載し、仕様に沿って開発されたプログラムをダウンロードして端末上で実行させることが可能になったことを示す。じつはこれ、ものすごく画期的なことで、これを境に携帯電話が大きな進化を果たしたことになる。携帯電話としての見た目は従来の端末と大きな変わりはないとしても、それ以前の携帯電話は単なる”通信機器”、アプリが利用可能な携帯電話は”コンピュータ”に進化したぐらいのインパクトがあったのだ。

●テレビ電話機能
3Gに標準搭載されることになったのがテレビ電話(ビジュアル通話)機能である。FOMAの先進性をアピールするもののひとつとして大きく注目されたが、当時のユーザーには音声通話とは異なりテレビ電話の利用経験がない人が大半だった時代で、端末にこの機能が搭載されていても「恥ずかしい」などの理由で利用するユーザーはほとんどいなかった。でもそこから19年の時間を経て、今やスマホを通じたビジュアル通話(ビデオ会議を含む)は日常的なものになった。

●SIMカードの採用
SIMカードは、世界では2Gの時代からSIMカードが採用され端末と回線の分離が実現できていたが、わが国では長らく端末と回線は通信事業者がセットで提供される形態をとってきたため、2GまではSIMカードが導入されてこなかった。しかし、3Gでは世界統一のルールとしてSIMカードの採用が取り決められたため、国内の通信事業者もこれに従わざるを得ず、FOMAでもSIMカードが採用されるに至った。端末と回線の分離を嫌うわが国では当然ながら他の通信事業者のSIMカードを入れると端末が動作しないようにする、いわば”SIMロック”が前提となってしまった。SIMを採用する意味がないではないか。近年になってようやくSIMロック解除ができるようになったことは大変喜ばしいことだ。

●国際ローミング
わが国では2Gにおいては独自の通信方式が採用され、他国では利用できないことが当たり前のこととなっていた。3Gでは国際電気通信連合 (ITU) において通信方式を世界で統一規格化することで、世界的にローミング利用を可能とすることを義務付けた。ただしFOMAとして2001年9月に3Gがスタートした時点の端末やネットワークは、世界に先行して3Gサービスを実現させることを急いだため国際仕様が定まる以前の規格でサービスインすることとなった。このため国際ローミング対応は少々遅れ、2004年12月に発売されたN900iG、N901iC以降の端末からスタートとなったがこれでようやく日本の電話番号のままで海外でも発着信ができるようになった。ただし電話料金は国や地域によって1分200~300円と、驚くほど高価だった。

●おサイフケータイ F900iC(2004.8)
おサイフケータイ機能も、今やスマホに決済機能が入り世界で利用される機能となったが、世界に先駆けたのはわが国だった。携帯電話にICカードを内蔵させ、電子マネーや電子会員証にできるサービスとして、ドコモは2004年6月に「おサイフケータイ」対応端末としてF900iCなど2Gの3モデル、FOMA1モデルの発売を発表した。2006年1月からJR東日本がモバイルSuicaの対応を始めたことで利用者が一気に増えていった。

■サービス開始当初は混乱も多かった

 2001年9月に世界に先駆けて3Gサービスとして商用サービスをスタートさせたFOMAであるが、新たな周波数帯域を割り当てられ、ゼロからネットワークを構築する必要があった。すでにアナログ通信方式の1G、デジタル通信方式の2Gは共に人口カバー率で99%を超えるネットワークを形成し、どこでも携帯電話がつながる環境が整っていた。そうした中で、FOMAは都心部から徐々に通信エリアを整備して拡げていく形で商用サービスを始めたことから、当初契約したユーザーはほとんど電波につながらず、サービスに対する評価は散々なものだった。ちなみにこの失敗もあってFOMAの後継となる次世代ネットワークXi(クロッシー)がスタートする際は、3GとXiのデュアルネットワーク対応端末を投入するなどの工夫をした。しかし、ドコモはFOMAサービスエリアの急ピッチな拡大を進め徐々に2Gからのユーザーの乗り換えが進み、2011年にはピークとなる約5700万契約を突破するに至った。

 わが国の、そして世界のモバイルサービスの先駆けを次々に生み出してきたFOMAが2026年3月31日もって終了することとなったが、FOMAネットワークの運用に割かれていた経営資源は今後、2020年にスタートする5Gサービスに集中させていく。ネットワークはおよそ10年ごとに新しい世代がサービスインし、併用期間を経て、古いネットワークが終了して世代交代していく。端末の進化と足並みを揃え、ネットワークも常に進化を続けている。

《木暮祐一》

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