【仏教とIT】第25回 新型コロナウィルスを成仏させよう!! | RBB TODAY

【仏教とIT】第25回 新型コロナウィルスを成仏させよう!!

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【仏教とIT】第25回 新型コロナウィルスを成仏させよう!!
【仏教とIT】第25回 新型コロナウィルスを成仏させよう!! 全 3 枚
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いまこそ、大仏建立!!



 連日、新聞、テレビ、SNS、どこを見ても新型コロナウィルスの話だらけである。ネガティブな情報ばかり流れてくると、さすがに気が滅入る人も多いだろう。情報化社会における情報の洪水というのは、容赦なく人の心を侵していくことを痛感した。



 そんな荒廃した状況だから、いまこそお寺の出番!といきたいところだが、感染症が相手となるとちょっと勝手が違う。ウィルス感染のリスクを考えると、お寺に人々を集めるのははばかられる。震災などの天災地変のときには、お寺は避難所となることも少なくないが、今回は残念ながら同じようにはいかない。

 私のところでも、2月末から3月初旬にかけて開催する予定だったライブイベントやトークイベントをいくつか中止した。ただ、単に中止にするだけでは、楽しみにしていてくれた人に申し訳が立たない。そこで、古くは聖武天皇が疫病や飢饉が起ったときに、奈良・東大寺の大仏建立を発願したことにならい、代わりにライブ配信でウィルスを成仏させるための大仏を建立した。もっとも、私のところで作ったのは、大仏といっても立派な鋳造物ではなく、新聞紙丸めて作り上げる程度の造形物にすぎない。わずか数十分で建立した大仏が新型コロナウィルスを成仏できるなどと本気で信じているわけではないが、それでも視聴者には多少ほっこりしてもらえたようだった。




コロナばっかりで気が滅入るから



 奇しくも、私のところで大仏建立配信をしたのと同じぐらいのタイミングから、ツイッター上では「#コロナばっかりで気が滅入るから好きな仏像共有しようぜ」というハッシュタグで、仏像の写真を投稿する人たちが相次いでいる。

 電車やバスに乗ってお寺に行き、仏さま拝むとなると感染のリスクが発生する。だが、ツイッター上でバーチャル参拝するならリスクゼロである。まったく、うまいやり方だと舌を巻いた。そして、バーチャルかリアルかという仏像の拝み方の違いはあっても、病気が流行ったときに人々の心を癒すのは、いまも昔も仏像なのだという不変の真理を感じた。

 大仏写真家・半田カメラさんは、このハッシュタグとともに、世界一高い(120メートル)青銅製立像として知られる牛久大仏(茨城県牛久市)が打ち上げ花火に照らされる写真を投稿した。「世間がいま殺伐としているので、誰が見ても元気が出る写真をタイムラインに流したかった」という。



 半田さんは、単なる好奇心からふと牛久大仏におまいりしたときに、圧倒的なパワーを感じた。それ以来、全国各地を旅して、それぞれの土地で拝まれている仏像の魅力を写真と言葉で伝えてきた。「仏さまって心を治療してくれるお医者さまやカウンセラーみたいな存在です。落ち込んでいるときには、元気がもらえます。怒られているように感じるときもあります。心を映す鏡だなぁと思います」「私は特に露座の大仏さまが好きですね。大きいほどに畏敬の念が高まります。本堂の奥にいらっしゃるご本尊よりも身近に感じられるのも魅力です」と半田さん。

これまでに2冊の仏像写真集を出版。外出しにくいいま、座右に置きたい書籍



情報は人を不安にする



 さて、連日の報道で不安が増幅され続けている時期だからこそ、そもそも、正しい知識や情報は人間を幸せにするのか、ということを改めて考えてほしい。

 10年前から私は「お寺で宇宙学」というイベントに関わっている。きっかけは、宇宙物理学の専門家である磯部洋明さん(京都市立芸術大学准教授)の「お寺で宇宙の話をしたら面白いはず」というひらめきだった。主に京都のお寺を会場に、現在までに30回実施されている。

 イベントの内容はというと、まったくタイトルの通りで、お寺でただお坊さんと科学者がそれぞれの世界観を語る、それだけの時間である。だが、科学者が扱うのは人間の住む世界。一方で、お坊さんが扱うのは人間の心。人間の煩悩が世界を作っていくと語るお坊さんと、科学的に宇宙を解明しようとする科学者のあいだでは、議論はどうにも交わらない。後半は参加者も車座になって話の輪に加わる。いよいよ議論は白熱していく。

 「お寺で宇宙学」でそんなカオスな時間を何度か過ごしたころに、東日本大震災が発生し、原発事故が起った。ニュースが連日放射能汚染の事実を伝えるほどに、人々は不安におののいた。そのとき磯部さんは「科学的な真実を知ることだけでは、必ずしも人は幸せになれない」と痛切に知った。そして、「お寺で宇宙学」を続けてお坊さんとの対話を重ね、世界を多面的に見ていくことの大切さを感じたという。

お寺の本堂で宇宙の話に耳を傾ける。この日のテーマは江戸時代の天文学


 新型コロナウィルスの感染におびえるいまも、ちょうど同じだろう。天災地変や感染症の恐怖は、見つめれば見つめるほどに怖い。この世のどこかに目を背けさせてくれる場所が要る。そして、長い歴史を通じてその役割を果たしてきたのは、仏像やお寺のような宗教的な世界にほかならない。とりわけこれから訪れるお彼岸の時期には、真西に沈む夕日のはるか向こう側に極楽浄土を拝むというのが、日本の信仰の風情であった。ビルが立ち並ぶ現代の都会暮らしでは、夕日が沈む景色など拝めそうにないけれども、代わりにPCやスマホの画面ごしにいつでも仏像を眺めてほっと一息つけるのは、私たちの時代の特権である。

 これだけ新型コロナウィルスの感染者が広がってしまったいま、すぐにこの流行が終息するとは到底思えない。仏像を拝んだところですぐにウィルスが成仏するわけではないとしても、仏像を拝むときにこの苦境を乗り切っていくパワーをもらえるのは確かである。はるか昔からこの国に息づいてきた祈りの叡智が、生かされるべきときだと思う。


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池口 龍法氏
池口 龍法氏

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【著者】池口 龍法
1980年兵庫県生まれ。兵庫教区伊丹組西明寺に生まれ育ち、京都大学、同大学院ではインドおよびチベットの仏教学を研究。大学院中退後、2005年4月より知恩院に奉職し、現在は編集主幹をつとめる。2009年8月に超宗派の若手僧侶を中心に「フリースタイルな僧侶たち」を発足させて代表に就任し、フリーマガジンの発行など仏教と出合う縁の創出に取り組む(~2015年3月)。2014年6月より京都教区大宮組龍岸寺住職。著書に『お寺に行こう! 坊主が選んだ「寺」の処方箋』(講談社)、寄稿には京都新聞への連載(全50回)、キリスト新聞への連載(2017年7月~)など。

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■龍岸寺ホームページ http://ryuganji.jp
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■Twitter https://twitter.com/senrenja
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《池口 龍法》

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