【体験レポート】香港の新型コロナ水際対策……スマホのGPSとウェアラブル端末で防ぐ! | RBB TODAY

【体験レポート】香港の新型コロナ水際対策……スマホのGPSとウェアラブル端末で防ぐ!

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香港 (c)Getty Images
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 RBB TODAYで執筆をお願いしている香港在住の携帯研究家・山根康宏氏。世界中をとびまわっており、いつどこにいるのかわからないことも多いのだが、ある時香港に帰るという情報をキャッチ。ここではITシステムを駆使した、自宅待機者のトラッキングの様子を伝えてもらった。以下、山根のレポートである。



 新型コロナウィルス(COVID-19)の感染防止対策として、香港では海外からの入国者に対し自宅待機を要請しており、スマートフォンとウェアラブル端末を使ったトラッキングシステムを導入している。

 香港は2020年4月22日以降、香港国際空港からの入国者は香港居民のみが許可され、観光客などの非居民は一切入国できない。また入国した香港居民は強制検疫が義務づけられ、空港から検疫所へ直行し検査を受ける必要がある。検査結果が判明するまでは隔離施設(政府借り上げのホテルなど)で待機しなくてはならない。検査は24時間以内に終了する。

 検査結果が陽性の場合はそのまま専用の隔離所へ再移送される。一方陰性の場合は隔離施設を出て自宅やホテルで14日間の待機が求められる。自宅内でも待機する場所は自分のみの個室とし、家族との接触も制限される。さらに自宅からの外出は一切禁止される。

 この自宅待機期間中は、政府から配布されたリストバンド型のウェアラブル端末とスマートフォンアプリを使い、本人が自宅にいることが常時監視される。違反者は2万5000香港ドル(約35万円)の罰金と6か月の禁固刑となる。

 香港国際空港では、飛行機から降りるとまずはスマートフォンへ専用アプリ「Stay Home Safe」のインストールが求められる。アプリを入れたのちに強制検疫の受付が行われ、その場で係員によりウェアラブル端末が腕に装着される。この際に端末を腕から外してはいけないこと、罰則を口頭と書面で説明される。

香港国際空港到着後のアプリのインストールの案内


 ウェアラブル端末にはゴムベルトがついており窮屈とは感じられなかった。水が多少かかるくらいの防水性はあるものの、湯船につかるといったことは禁止される。本体表面と側面には端末ごとに異なる個体番号とそのQRコードが印刷されている。

 検疫受付書類には本人の氏名、香港IDカード番号、住所、携帯電話番号を記載する。その場で係員がこちらに電話をかけ、自分の持っているスマートフォンに着信できることを確認するため、虚偽の番号の申請は不可能だ。

空港で即座に取り付けられるウェアラブル端末。個別のQRコードが印刷されている


 検疫受付終了後、香港に入国。荷物を受け取ると空港そばの検疫所へ専用バスで移動し、検査サンプルを取得後ホテルに移送され1泊となる。翌日に自宅への帰宅が認められれば(すなわち検査結果が陰性ということ)、公共交通機関などで自宅へ戻る。なおその際のタクシーのナンバーや電車の乗った時間・車両位置などは記録しておかねばならない。

 さて自宅についてからは自分の待機場所の登録を行う。まずスマートフォンのアプリを立ち上げ、空港でリストバンドを装着後に指定された暗証番号を入力すると、設定画面が立ち上がる。ここでリストバンド登録をタップしリストバンド端末のQRコードを読み取る。続けて自宅登録ボタンをタップすると「室内で60秒動いてください」の表示となるため自室内を端から端まで移動する。60秒後に登録が完了となり、あとはホットラインへの通知ボタンだけの画面となる。

アプリを起動、ウェアラブル端末のQRコードをスキャンしてペアリングさせる


「I AM NOW HOME」をタップ


 この操作で行われるのはプライバシーに関する法令に則り、本人の滞在可能範囲が登録されるとのこと。すなわち自分の位置(住所)を登録するのではなく、自分が移動する範囲のパターンが登録される。つまり60秒間動き回った範囲のみが、今後14日間(実際には香港国際空港到着後から14日間なので、自宅待機は13日間となる)移動してよいエリアとなるのだ。もしその登録エリアの外にスマートフォンが移動すると「初期登録した場所(自宅)から外出した」と検知される。そして外出が検知されると即座に関係部署と警察に通報される仕組みとなっている。

 また位置の登録は、スマートフォンのGPS、携帯回線の基地局からの位置情報などが利用される。ウェアラブル端末はBluetoothでスマートフォンと連携するためBluetoothモジュールとバッテリーが内蔵されているが、それ以外のセンサー(GPSなど)に関しては不明だ。

60秒間動き回ったエリアのパターンが登録される


 では自宅待機期間中はどのように監視されるのだろうか。まず自宅待機中は常にスマートフォンをネットに接続しておかなくてはならない。これは携帯電話回線の他、Wi-Fiでも可能だ。アプリが常に場所の情報を送信するためである。

 アプリの画面はホットラインボタンしかないため、特に何かすることはなく、またアプリを入れる以外の説明はされなかった。そしてさっそく自宅待機2日目の朝に、衛生署係員から電話があり「自宅にいるか」「体調は問題ないか」と質問された。毎日2回の検温が義務付けられており体温を聞かれても返答できるが、そこまで質問されることは無かった。アプリだけではなく電話でも確認が行われるのだろうか。

アプリの画面。通常何かすることは無い。健康悪化時はホットラインへ連絡できる


 続けて夕方に再び電話がかかってきた。今度は別件で「アプリからの位置情報がこちらにきていない」とのこと。すぐさまスマートフォンのアプリを立ち上げると、リストバンド登録の初期画面に戻ってしまっている。おそらく前の晩に自宅内の携帯電波の入りが悪かったため、別のSIMカードに入れ替えたときにアプリが初期化されたと考えられる。またこのことからスマートフォンの電源を切ったときや充電が切れたときも位置情報が途絶えたことが関係機関にはわかるようだ。つまり自宅待機期間中はスマートフォンを常に充電しておかなくてはならない。

 ここでアプリを立ち上げウェアラブル端末を登録しようとすると「すでに登録されている」とのエラーが表示される。電話での指示は「アプリを削除して再インストール」とのことでその通り行うと、改めてウェアラブル端末を登録することができた。アプリが初期画面に戻った本当の原因は不明で、検疫受付時に配布された説明書にはSIMカードの入れ替えに関しての説明も無かった。しかしアプリを入れたスマートフォンを使って着信テストを行ったことから、SIMカード情報とアプリが紐づけられていたのではないかと考えられる。またアプリが初期状態に戻ってしまったため、朝は電話がかかってきたのかもしれない。

 その後、翌日以降は普通に自宅での待機生活を続けた。シャワーする際にはウェアラブル端末をなるべく濡らさないようにしたが、これも慣れれば面倒とは思えなかった。但し日々の生活の中で端末上部のQRコードや番号に触れてしまうと文字が薄くなってしまい消えそうになるため、手では触れないように気を使わねばならなかった。

14日後に取り外した状態。モザイクをかけているが、印刷が薄れているのがわかる


 そしてこのまま自宅待機が終了するまで何もないと思っていた7日目の午後、スマートフォンからアラーム音とバイブレーションが鳴り響いた。アプリを立ち上げると普段とは異なる画面となり「30秒以内にウェアラブル機器のQRコードをスキャンしてください」という画面になった。ここでスキャンを行うとアプリは自動終了。自宅にいることが確認されたということだ。これはウェアラブル端末を腕から外し、スマートフォンと共に自宅に置いたまま外出した場合を検知するために行われる。手ぶらで外出すればアプリの通知を知ることができず、自宅にいないことが判明するわけだ。

7日目にアプリが通知を受ける。ウェアラブル端末のQRをすぐに読み取らねばならない


 ちなみに自宅待機終了後、15日目にアプリを消さずにしておいたところ、同様に午後になってスマートフォンにQRコードを読むように通知が行われた。このことからアプリによる自宅待機確認は一定期間ではなく不定期に行われるようだ。

 ところで香港政府は当初、QRコードを印刷したリストバンドを腕にはめて自宅待機状態を監視していた。しかしそれではスマートフォンを自宅に置いたまま外出できてしまう。もちろん外出中にスマートフォンアプリに「QRコードを読むように」との通知が届けばすぐに対応できず、外出していることが判明してしまう。だが自宅待機者が頭を働かせ「毎日通知が来ることは無い」と想像すれば、通知の翌日に外出する違反者が出ることは目に見えている。そこでスマートフォンとBluetoothでペアリングするリストバンドに変更し、両者が離れてペアリングが解除されただけでも外出中と検知されるように改善されたわけだ。

 このように自宅待機中は常に監視されている状態だったが、感染者拡大を防止することを考えれば外出禁止措置が取られることは当然のことであり、このバンドを付けているからと言って精神的に苦痛に感じることは無かった。もちろん14日間という限定された期間だったから我慢できたということもあるだろう。

 どの国でも外出禁止などの規制を個人のモラルに頼ることは難しく、今後なんらかの対応を迫られることになるだろう。香港政府の取り組みは「滞在可能エリアのパターン」を感知するというプライバシーに配慮したものになっており、他国で同様のシステムを採用する際に大きな参考になるだろう。

<TEXT:山根康宏>

《RBB TODAY》

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