筆者の周囲でも、春から5か月以上にわたってテレワークが続いているという話や、テレワークのおかげで時間にゆとりができて快適に過ごせているという声をよく聞く。
その利点がフォーカスされることの多いテレワークだが、実際に恩恵を受けたりメリットを感じたりしている人はどの程度いるのだろうか?
oricon MEが全国のビジネスパーソンおよびアルバイト従事者を対象に実施した調査によると、テレワークの賛成・反対を問う質問では、「賛成」が82.2%を占めた。
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ただし、勤務先でのテレワーク実施状況は、「在宅勤務が指示・命令された」「在宅勤務を推奨されたが、強制ではない」の合計は34.6%にとどまっており、実施率は決して高いとはいえない。勤務先での実施状況にかかわらず、テレワーク自体には多くの人が理解を示していることがわかる。
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しかし、この先もテレワークをしたいかどうか…となると、必ずしもそれを希望する人ばかりではないようだ。今後のテレワーク実施意向を問う質問では、「オフィスワークがいい」「どちらかといえばオフィスワークがいい」の合計が60.6%と6割を超えるという意外な結果となった。
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理由として最多だったのは「自分の仕事が在宅勤務に適した業務内容ではないから」だったものの、2位は「出勤した方が規則正しい生活リズムを維持できるから」、3位は「出勤した方が適度な運動になって良いから」となり、出勤にメリットを感じているとする声が上位に挙がっている。
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たしかにテレワークは、1日の中でオンとオフの区別をつけづらくなったり、外出の機会が減って運動不足になったりといった課題も生じやすい。出勤を気持ちの切り替えや運動の機会ととらえる考え方も一理あるだろう。
また、上記に続く理由の4位には、「出勤した方が仕事の関係者とのコミュニケーション効率が高いから」も挙がっている。こちらも、テレワークの課題としてよく耳にするコミュニケーション不足を解消したいという思いが反映された形だ。
なお、この質問の回答項目には、「出勤したほうがネットワーク環境の不具合がない」「在宅勤務はセキュリティレベルが落ちる」といった業務環境に関するものもあったが、そういった環境面の理由ではなく、個人の価値観を強く反映した理由が上位となった点が興味深い。
一方で、今後もテレワークを希望すると回答した人は、「移動しないので疲れずにすむ」「外出しないので悪天候を気にせずにすむ」「満員電車・従来などの通勤ラッシュに遭わずにすむ」「職場の人間関係のわずらわしさがないから」などを理由の上位に挙げている。オフィスワークを希望する層が意義を見いだしている“移動”や“対面でのコミュニケーション”を回避できることをメリットととらえた回答だ。
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それぞれの理由からは、テレワークとオフィスワークのどちらに価値を見いだすかには「その人が何にストレスを感じているのか」が大きく反映されていることが垣間見える。
日頃から通勤時の移動や職場の人間関係にストレスを感じていた人ならば、当然テレワークを歓迎するだろう。一方で、コミュニケーションが少ない状況で働くことを苦痛に感じる人や、通勤の負担以上に生活の場である自宅に籠もり続けることがストレスになるという人なら、オフィスワークの方が快適に感じるかもしれない。
冒頭で紹介したとおり、現状でのテレワークの実施率は3割強に過ぎないが、もし今後普及が進み、テレワークかオフィスに出勤するかを社員それぞれが選びやすい環境となったときには、こういった個人の感覚や価値観が、働き方により反映されるようになるのではないだろうか。