【仏教とIT】第33回 ARは仏教の良きパートナー! | RBB TODAY

【仏教とIT】第33回 ARは仏教の良きパートナー!

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【仏教とIT】第33回 ARは仏教の良きパートナー!
【仏教とIT】第33回 ARは仏教の良きパートナー! 全 5 枚
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AR参拝の可能性



最新のテクノロジーに明るい人が、お寺にもっと関心を向けてくれたら……と涙をのむことがよくある。
4年前、ゲームアプリ「ポケモンGO」がリリースされて、社会現象が起こったときもそうだった。AR(拡張現実)技術を用いて「お坊さんGO」ができたらお寺参拝の形が変わるのに、と思った。ちょうどこんな風にである。

ARさえあれば住職と記念撮影も簡単に


お寺の前を通りがかった人は、なかの様子が気になっても、よほどの覚悟がないと門をくぐるのには抵抗がある。
逆に、私も言葉では「気軽にお参りください」といつも語っているけれど、法事などの読経中で対応できない時もやはり多い。
だから、山門にスマホをかざしたら、お坊さんが画面内に突如顕現してバーチャルな世界でもてなしてくれる――そんな仕組みがあれば、通りがかりの人にも住職にもやさしい、お寺参りの新しい世界が生まれるはずなのである。しかし、AR参拝を広いエリアで実現させるには、それぞれのお寺の住職の3Dデータが必須であるし、加えてアプリ開発にも相当なコストがかかる。技術を持つパートナーも見当たらず、私のふとした思いつきは実現しようにも到底かなわぬ夢だった。


ARでいますぐ大仏造立!



以来、ARの活用についてしばらく悶々としていたので、曹洞宗僧侶でアーティストの風間天心さん(41)から「AR大仏」の話を聞いたときには、心躍る感じがした。風間さんは、以前ここのコラムで紹介したとおり、今年5月、厳しいコロナ禍を前向きに生きるシンボルとしての「コロナ大仏」造立のプロジェクトを発願。全国を行脚して寄付を募るための「勧進キャラバン」へのクラファンを行なったところ、目標額の300万円を上回る約385万円が集まった。デジタル全盛の現代でもなお、大仏というアナログなシンボル造立への人々の期待はきわめて高いものがある、といえるだろう。その後、9月以降は全都道府県を回るべく、キャラバンに「勧進仏像」を載せて旅に出発。リアルでの行事が実施しにくい状況であるにもかかわらず、お寺を中心にすでに34ヵ所で勧進を果たした。
キャラバンで訪ねた先では、勧進仏像を安置して法要をつとめる。参詣者にはコロナ禍のために開催できなかったイベントのチラシなどを持参し、供養のために仏像に貼ってもらう。


初めての勧進は須磨寺(兵庫県神戸市)にて。法要の後のトークセッション

また、法要とあわせて、大仏のある風景を拝んでもらうための仕組みとして「AR大仏」を実施。案内パネルにQRコードを載せておき、スマホでそれを読み込めば、目の前に仏像があらわれる。仏像のサイズは自由に大きくできるから、大仏を拝んだことのない人も、その場で大仏に対峙している気分を味わえる。

AR大仏のQRコード




【仏教文化を再びクリエイティブに】



風間さんは「昔から、彼岸とかあの世とか、目に見えない世界をなんとかクリエイティブに表現したいという衝動が、仏教文化を創り上げてきています。これは、まさしくVR(仮想現実)やARの技術が模索している地平そのものです」と語る。そして、「VRやARはデバイス、表現の仕方、受け取り手の感性などが発展途上ですが、これが追いついてくればどうなるか。可能性をすごく感じます」と期待を込める。
その一方で、「お寺はお坊さんが守るものだという風潮が強すぎる」と、日本の現状を憂う。アーティストや技術者がお寺文化に手を出すことがはばかられるような空気感ゆえに、「結果的に人材不足と文化的停滞を招いている」と警鐘を鳴らす。
風間さんは、コロナ大仏の造立も、各地での法要はすべてライブ配信し、広く寄進をつのるためにクラファンを再び実施している。お寺文化をお寺のなかだけに留めず、現代を生きるあらゆる人々の力を借りて、新しい文化を創ろうというスタンスがはっきりとうかがえる。
コロナ大仏造立については、詳しくはこちらのクラファンのサイトに掲載されている。単なるものづくりではなく、コロナ禍を生き抜くシンボルを造り、そしてそれを後世に伝えるということを通じて、人々が垣根を越えていくプロジェクトだといえるだろう。大仏の造立が終わったときには、仏教がクリエイティブな力を取り戻す大いなる一歩が踏み出されているにちがいない。

「大仏はコロナ禍の記憶装置として後世に語り継がれるだろう」と風間さん




アーティストの熱量とともに



「お寺は信仰の場であって、アート活動の場ではない」という意見もしばしば聞くところである。アーティストとのコラボレーションから見える世界について、私自身の経験からも少し記しておきたい。
私ところにも頻繁にアーティストが訪ねてくる。よくあるのは、本堂で音楽ライブをやりたいという相談である。仮に受け入れるとして、どこまでの表現を許容するか。「スモークたいていいですか」「プロジェクションマッピングしていいですか」と、アーティストはどんどん提案してくる。

ご本尊前の透過スクリーンに光の演出


他のお寺の住職ならこれらの提案を断ることも多いだろうが、私は、風間さん同様に「お寺は日本が世界に誇れるアート空間だ」と認識している。だから、お堂を傷つけないかぎり、たいていのクリエイティブな活動を認める。そうすると、アーティストの皆さんは、いよいよテンションが上がってくる。本堂の荘厳さを最大限引き出すようなパフォーマンスを手掛けようと本気になり、ライブ当日は熱量のあふれるステージになる。
過去を守ることが仏教だという固定概念にしばられ、仏教が過去の時代に閉じ込められてくすぶっている現状は、文化的喪失というほかない。過去を守ることが正義なら、未来へと攻めることも正義である。ARにとどまらず、最新のテクノロジーをどんどん吸収し、みずみずしい華を開いていく。そのような営みが当たり前になることを願う。


池口 龍法氏
池口 龍法氏

【著者】池口 龍法
1980年兵庫県生まれ。兵庫教区伊丹組西明寺に生まれ育ち、京都大学、同大学院ではインドおよびチベットの仏教学を研究。大学院中退後、2005年4月より知恩院に奉職し、現在は編集主幹をつとめる。2009年8月に超宗派の若手僧侶を中心に「フリースタイルな僧侶たち」を発足させて代表に就任し、フリーマガジンの発行など仏教と出合う縁の創出に取り組む(~2015年3月)。2014年6月より京都教区大宮組龍岸寺住職。著書に『お寺に行こう! 坊主が選んだ「寺」の処方箋』(講談社)、寄稿には京都新聞への連載(全50回)、キリスト新聞への連載(2017年7月~)など。

■龍岸寺ホームページ http://ryuganji.jp
■Twitter https://twitter.com/senrenja
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《池口 龍法》

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