森絵都の小説『カラフル』を改題し、映画化した本作。管理人を自称する謎の人物から選ばれた魂「シロ」(長尾)は、同時期に死んだ高校生・小林真の体を借りてホームステイ生活を送るよう命じられる。管理人曰く、真が死んだ原因を100日以内に突き止めなければ、そして周囲の人に中身がシロだとバレてしまったら、本当の死が訪れるという。シロは、徐々に死の真相に近づいていくが……。
今回、真に淡い恋心を抱く幼なじみ・藤枝晶を演じる山田杏奈にインタビューを実施。彼女の演じる晶はどんな女の子なのか、Amazon製作映画への想い、長尾とのエピソードを語ってもらった。
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ーー中学時代に原作を読んだとのことですが、その時の印象を教えてください。
「ホームステイ」という題材にすごくワクワクしていました。周りにいてくれる人の大事さを感じて読んでいたのを覚えています。
ーーそんな本作の映画化オファーがきたときはどんなことを思われましたか?
特に私世代はみんな読んだことがあるんじゃないかなと思う作品なので、すごく嬉しかったです。Amazonさんが初めて日本映画を作るということで、いろんな人の目に届きますし、新しい形でこの話を作って世界に踏み出せるのがすごく楽しみでした。
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ーー年齢を重ね、改めてこの作品に触れたとき、感じ方や印象は変わりましたか?
中学生のときは、“今生きているこの世界がすべて”という感じで読んでいる部分もあって、シロのもがいている様に感情移入していたんですけど、いま改めてお話を噛み砕くと、長い人生の中でどう過ごしていくのか。言ってしまえば一部分でしかないんだけど、そのきっかけでどう変わるのかって感じて……。(作品の中で)「人生は長めのホームステイだよ」という台詞があるんですけど、その意味を中学生の時よりは理解できているんじゃないかなって思います。
ーー山田さんが演じる晶についてどんな印象を持ち、どのように演じようと思いましたか?
急に真が(シロに)変わったけど、それでもドシッと構えて、一周まわって母のような目線で彼を見ているなって思いました(笑)。でも、ふとしたときに真への想いが出てしまう可愛らしさもある子なので、最初はあえて私の地声に近い低めの声で“恋愛っぽく”見えないように接して、あとのほうで女の子らしさを出していきました。
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ーーそんな晶の魅力は?
一見、キーワードとしては“女の子らしさ”は出てこないけど、(幼なじみの真のことは)一番分かっていて、ずっと見守ってそばにいて……というバランス感が素敵。そこは、彼女の可愛いところだと思います。
ーー晶とご自身が似ていると思う部分はありますか?
人間関係では見守る立ち位置が多いとか、求められた時に自分の考えを曲げないで伝えるところとかは“近いのかな”って思います。
ーー長尾さんの印象について教えてください。
眼差しがまっすぐでキュルンとしていて、第一印象は、子犬のような方だなって思いました。長尾くんのいるだけで周りが明るくなる感じが現場を救ってくれていて、さすがだなという印象です。完成した作品を観ると、昔の真を演じている時の長尾くんの目が(シロのときと)全然違ったんです。憂いや暗さをまとった目をされていて、すごいなって思いました。
ーー演技力にも圧倒されたんですね。
シロと真を演じ分けるのは難しかったと思うんですけど、変にテクニックを使うというよりは、長尾くん自身の真っ直ぐな感情でやっているのが、シロらしさ・真らしさに繋がっていて、長尾くんにしかできないんじゃないかなって思いました。それを意図してやっているのかは分からないですけど、長尾くん自身の魅力が役を通じて出ているなと思います。
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ーー現場ではどんなお話をされたんですか?
「どういう音楽聴くの?」とか世間話をしていましたね。あと、私も初めての試みだったんですけど、作品に入る前にZoomでお芝居を合わせたんですよ。遠隔なので難しい部分がありつつも、ある程度想定できて現場に行けたので、すごく面白かったです。本番では、長尾くんの集中力を目の当たりにして驚きました。
ーー撮影中のエピソードで印象的だった出来事は?
長尾くんも、真の憧れの先輩・高坂美月役の八木(莉可子)ちゃんも関西の方なので、関西弁が飛び交っていましたね(笑)。2人とも、のほほんとした性格なんですよ。八木ちゃんはキリッとしたお顔立ちなので、勝手に“ハキハキしている子なのかな?”ってイメージしていたら、長尾くんと同じくすごくフワッとしている子で、その2人に癒されていました。和やかで楽しかったです。
ーーAmazonオリジナル作品ということについて何か想いはありますか?
映画館に足を運んで観に来る方ではなくて、家で“今日は何を観ようかな?”とか、移動中にスマホで観る方とか、必然的にそういったものが(さまざまなシーンで観られることが)多くなる中で、ちょうどいい題材の作品だなって思いました。シロが真として不安定な中、晶が揺らぐことなく安心して観られる子でいようと思ったのは、配信を意識していたからかもしれません。
ーー世界の方にも観てもらえるワクワク感はありましたか?
そうですね。完成した作品を観たとき、視覚的な楽しさもある作品だなって思ったんですよ。そういうのは言葉や文化とかではなくて、みんな同じ感覚で読みとれるものだと思うし、でも学校での人間関係はすごく日本的な部分もあって……このバランスがどう受け止められるのかすごく楽しみです。
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ーーシロのように山田さんがホームステイしてみたい人は?
思ったのですが、役者の仕事ってホームステイをしているみたいなことなんですよね。違う人生に(役として)入って、いろいろ気付かされる体験をしているなって。実際はホームステイするのはお腹いっぱいなのですが、気づかないうちに役から学ぶことが多いんだろうなって思います。
ーー最後にメッセージをお願いします。
見方によっては“世界は素晴らしい”と道徳的な形に見えると思うんですけど、でも一筋縄でいかない“人生”みたいな教えも描かれているのが原作の素晴らしいところで、みなさんに愛された要因だと思っています。改めて映画を観たとき、苦しさによって得た気づきのバランスがすごく素敵だなって思いました。ぜひ、みなさんに楽しんで観ていただきたいです。