韓ドラ『イルタ・スキャンダル』が最高に面白い!胃袋を掴まれた数学講師が人間らしさを取り戻す | RBB TODAY

韓ドラ『イルタ・スキャンダル』が最高に面白い!胃袋を掴まれた数学講師が人間らしさを取り戻す

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Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中
Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中 全 3 枚
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 最近、口コミでじわじわと人気を伸ばしているのが、韓国ドラマ『イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~』(Netflixで独占配信中)だ。前回の記事では4話目までを紹介したが、5話目以降も毎度期待を上回る素晴らしい展開で、私はすでに「続きが気になるけれど、毎週の楽しみを失いたくない」という、この先確実に訪れるであろう喪失感を心配している。

 カリスマ的人気を誇る塾の数学講師と、受験生の娘を持つ惣菜屋社長による恋愛を軸に、家族愛やお受験戦争などが絡むヒューマン&コメディ&サスペンスドラマ『イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~』。今回の記事では、5話から8話までを振り返っていきたいと思う。(以下、ネタバレあり)

人間嫌いの数学講師が人情味溢れまくりの家族に“自ら”飛び込む



 「不正・脱法・便法はまっぴら」というチヨル(チョン・ギョンホ)は、医大対策クラスから排除されたヘイ(ノ・ユンソ)のために家庭教師をしたいとヘンソン(チョン・ドヨン)に申し出る。家庭教師として稼ぐ場合には教育監に申告することになるため無報酬、その代わり、1日2回お弁当を売ってほしいと条件を提示。もちろん、ヘンソンは二つ返事でOKする。

 ナム一家はこの件を外部に漏らさぬよう、手を重ね合わせて気合十分。ヘイは幸運な出来事に感謝してヘンソンのベッドに潜り込み、晴れやかな気持ちで床に就く。チヨルも満腹感・満足感を覚え、ベッドで熟睡。こうして、自らナム家へ上がり込むことになったチヨルは、何かとお節介焼きなヘンソンに対し、「距離を詰めてくる人はまっぴら」と牽制するも、一家の温かさに触れ、ゆるゆると心がほだされていく。

 5話目以降、ヘンソンとチヨルはそれぞれ落ち込むことがあり、それによりお互いの距離が近づく。ジェウ(オ・ウィシク)によるトラブルの解決後、コンビニ前で1人泣きながら酒を煽っていたヘンソン。偶然目撃したチヨルは、一度通り過ぎようとするも放っておけず、酒に弱いのにやけ酒のお供に。

 また、担当した男子生徒ヨンミンの急死に責任を感じ、それを機に自身が「中学生実母殺害事件」に関わっていたことを知ったチヨル。気分転換のため週末キャンプへ行くと、ナム一家に遭遇。塩対応に徹するが、強引にコーヒーを渡され、しぶしぶヘンソンとの会話に応じるように。「コーヒーを飲んで正解でしょ? 空腹じゃ何もできませんから」と言う彼女に、かつての恩人を思い出してハッとする。翌日、ナム家の面々を自宅に送り届けた際、家族のほっこりする挙動に思わず笑ってしまい、そんな自分の行動に驚くのだった。

韓医院&ドジョウ汁という渋過ぎるデートで沼落ち



Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中


 7話。ヘイの模試テスト1位を記念し、ナム家はパーティーを開催。突如、フットバレー対決も決行する。チヨルは、プライドは高いが運動音痴。チームを鼓舞するも肝心の場面でボールを空振りするなど散々だ。しかも、急にヘンソンにときめいてしまったことへの動揺もあり、手首を痛めてしまう。“久々の運動によるアドレナリン過剰分泌で自律神経系が暴走している”と言い聞かせて眠るも、収まらぬトキメキ。一方のヘンソンもヨンジェにチヨルの話ばかり振り、誰かを好きになるとその人のことばかり話したくなる“言及症”になっているとからかわれる。

 精神科医の助言もあり、へヨン(ペ・ユンギョン)という女性を紹介してもらうが、やはりヘンソンの魅力にあらがえないチヨル。さらに、手首の怪我を気遣うヘンソンから一緒に韓医院へ行こうと誘われ、余計意識するように。韓医院の鍼治療後、2人が立ち寄ったのは、ヘンソンの知人が経営するというドジョウ汁屋。そこは元々ヘンソンの母が営んでいたお店で、内装がそのまま。チヨルはヘンソンが恩人の娘であることに気づき、なぜ彼女の料理だけ食べられるのか、なぜ彼女とその家族に惹かれるのか、腑に落ちるのであった。

 ドジョウ汁屋での気づきを経て、ナム家への恩返しを決意したチヨル。“一兆の男”の財力をフルに発揮し、ひっそりと家主となってナム家の家賃を半額に設定&エアコンを設置。家庭教師として家を訪問すると「エアコン設置を祝ってパーティーしよう」と言い出し(不自然に)、高級ホテルのレストランディナーをご馳走する。へヨンとの約束を途中ですっぽかし、火傷をしたヘンソンのもとに駆けつける……と、誰がどう見ても愛を感じずにいられない振る舞いの連発に、流石にヘンソンもチヨルを問い詰めることにするのだが、果たして次回、チヨルは何と答えるのか。

 チヨルの心の変化は、胃袋と密接にリンクしている。最初はヘンソンの作った料理だけしか食べられなかったのにも関わらず、豚足やドジョウ汁といった少し癖のある料理も、チキンなどのジャンクフードも、ヘンソンやナム家の皆と一緒なら、自然と食べられるようになっていく。韓医院の院長曰く“ゴミのような体”のチヨルが、ナム家と関わることで精神的な安らぎを感じて人間らしさを取り戻していく姿は、何かと忙しい現代人への「寝食を大切に」というメッセージにも感じられる。どうかこのまま、チヨルがナム家の一員となり健康体になってほしい、と願わずにいられない。

過激な教育ママの行動でチヨルとナム家はピンチに? “鉄球男”の正体は?



 反発しあう男女がお互いの好意に気づくようになる、焦ったいが微笑ましい、ラブコメの醍醐味が詰まりまくっていた5話から8話。高校生組の恋愛模様も徐々に盛り上がり、こそばゆい空気感も漂う傍ら、「人気塾講師が家庭教師を秘密裏にやっていることがいつバレるのか」問題と、「鉄球男事件」問題の話も進む。

 “教育ママの鏡”であるスヒ(キム・ソニョン)は、なかなかの強者、曲者だ。娘のスア(カン・ナオン)も大概なのだが、スヒが親ならば歪んだ性格になるのも仕方がないだろう。スヒは、ストレスで体調不良に陥る娘に「エナジードリンクに頼らず自力で集中力を高めなくては」「深呼吸して、冷静になって解いてみて」と、気遣うそぶりを見せるも、決して受験勉強をやめさせる気はない。また、塾院長に圧力をかけて休講をとりやめさせたり、チヨルの車を見かけてストーキングしたり、興信所に依頼してまでチヨルとナム家の関係を暴こうとしたりと、行き過ぎた行動を繰り返す。8話のラストでは他のママたちを引き連れ、チヨルとヘンソンのもとに登場。来週は胃がヒリヒリするような展開が繰り広げられることだろう。

 一方、ヨンミンの事件を担当していた若手刑事は、多発する鉄球事件の関与を確信し、黒いパーカーを着た男(ソンジェの兄ヒジェ)を追い始める。同じ頃、ソンジェの母ソジン(チャン・ヨンナム)はヒジェ(キム・テジョン)の机の引き出しに鉄球があることを知り、こっそりとヒジェのスマホに位置追跡アプリをインストール。ある日ヒジェの移動を確認し、その後を追うことに。同時期、チヨルへのアンチ活動がバレた塾講師チンを、鉄球男が襲撃する。果たして、ヒジェは鉄球男なのだろうかー?

ヒューマンドラマたらしめるやり取りの数々



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 本作が、厳しすぎる受験戦争とそれに伴って生じる歪みを描いていながら、観た後に楽しく幸せな余韻をもたらすのは、ヘンソンを中心とした掛け合いの妙にあるだろう。

 特に、ヘンソンとヨンジェは本物の親友を見ているかと錯覚するほどだ。ヘンソンが拗ねたヨンジェにキス攻撃で迫ったり、ヨンジェがコミカルな動作付きでヘンソンとチヨルの関係を賑やかしたりと、2人の応酬はとてもリアル。ただふざけ倒すだけでなく、ヨンジェが、“家族ではないから”とヘンソンに秘密を隠されたことに本気で怒り、「(ヘンソンが)苦労ばかりしないで金持ちと結婚して楽に暮らすことが私の切なる願い」と語るなど、お互いを大切に想ってきたことが分かる挙動も、2人の関係性の描写に深みをもたらしている。

 ヘンソンとチヨルの、正反対の性格を活かしたやり取りも印象的。「レゴしたい」「レゴはブロックです。ネゴですよね」といったボケツッコミなどももちろん魅力的だが、それぞれの人生観を浮き彫りにした台詞にも唸った。「数学は明快です。答えがある。でも人生はそうじゃない。公式も法則もなく間違うたびに“またか”と萎縮します」というチヨルに、「でも間違えるたび答えに近づきます。ハンドボールでも投げる時にいろんな角度を試してボールが弱ければ別の筋肉を使います。そうやって成功率を上げるんです。人生も同じですよ。手探りで答えを探すんです。あれこれやってみながら。難しく考えるから不眠症になるんです」と返したヘンソン。間違いを犯さぬよう孤立してきたチヨルに、“間違えることは悪くない”という考えをもたらしたのである。チヨルがヘンソンを拒絶しなくなるのは、それからだ。

 サスペンスの場面だけやたらともっさりすることもなく、全体的にテンポも良い『イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~』。このまま、残り半分の物語も大いに楽しませてほしいと期待している。

Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中
Netflix
https://www.netflix.com

■筆者プロフィール
山根由佳
執筆・編集・校正・写真家のマネージャーなど何足もの草鞋を履くフリーライター。洋画・海外ドラマ・韓国ドラマの熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。

《山根由佳》

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