韓ドラ『イルタ・スキャンダル』ハッピーエンドで大団円!しかし悶々とした感情は残る | RBB TODAY

韓ドラ『イルタ・スキャンダル』ハッピーエンドで大団円!しかし悶々とした感情は残る

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Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中
Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中 全 3 枚
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 韓国ドラマ『イルタ・スキャンダル~恋は特訓コースで~』(Netflixで独占配信中)が3月5日に終わりを迎えた。

 以前、本作がNetflixランキングを順調に上昇していると記事にまとめたが、直近のランキングを見る限り、最終回にかけて盛り上がりをキープしていたようだ。日本ランキング「テレビ部門」においては、2月13日~19日付は2位、2月20日~26日付と2月27日~3月5日付は1位を獲得。

 世界ランキング「非英語テレビドラマ部門」においては、2月13日~19日付と2月20日~26日付は4位、2月27日~3月5日付は3位に。2月6日~12日付の2位がピークだったが、2月27日~3月5日付の記録によると、同期間ではアジア圏だけでなく、アフリカ(エジプト、ナイジェリア)やアメリカ(ボリビア、ペルー)を含む、世界25ヶ国でトップ10入りを果たしていた。

 さて、題名にもなっている“イルタ・スキャンダル”は10話で収束が確定し、以降の6話はサスペンス要素の回収が主な内容に。コミカルなトーンはやや鳴りを潜め、シリアスな展開が続いていった。(以下、ネタバレあり)

やむなしなのか? ちぐはぐトーンの後半戦



Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中


 残り4話のところで、チヨル(チャン・ギョンホ)への想いをこじらせたチ室長(シン・ジェハ)が鉄球事件の真犯人であることが発覚。ヘンソン(チョン・ドヨン)がチ室長の不可解な言動に怒った直後、チ室長がヘンソンを狙うところを目撃したヘイ(ノ・ユンソ)が交通事故に遭い、昏睡状態に。中間試験不正のタイミングと重なっていたことから、ソンジェ(イ・チェミン)は自責の念に駆られてしまう。しかし、チヨルにすべてがバレて追い詰められたチ室長の投身自殺で一連の事件は終息し、ソンジェが学校に告白したことで不正問題も解決。次なる問題として、急に登場したヘイの母ヘンジャ(ペ・ヘソン)がナム一家をかき乱すも、最終的には空気を読んで立ち去っていった。そして、ヘンソンとチヨルは晴れて婚約、ヨンジュ(イ・ボンリョン)とジェウ(オ・ウィシク)の間には子どもができ、無事大学進学を果たしたヘイはソンジェと交際をし始め、ハッピーエンドに。

 すべて丸く収まってはいたが、筆者は何とも釈然としない気持ちを抱えてしまった。惣菜屋社長と人気塾講師が出会い、弊害もありつつもロマンス成就へと発展していく10話に比べ、後半は作品トーンのバランスが不安定だったことが原因だと思う。

 1話目から匂わせていた鉄球事件が、チヨルとのブロマンスで愛されキャラになりつつあったチ室長の自殺で終了する、という最悪の結末で終わりを迎えたのにも関わらず、直後にチヨルの落ち込むシーンが少しだけ描かれたのみ。すぐにヘンジャ問題へと移ってしまい、拍子抜けしてしまった。そんなヘンジャが長年娘を置いて出て行った理由も、日本で仕事をしていて大金が必要な理由も分からずじまい。彼女の存在によってヘンソン、ヘイ、ジェウの絆の深さは際立っていたが、それならばヘンジャが立ち去った後の3人の反応など、もっと入れても良かったのではないだろうか。

 ソンジェの家族の物語は美しくまとまっていたと思う。母ソジン(チョン・ヨンナム)が違反行為の代償を受けて正気になり、家族との関係が良好に。高学歴で出世街道を突き進み、すべて頂点でなければと常にプレッシャーを抱え、周囲にも強要してきたソジンの、憑き物が落ちたような穏やかな表情が素晴らしかった。しかし、スヒ(キム・ソニョン)・スア(カン・ナオン)親子の展開に関しては何とも解せない。極度の受験ストレスに陥っていたスアが、いつの間にか母に離婚を促せるほど心が安定していたことに驚いたのである。スア役のカン・ナオンが、精神崩壊していく様を熱演していただけに、スアがどのように自ら精神問題を解決し、ゴヌ(イ・ミンジェ)に「優しい」と言わしめるほどまで悟りを開いたのか、までをしっかりと描ききってほしかった。また、不倫夫とのバトル動画が拡散され、今までのしっぺ返しのように社会的制裁を受けるも、変わらず親切なヘンソンの懐の深さ涙していたスヒだが、それによって“受験”や“受験生”への根本的なスタンスは変わらないと思われる。彼女がプライド学院の相談員になることで、第二のスヒ・スア親子が誕生しかねないと不安が残った。

 そんなあらゆる問題の合間に、ヘンソンとチヨルのラブラブシーン、ジェウとヨンジュの恋愛、ヘイを巡る三角関係なども随時繰り広げられるので、それが息抜きにはなりつつも、全体的にとっちらかっている感は否めず。終盤はそれらの結末を描いてコミカルなテンションへと戻っていったが、どうしても各問題を妙にあっさりと解決してしまったことが頭にちらつき、幸せ気分に浸りきれなかった。

学歴社会による弊害を痛烈に批判



Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中


 超学歴社会の韓国では「良い大学に入れなかったら人生が終わり」と言われており、子どもはもちろん、親たちも必死だ。ことわざにある“獅子は我が子を千尋の谷に落とす”を地でいく人たちも多いことだろう。『イルタ・スキャンダル』を振り返ってみると、軸にあったのは、そんな受験生の親たちへの警報だったと思わざるを得ない。

 受験生ママたちの間でカリスマ的インフルエンサーへと成り上がったスヒは、娘スアが精神的に崩壊しているのにも関わらず、決して勉強をやめさせることはしない。高学歴で弁護士のソジンは、受験のプレッシャーで長男ヒジェ(キム・テジョン)を引きこもりにしたことを反省するでもなく、その分、次男ソンジェが確実に一流大学に入れるように裏取引まで行なう。そして鉄球事件が起こった根本の原因は、チヨルの元教え子スヒョンの母親だ。娘に不正をさせて自殺に追いやっただけでなく、その後は次男ソンヒョン(=チ室長)に矛先を向け、結果、連続殺人鬼を生み出してしまった。

 いずれの親も、本来は子どもが将来自立して幸せな人生を生きていけるようサポートするのが根底にあったはずのところ、いつしか、自身の世間体を良くする・守ることへ目的がずれてしまっている。そして、幸せになってほしいと願う対象である子どもに対して精神的・肉体的な虐待をしてしまうという、歪んだ構造ができあがってしまった。本作は、受験生が誰のために・何のために受験をするのか、と問いかけていると言えるだろう。

 『イルタ・スキャンダル~恋は特訓コースで~』は私に毎週の楽しみを与えてくれた。前半はヒューマンドラマ色が強く、家族の存在や寝食の大切さなどにより、感動をもたらせてくれた。しかし、後半の展開に閉口したのも事実である。まだ未視聴の方は、ラブコメやヒューマンドラマに包み込まれた社会派ドラマであることを念頭に置きつつ、鑑賞することを勧めたい。

Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中
https://www.netflix.com

■筆者プロフィール
山根由佳
執筆・編集・校正・写真家のマネージャーなど何足もの草鞋を履くフリーライター。洋画・海外ドラマ・韓国ドラマの熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。

《山根由佳》

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