『浪漫ドクター キム・サブ』は、2016年に放送されたシーズン1が好評を博し、2020年のシーズン2、2023年のシーズン3へと続くことになった人気作品。ややトリッキーなのが、シーズン1とシーズン2で主要キャラクター2名が異なることだ。それゆえ、インターネット上では「シーズン順に見た方が良いのか?」「シーズン1と2の違いは?」といった質問が乱立している。
シーズン2に出演するアン・ヒョソプ(『社内お見合い』『アビス』など)とイ・ソンギョン(『愛だと言って』『流れ星』など)による恋愛模様を早く見たいという気持ちは分かる。
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しかし、『浪漫ドクター キム・サブ』はラブストーリー以上にヒューマンドラマとして秀逸な作品であり、1、2を踏まえて3へと物語が展開されていくので、かなりの長丁場にはなるが、ぜひ1(全21話1,269分)、2(全39話1,135分)、3(全16話1,176分)の順で完走を目指していただきたいところだ。
さて、今回はそんな『浪漫ドクター キム・サブ』の基本の“き”を紹介したいと思う。
■筆者プロフィール
山根由佳
執筆・編集・校正・写真家のマネージャーなど何足もの草鞋を履くフリーライター。洋画・海外ドラマ・韓国ドラマの熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。
山根由佳
執筆・編集・校正・写真家のマネージャーなど何足もの草鞋を履くフリーライター。洋画・海外ドラマ・韓国ドラマの熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。
シーズン1、2の大まかなあらすじ
『浪漫ドクター キム・サブ』の舞台は、ソウルにあるコサン大学病院の分院、京畿道のトルダム病院。主人公キム・サブ(ハン・ソッキュ)は、かつてソウル最高の医療センターで、誰でも治すことのできる“神の手”として活躍し、韓国で唯一、一般外科、心臓胸部外科、救急医学免許を取得した天才外科医。
とある理由からプ・ヨンジュという本名を隠し、片田舎にあるトルダム病院を牽引している。彼と共に使命に燃えるのは、器の大きなヨ・ウニョン院長(キム・ホンバ)、責任感の強い看護師長オ・ミョンシム(チン・ギョン)、温和な麻酔科医兼食堂オーナーのナム・ドイル(ビョン・ウミン)、小心者で日和見主義のチャン・ギテ室長(イム・ウォニ)、優秀だが恋愛に不器用な看護師パク・ウンタクなど、キム・サブと長年信頼関係を構築してきたスタッフたちだ。
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そんな“チーム・トルダム”に、シーズン1ではユン・ソジョン(ソ・ヒョンジン)とカン・ドンジュ(ユ・ヨンソク)が加わる。ソジョンは恋人で事故を亡くして失意の中、山中で怪我をして身動きが取れなかったところをキム・サブに救われ、そのままトルダム病院で勤めることに。一方野心的な医師ドンジュは、VIPの手術失敗によってトルダム病院へ左遷されてしまう。
シーズン2では、ソジョンは海外研修中、ドンジュは兵役中という設定で不在となり、その代わりにソ・ウジン(アン・ヒョソプ)とチャ・ウンジェ(イ・ソンギョン)が初登場。病院の不正を内部告発して干されていたウジンはキム・サブにスカウトされてトルダム病院へ。同期のウンジェも手術室恐怖症を抱えていたことから、トルダム病院への移動を命じられてしまう。
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いずれのシーズンも、自ら望まずにトルダム病院にやってきた男女が、キム・サブのもとで働きはじめることで、それぞれが抱える葛藤やトラウマを乗り越え、さらに好意を寄せる相手との恋愛も成就させる、というのが一つの見どころ。そして、彼ら以外のスタッフたち、患者たちの人生にも都度焦点が当たっていき、各キャラクターたちが仕事を通して成長を遂げ、チーム一丸で困難に立ち向かうようになる様子を描いている。
ドラマをさらに盛り上げるのが、キム・サブの宿敵、トルダム病院の閉鎖を目論むコサン大学院長ト・ユンワン(チェ・ジノ)の存在だ。キム・サブを追い込むため、トルダム病院のスタッフに裏取引を持ちかけたり、刺客を送り込んできたりする。しかし、キム・サブの揺るぎない信念と実力、スタッフとの信頼関係により、それらの画策はことごとく失敗。さらには、刺客たちもキム・サブに感化され、“チーム・トルダム”へ参画していくのだから、愉快痛快である。
キム・サブの“浪漫”とは?
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作品の肝でもあるのが、自身を「浪漫ドクター」と名乗るキム・サブによる格言の数々。「浪漫とは誰もがあると知りながらないと信じ、ないと信じながら守ってほしいと願う美しい価値。”生きる”とは毎日新たな道を歩むこと。自分が望まなくても毎日新たな現実と向き合うこと」とは、シリーズを通して繰り返し語られる言葉だ。
未熟さを隠しきれないスタッフたち、私欲に飲み込まれる敵対者たちなど、時には一般論なども振りかざしてキム・サブに対抗する。しかし、損得勘定せずに目の前の患者を救うことこそが医者の最大の役目であることを主張し、度々陥る絶体絶命の状況を天才的な腕前で切り抜けていく。また、キム・サブはただ忙しなく働いているだけではなく、外傷センター設立の夢も抱いている。お金を稼ぎまくり出世街道を邁進する医師像とは180度異なり、「浪漫」「夢」について説く彼は、トルダム病院にとっての重力となって周りの人たちの考え方に影響を与え、我々にも気づきや共感をもたらす。
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演じる国民的実力派俳優ハン・ソッキュがキム・サブと重なり合うところがあるのも、台詞一つひとつに説得力を感じられる要因なのかもしれない。共演した若手俳優たちは、ソッキュの人柄や演技への真摯な姿勢に影響を受けたと公言。
彼自身、キム・サブの人生観や価値観に影響を受けたとも述べており、4月に行なわれた『浪漫ドクター キム・サブ3』記者会見では、「先日、運転をしながらふと、“私がいつか演技ができなくなった時、たくさん思い出すのは『浪漫ドクターキム・サブ』だろう”と思ったんです。シーズン1から6年。これは私の人生の10分1です。その間、とてもいい時間を過ごしていますし、本作品に携われたことを幸運だと思っています」と感慨深い様子で語っており、キム・サブこそが“人生キャラクター”であると示唆していた。
シーズン3はどんな物語に?
そして待望のシーズン3。ユンワンの企みから逃れたキム・サブ及びトルダム病院に立ちはだかる次の試練は、トルダム病院に隣接して建てた、キム・サブの夢=外傷センターだ。3年以内に政府支援のセンターにするべく、経営陣は様々な対策に追われ、スタッフたちは新たな運営体制に戸惑う。さらに、国際問題や軍事問題に関与する患者の対応、建築物の倒壊事故、環境災害、人災など、今まで以上に過酷な事態に直面していく。
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また、新シーズンでは、ウジンが教育することになる後輩や、外傷センター長候補となるキム・サブのライバル医師などの新たなキャラクターを通じて、医療従事者たちが抱える働き方問題や訴訟問題など、「人命救助のために献身することが医師の人生や尊厳に影響を与えることになる」という、深刻な社会問題にもフォーカスしている。
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最後に。筆者は『浪漫ドクター キム・サブ』の存在を知っていたが、長年マイリストに加えて塩漬けしていた後追い組だ(恥ずかしながら)。シーズン3配信決定にあたり、重い腰を上げて鑑賞することにしたのだが、常にOST(Original Sound Track)が脳内で自動再生されてしまうほど、見事にハマってしまった。その魅力は前述した通りなのだが、「長いから」と敬遠しているのなら、もったいない。シーズン3まで含め、時間をかける価値のある、素晴らしい作品だからだ。ただし、医療シーンがかなり本格的で、ゴア描写が好物でもあまりにも生々しくて目を背けてしまうほどだったので、そういった映像が苦手な方は少しキツイかも、ということだけは事前にお伝えしておく。
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