(以下、ネタバレあり)
■筆者プロフィール
山根由佳
編集者・校正士・写真家のマネージャーなど複数の草鞋を履くフリーライターであり、海外ドラマ&映画の熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。X(Twitter):@ymndayo
山根由佳
編集者・校正士・写真家のマネージャーなど複数の草鞋を履くフリーライターであり、海外ドラマ&映画の熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。X(Twitter):@ymndayo
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悪人に自白を促しても無駄骨に終わる
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セウル未来資源の疑惑を告発しようとしていた記者チェ・ミリョ(キム・ソジン)の危険を暗じて放送を食い止めた元広域捜査隊捜査チーム長チョ・ホン(ユ・ジテ)は、その帰りにセウルのキム会長(ユン・ギョンホ)による刺客に襲われる。ナイフの使い手パン氏(シン・ジョングン)と大男セドル(パク・グァンジェ)との二対一の戦いで落命寸前だったが、ヴィジランテことキム・ジヨン(ナム・ジュヒョク)の登場により一命を取り留める。「ヴィジランテが警官を救った」とニュースになるが、ジヨンにとってホンを巻き込むことは計画の一部だった。
ジヨンは次なる一手として、セウルの資金洗浄担当の神父を殺害して入手した仮想通貨入り携帯電話を使い、保育園に2億ウォンを寄付。さらにセウルの事務所に放火し、キムと殺し屋2人、そしてキムと結託しているネズミ=警視総監オム・ジェヒョプ(イ・へヨン)を挑発。ホンのポジションを引き継いだナム・ヨンイル(ウォン・ヒョンジュン)を利用し、ジェヒョプ逮捕への道筋も作る。だが、パンが保育園の園長を殺害した上にミリョを誘拐し、ジェヒョプがヨンイルを殺害。“真の警察”であるヨンイルが消えたことで、正攻法で悪を成敗できなくなり、ジヨンは協力者チョ・ガンオク(イ・ジュニョク)と共に直接対決に挑むことを決意する。
納得感はあるがクリフハンガーな作品だった
あと2話でまとめきれるのかという不安がちらついていたが、物語の展開スピードが加速し、“今回の戦い”は終息。胸を撫で下ろした。しかし、前回の記事の予想通り、表立っていた敵は成敗できたが、黒幕である大統領官邸ソク室長(チョン・ベス)までは辿り着かなかった。ジヨンは、ソクがジェヒョプを英雄に仕立てて昇級させたニュースを見て怒りに震え、警察大学の卒業式では大統領へ敬礼せずじっと見つめている。最初からヴィジランテの正体に勘づいていた様子のイ・ジュンオプ教授(クォン・ヘヒョ)の不安げな表情は、この先ジヨンが再び暗躍する未来を示しているようだった。
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あわせて目立ったのが、ジヨンの同級生ファン・ジュン(チョ・ハンジュン)。ヴィジランテの最後の戦いで助っ人として現れたミン・ソヌク(イ・スンウ)と共に、ジヨンと常につるんでいた人物だ。首席ジヨン、次席ソヌクとは異なり、遊びに燃えるおちゃらけキャラだったが、卒業式では凛々しい顔つきで生徒代表を務めている。ソヌクの身に起きたことが影響してか、使命感を得て必死に勉強をしたのだろうか。卒業後は警部補としてキャリアをスタートさせることも明かされており、今後は彼がヴィジランテ逮捕に息巻くポジションに就くことが予想される。
また、ガンオクの表の顔がDKグループの“副会長”であることに引っ掛かりを感じていたが、やはりそれには理由があった。ヴィジランテと協力体制を築いたのは、快楽殺人のためでもなく、単なる推し活(ヴィジランテの)でもなく、法の網を抜けるほど真っ黒である自社会長を倒す目的があったからだと最後に判明している。
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つまり、全8話完結のドラマ『ヴィジランテ』は、ジヨンとガンオクの次なるターゲットが分かったところで終わりを迎えたということだ。主演ナム・ジュヒョクの除隊が2025年の秋頃と言われているため、少し先になってしまうのは間違いないが、シーズン2の制作を心から願ってやまない。
明瞭な展開だが俳優たちの演技が魅力的だった
振り返ると、本作の良さの一つに予想のしやすさが挙げられる。タイトな構成だったため、各キャラクターの心象描写に関してはやや物足りないところはあったが、物語上で辻褄の合わない箇所はなく、無駄なく進んでいったと思う。ジヨンがヴィジランテとなってメディアを賑わせる。ガンオクが目を付け、ミリョを通じて餌を撒き、新たなターゲットが決定。その人物の背後、さらなる背後がいて……と最後までの過程が明瞭だ。元々ヴィジランテとは同意見でジヨンの裏の顔を察していたソヌクはやはり現場にやってきたし、ジヨンと何度も議論し殴り合いにまで発展していたホンも最終的には味方に。全員集合、三つ巴、いや四つ巴の戦いになったところで、今回における一番の悪玉ジェヒョプがゆっくり拍手をしながら現れる(ベタだけどそこが良い)。怪しげなガンオクに思惑があったこと、ミリョがヴィジランテに異様に入れ込む背景についても最後に回収される。
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予想を裏切られる展開も楽しいが、その場合は驚愕と落胆の差が激しい。それに比べて本作。ここまで予想が当たるのは気持ちいいものだ。なので、シーズン2があるとしたら、なんとなくどんな展開になるのか見えてしまうのだが、それでも欲してしまうのは、俳優たちの魅力にある。
実は今回『ヴィジランテ』を追っていくにあたり、ジュヒョクの過去作の網羅に挑んでみた。未配信作もあり全ては難しかったのだが、その上での私見を述べると、彼はタレ目がちの優しげな顔立ちだからか、俺様系なキャラクターを演じたとしても、どこか可愛らしさが漂う。また、恋愛モノ以外の作品も含め先輩俳優との組み合わせが多く、“弟分”な印象も強い。そんな彼にとって、本作は新たな一面を見せる勝負作だったと思う。ジヨンとして行動する際は目上の人たちに敬意を払うが、ヴィジランテの時には、悪人(キム、パン、セドル、ジェヒョプなど)を容赦なく見下し、先輩の警官(ホン)に逆らい、協力者(ガンオク、ミリョ)へ命令を下す。メインキャストの大半が先輩俳優という中、後輩臭を消滅させ、主役ヴィジランテの振る舞いで作品を引っ張っていくのは大きなプレッシャーだったであろう。初挑戦だったとう本格アクションも様になっており、地味ではあるが、第7話後半でボディーブローを喰らった時の声が素晴らしかった。もしシーズン2が作られるのであれば、悪への怒りが限界突破し、より横柄な態度でダークヒーローを全うする姿を見てみたい。
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ガンオク演じるイ・ジュニョクも最高だった。推しからの連絡に一喜一憂し、お茶目なコメントも残すガンオクのキャラクターが、シリアスなトーンの束の間の息抜きとなっていた。派手なスーツにスポーツカー、ギラついたタロットカードもお似合い。続きがあるとしたら、ジュヒョクとの共演シーンにて、バットマンとロビンのような軽快なやり取りを繰り広げてほしいところだ。
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また、昨年同じ頃に配信されたドラマ『ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え』で頭脳派な教授役を演じていたとは思えないほど大柄になっていた、ホン役ユ・ジテの迫力もすごかった。教授役の時と顔の大きさは変わっていないので、最初は衣装に綿など詰めているのではないかと思ったのだが、そんな筆者のような穿った見方をする視聴者へ向けてか、『ヴィジランテ』ではホンの上裸筋トレシーンが頻出。さらに、20kg増やして役作りに挑んだという情報も見て舌を巻いた。その威圧的なホン像により、幾度か繰り広げられたジヨンとの対峙シーンは凄みがあり、作中のハイライトにもなっていたと思う。法のもとにいる警察官としての誇りや信念を持ちつつ、時にグレーゾーンへ踏み込み、物語を大いに盛り上げていた。その筋肉パンパンの姿で、再びジヨンとやり合ってほしい。
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