主人公の森下昴(坂東)は、交際して3年の恋人・柏原美紀(西野七瀬)との結婚を間近に控えていた。そんなある日、彼女を交通事故で亡くしてしまう。
茫然自失の中、母・洋子(南果歩)に促され、久々に故郷の岐阜へと帰省した昴。そこで池内武彦(岡田義徳)という人物と出会い、亡き人の幽霊を召喚する方法がある、と教えてもらう。その方法を試すと昴の前に亡くなったはずの美紀が幻影として現れて……。
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ーー本作のオファーを受けたとき、最初にどのような印象を受けましたか?
坂東:(出演する作品は)事務所の方と話し合って決めることが多いんですけど、今回は最初から出演を決めてくださったんです。事務所の方とは信頼関係があるので、“絶対にいい本なんだろうな”と思いながら脚本を読ませていただきましたが、確かに今まで読んだことない物語で、昴を演じるのも楽しみになりました。ただ、このテーマで初単独主演だったので、ちょっとプレッシャーや責任を感じましたね。
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坂東:ものすごく難しい役なので、“美紀は誰が演じるんだろうな”と思っていました。その中で“西野さんとかだったら合うかもな……”とイメージしていて。
西野:えー!
坂東:本当にそうなったから「本当ですか。嘘みたい!」とビックリしました。美紀にピッタリな方だし、とても嬉しかったです。
ーー西野さんはいかがですか?
西野:映画では、今まで演じたことのない「幻影」として出演するシーンがほとんどなのですが、私にとっても初めての挑戦でワクワクしましたし、最後まで私の声をお客さんに聞かせない演出がとても面白いなと思い、ぜひお力添えできたらと思いましたね。
坂東:作道監督から手紙をもらわなかった?
西野:「美紀は西野さんしかいないです」と長文のお手紙をいただいて。
坂東:僕もいただいたけど、そんなのもらっちゃうとね~。
西野:すごく嬉しかったです。以前から「儚い(はかない)」と言われることもあって、その儚さと幻影役の相性が良かったのかな、と思っています。
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坂東:僕は役にアプローチするとき、客観的にいろんなことを組み立てて一つの作品に向き合っていくんですけど、それをやりすぎたがゆえに、いろいろ不安要素が出てきたんです。クランクインする前、そのことを監督に相談したら「坂東くんが、撮影をする中で感じたことを表現してくれればいい。僕はそこを切り取っていきたいし、そこを見たい」とおっしゃってくれて、すごくラクになりました。
そういう状態で現場に入れてすごく良かった反面、今度は主観になったがゆえに、昴と同じ気持ちになっちゃって……。感情をコントロールできず、昴が混乱するのと一緒に自分も混乱する時期がありました。そこでも監督が「『映画を作ること』、『主演を務めること』とはそういうことだし、周りのプロフェッショナルが支えていくから、迷ったらいいし、混乱したらいい」と言ってくださって、躊躇なく混乱と向き合うことができました。今思えば、それもひっくるめて「昴を生きる」ということだったのかな、と思います。
ーー精神的にも辛い部分があったと思いますが、坂東さんは撮影中「西野さんに助けられたな」と思った瞬間はありましたか?
坂東:めちゃめちゃ助けられました。昴の中でずっと「美紀に会いたい」という気持ちがあった中、(撮影のため)西野さんが(ロケ地の)岐阜・飛騨に来てくれたときは「美紀、来たー!」って思いました。
西野:(笑)。私は撮影の後半に合流したのですが、きっとその間にしんどいシーンもあったと思いますし、(飛騨で坂東を見たとき)「戦ってきたんだな」という印象も受けましたね。
坂東:西野さんが来てくださったおかげで、「1人じゃない」という気持ちでやれたんです。現場にいる西野さんからは安心感が伝わってきて、その場にいるだけで助けられました。
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西野:最初は難しそうかなと思ったんですけど、いざ始まってみたら、すぐに「大丈夫そうだ」と思えました。監督も私に任せてくださいましたし、自由にやらせていただきましたね。
ーー思うままに演じていった、ということなんですね。
西野:昴が話しかけてくれるから、美紀としては反応したくなるんですけど、そこは幻影なので心はないつもりで、思い切って無(む)でやれました。かと言って、表情まで無にしちゃうのは違うと思ったので、(シーンによっては)柔らかい表情を意識したシーンもあります。幻影の美紀は昴が呼んで出てくる存在だから、表情に一貫性がなくてもいいのかな、と思いつつ演じていましたね。
ーー実際に共演してみて感じたお互いの魅力や意外なところがあれば教えてください。
坂東:もっと人見知りで、ツンツンしているのかなと想像していたんですけど、めちゃくちゃ人当たりがいいし、一緒にいてラクですね。
西野:それが一番嬉しい!
坂東:あと、本当に真面目。
西野:お互い真面目かもしれない。
坂東:(劇中で)幻影の美紀と昴が通じ合うシーンがあるんですけど、そのときに、西野さんの本質的な「人としての優しさ」みたいなものを(美紀を通して)感じたのを覚えています。あと、この作品の試写を観たあとに感想を言いに来てくれたときの姿を拝見して、本当に映画や芝居を愛している人なんだろうな、という印象を受けました。
西野:私が飛騨で見られなかった(昴が)一人で戦っている姿を試写で見たとき、とてもリアルで、ドキュメントを観ている感覚を覚えました。昴との相性も良かったんだろうなって思います。
坂東:嬉しい!
西野:あと、(幻影が出てくるのを)受ける側も難しいだろうなと思っていました。(幻影を見たときの昴の)反応もリアルでしたね。
坂東:おおげさに「わあー!」とか驚かなくて良かったです(笑)。
ーー昴にとって美紀は忘れられない存在です。お二人の人生において忘れられない人物はいますか?
坂東:役者をやる前に、2年間、仲居さんのアルバイトをしていたんですけど、そこで一緒に働いていたおばちゃんですね。僕、シュタイナー教育(子供の個性を尊重し、能力を伸ばす教育)を受けていたので、高校卒業後、初めて外の世界に足を踏みいれたのが仲居さんのバイトだったんです。カルチャーショックもあって、対人関係も苦労したんですけど、そのおばちゃんが優しく接してくれて……。ごはんも食べさせてもらいましたし、なかなか人間関係がうまく築けないとき、敬語や礼儀のことも教えてくれました。「すごく助けられたな」と今でも感謝しています。
西野:兄が通っていた幼稚園の先生はすごく覚えています。幼いころ、兄が通っていた幼稚園によく遊びに行っていたんですけど、みんながお勉強をしているあいだ、職員室で先生に可愛がっていただいたり、その先生のお家に泊まりに行ったりした記憶があって……。幼稚園以来お会いしていないので、いつかお会いしたいですね。
◆坂東龍汰ヘアメイク 後藤泰(OLTA)
◆坂東龍汰スタイリスト 李靖華
◆西野七瀬ヘアメイク 猪股真衣子(TRON)
◆西野七瀬スタイリスト 鬼束香奈子
映画『君の忘れ方』
公開日:1月17日(金)全国公開
出演者:坂東龍汰、西野七瀬、岡田義徳、南果歩ほか
公式サイト:https://kiminowasurekata.com/