歌人・俵万智の初の言葉論考『生きる言葉』(新潮社)が異例のロングセラーとなっている。同作は今年4月の刊行からまもなく半年を迎えるが、重版続々で9刷・11.5万部を突破し、2025年9月期・新書部門のベストセラー(トーハン調べ)で2位にランクインした。

恋愛、子育て、SNS、AIなど、現代の様々なシーンにおける言葉のあり方を、歌人ならではの視点と自身の体験から考察。「言葉の力が生きる力」とも言える時代に、日本語とどう向き合うべきかを問いかける一冊だ。
ヒットの背景には、従来の新書の読者層である中高年男性だけでなく、女性や若者にも広く支持されている点がある。SNSでのコミュニケーションが主流となり、「。」(句点)を文末につけることに威圧感を覚える「マルハラ」に悩むなど、新しい言葉の課題に直面する若い世代からは「SNS疲れの特効薬」として共感を呼んでいる。さらに、30~50代の子育て世代には、俵万智自身の実体験に基づいたエピソードが響いており、「思わず涙しそうになった」「心にグサグサ刺さった」といった口コミが広がっている。
著者である俵は、この反響について「出版直後から普段とは違う手ごたえを感じました。みなさん、熱い。写真を撮ったら帰るはずのカメラマンが話に加わってきたことも。言葉と無縁で生きている人はいないし、今、言葉について悩んだり迷ったりしている人がたくさんいるのだと実感しました」と語る。
また、SNSで「#生きる言葉」と検索しているという俵は、「『笑った』『泣いた』という世代もさまざまな投稿の中に、高校生の息子から勧められて読んだというお母さんもいました。子育て本という読み方もできるようで、たしかに第一章で赤ちゃんだった息子は『おわりに』では、私と母のいさかいを、みごとに言語化して救ってくれるまでになりました」と、世代を超えた広がりへの喜びを明かした。
「『初めて新書を最後まで読んだ!』『わけわからんくらい読みやすい』といった声が嬉しい」とも語り、「言葉について書かれた本の言葉が、読みにくかったらシャレにならない。実は尋常じゃないくらい推敲した。某有名塾で、さっべくテストに使われたとも聞き、ガッツポーズである」と、言葉へのこだわりを覗かせた。
なお、NHK『ラジオ深夜便』やフジテレビ『ノンストップ!』、新聞各紙など多くのメディアで紹介され、今後も続々紹介予定だという。