なぜ韓国で日本アニメ映画の旋風が巻き起こっているのか 『鬼滅』『チェンソーマン』と『スラムダンク』の違い | RBB TODAY

なぜ韓国で日本アニメ映画の旋風が巻き起こっているのか 『鬼滅』『チェンソーマン』と『スラムダンク』の違い

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なぜ韓国で日本アニメ映画の旋風が巻き起こっているのか 『鬼滅』『チェンソーマン』と『スラムダンク』の違い
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ジャパニメーション旋風が、いま韓国映画界を席巻している。

「Japan(日本)」と「Animation(アニメーション)」を合わせたジャパニメーション(Japanimation)という表現が生まれるほど、韓国では現在、日本アニメ映画が支配的な存在感を放っている。

韓国・映画振興委員会の入場券統合ネットワークによると、10月21日12時時点の日別ボックスオフィスでは、1位『チェンソーマン レゼ篇』、5位『劇場版総集編「呪術廻戦 懐玉・玉折」』、9位『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』となっており、日本のアニメ映画がトップ10に3本も入る異例の状況だ。

とりわけ『チェンソーマン』は観客動員220万人を突破し、『鬼滅の刃』は547万人を動員。『呪術廻戦』も公開初日(10月16日)は首位スタートだった。

一時的なブームではない

この日本アニメ映画の韓国映画界における躍進は、すでに一時的なブームではないとの見方も強い。

『チェンソーマン レゼ篇』
(画像=ソニー・ピクチャーズ)『チェンソーマン レゼ篇』韓国版ポスター

というのも、2023年にも『THE FIRST SLAM DUNK』(490万人)と『すずめの戸締まり』(558万人)の2本が韓国で大ヒットしている。しかしこれらは、例外的に“韓国でも浸透していたIP(知的財産)”だった。

『スラムダンク』は1990年代から韓国で読まれてきた人気漫画が原作で、『すずめの戸締まり』を手がけた新海誠監督も2017年の『君の名は。』ですでに名を知られていた。つまり、「売れる土台があった作品」だったわけだ。

ところが今回の『鬼滅の刃』『チェンソーマン』『呪術廻戦』の3作品は事情が異なる。それだけに、なぜ日本アニメ映画がこれほど人気なのかという韓国メディアや専門家による分析も出てきた。

その理由は、大きく3つに分けられそうだ。

まず、OTT(動画配信サービス)時代に突入したことが挙げられる。

かつて韓国における日本アニメは、特定のチャンネルやコミュニティを中心に消費される嗜好の領域だった。一部ファンに限られた、大衆にとっては遠いコンテンツだったのだ。

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』
(画像=Animax Broadcasting Korea)『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』韓国版ポスター

しかしNetflixやディズニープラスといったOTTの普及によって、日本アニメはいつでも触れることのできる“身近なコンテンツ”となった。韓国メディア『IZE』は、「いまやアニメーションはいつでもアクセスできる身近なコンテンツであり、親しみがある分、感情移入もしやすく自然に共有されていく」と分析した。

さらに一歩踏み込んで、『スポーツワールド』は「日本のアニメ業界が事実上無料のプラットフォームを通じて、低コストでテレビアニメを海外配信し、その後の“本当の収益”を劇場版や各種グッズによって得るという戦略をとっている」とし、「これは韓国のK-POP戦略とまったく同じパターンである」と指摘している。

次に、濃いファンが存在するということだ。韓国では近年、日本アニメ映画を劇場で繰り返し観る“ファンダム型興行”も目立っている。日本アニメが身近になったという一方で、根強い原作ファンのたしかな支持があるわけだ。

『国民日報』は、「ほかの映画とは異なり、観客の割合は10~20代の男性が高い。ファンの間では“複数回鑑賞”(N次鑑賞)の動きも広がっている」と伝えた。続けて、映画の広報関係者の言葉として「作画やアクションは劇場で観る価値があるという認識が広がり、若い観客が多く訪れている」とし、「週ごとに用意されたポスターやフォトカードなどの入場特典を求めて、複数回鑑賞する傾向もある」と報じている。

そして最後に、作品の完成度だ。

『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』
(画像=MEGABOX中央)『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』韓国版ポスター

圧倒的な作画と感覚的な演出が際立つという評価が多く、日本の大手アニメ制作会社による高いクオリティの作画、劇場向けに設計された迫力あるアクション、IMAX・4DX上映との相性の良さ――こうした“劇場で観る理由”が明確な点も支持を支えている。これについては、日本でも詳しく報じられている通りだ。

いま韓国で起きている“ジャパニメーション旋風”は、単なる流行でも、日韓文化交流の副産物でもない。OTTによる視聴行動の変化、ファンダム経済の成熟、そして作品の質と、複数の要因が重なった“構造的な現象”といえるだろう。

この勢いは今後も続くのか、それとも反発が起きるのか。韓国映画産業にとって、日本アニメの存在は無視できない現実になりつつある。

(文=スポーツソウル日本版編集部)

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《スポーツソウル日本版》

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