1月30日(金)に公開された映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』は、2021年公開の『閃光のハサウェイ』の続編。原作は富野由悠季の全3巻の小説で、村瀬修功監督が引き続きメガホンを取る。
前作はハードでリアリスティックな戦闘演出と、繊細な心理描写が高く評価され、観客動員数108万人を超えるヒットとなった。本作もその路線を引き継ぎ、濃密な人間ドラマに焦点を当てている。
『逆襲のシャア』から12年後の世界
舞台は、映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で描かれた第二次ネオ・ジオン戦争(シャアの反乱)から12年後の地球。腐敗しきった地球連邦政府に対し抵抗を始めたのが、反地球連邦政府運動組織「マフティー」。そのリーダーこそ、アムロ・レイとともに一年戦争を戦ったブライト・ノアの息子、ハサウェイ・ノアだった。


アムロとシャア、二人の遺志を背負い、自らの正義を貫こうとするハサウェイ。しかし連邦軍大佐ケネス・スレッグ、そして謎の美少女ギギ・アンダルシアとの出会いが、運命を大きく揺さぶっていく。前作のクライマックスでは、新型モビルスーツ「クスィーガンダム」を操るハサウェイと、連邦軍の新型機「ペーネロペー」を操縦する若きエース、レーン・エイムが激突。死闘の末、ハサウェイが勝利を収めるところまでが描かれた。
勝利の女神か、破滅を招く魔女か
続編となる本作は、マフティーを追うケネス、ギギへの未練を引きずりつつ仲間の元へと戻ったハサウェイ、そんな二人を翻弄するギギの三角関係をベースに進行する。

ケネスは厳格な軍人だが、直感的にギギを勝利をもたらす「幸運の女神」と信じている。その力が目に見えて戦果として現れ、周囲の軍人たちも彼女を預言者のよう扱うようになる。ケネスが自身の部隊に名付けた「キルケー」とは、ギリシア神話に登場する、美貌で男たちを誘惑し動物に変身させる魔女の名だ。ケネスが手元に置いたのは、部隊に勝利をもたらす女神なのか、それとも男たちを破滅へ導く魔女なのか。

そんな謎に包まれたギギの本当の姿は、大富豪の老人の愛人であり、超高級マンションのペントハウスで何不自由ない暮らしを約束された身分。しかし心が満たされず、ケネスや軍の動き、ハサウェイの動向が頭から離れない。自分の運命は自ら切り開くという覚悟を決め、行動に踏み出していく。
理想を掲げトラウマに苦しむ青年の危うさ
一方、ハサウェイは仲間と合流し、当初から計画していた作戦を進めていく。しかし、作戦に集中しようとすればするほど、ギギの存在が雑念となって心を揺さぶる。恋人のケリアにも再会するが、二人の間には決して埋められない溝が生まれていた。

戦争の狂気を前に「こんなこと想像もできていなかった」と嘆き、仲間からも「青すぎないか」と呆れられるなど、リーダーとしての頼りなさも感じさせるハサウェイ。英雄の息子という立場を利用され、組織の顔として祭り上げられている側面も垣間見えてくる。ハサウェイ自身も、恐らくその危うさに薄々気づきつつ、世俗の欲望や理想と現実の狭間に苦しみ、過去のトラウマを抱えながらも自分の信じる正義を貫こうとする。
そして、物語はオーストラリアの広大な地を舞台に、一気にクライマックスへと加速する。勝利の女神はどちらにつくのか、ギギの本当の気持ちはどちらに傾いているのか、その緊張感を胸に観客はスクリーンに没入することになる。
圧倒的な映像美と戦争描写
オーストラリアの透き通る青い海、赤く広がる大地、鬱蒼としたジャングル、吸い込まれそうな紺碧の空といった雄大な自然を背景に、モビルスーツが自由に飛び交う映像は圧巻だ。その描写はアニメの枠を超え、実写と見紛うほどのリアリティ。前作同様、劇場で観ないともったいなと感じるほどのクオリティに仕上がっている。

同時に、戦争に巻き込まれる一般市民の恐怖や悲惨さも、否応なく観る者に突きつけられる。前作からの5年の間に、現実でも様々な紛争が激化した今、本作のリアル過ぎる戦闘描写は、フィクションが現実に追いつかれてしまったかのような重みを持って迫ってくる。
原作ファンも、新規層も楽しめる大人向けガンダム
原作小説が存在するため、既に次回作の結末まで知っている観客も多いだろうが、どのように映像化されるかという楽しみは変わらないはず。シリーズ最大の衝撃は3作目に待ち受けており、賛否を巻き起こすことは間違いない。

最低限、ハサウェイの運命を決定づけた『逆襲のシャア』を観ていれば、『閃ハサ』の物語に追いつける設計になっている。そのため、ガンダムに詳しくない層や、久しくガンダム作品を観ていない人でも本作は十分に楽しめる。濃密な人間ドラマと迫力の映像は、大人が映画館で体験する価値のある作品だ。次回作に備え、ぜひ今のうちにその世界観をスクリーンで体感しておきたい。
※『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』1月30 日(金)全国公開
配給: バンダイナムコフィルムワークス/松竹
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