ミラノのスケートリンクでは現在、刃が氷を切り裂く音よりも、深いため息の方が先に聞こえてくる。
今大会におけるショートトラック韓国代表のライバルは、他国ではなく、“舞台”そのものだった。
男子代表の最年少、イム・ジョンオンは2月11日(以下、日本時間)、公式練習後に次のように語った。
「練習の時よりも、本番の氷の質が良くないと感じた。氷が柔らかく、選手のミスが増えている。転倒するケースも多いようだ」
氷が柔らかいと刃が深く入らない。滑走も鈍くなり、スピードを上げるほどバランスを保つのが難しくなる。これは、0.001秒差で運命が分かれるショートトラックでは、致命的になり得る要素だ。
女子代表のキム・ギルリも同様の声を上げている。「混合リレーでは転倒が多かった。特にコーナーは注意しなければならないと感じた。実際に接触が起きて転倒してしまい、とても悔しかった」と心境を明かした。
彼女が言及した事故は、2000m混合リレー準決勝でのこと。アメリカ代表のコリン・ストッダードがコーナーを抜ける際に滑り、キム・ギルリと衝突。オランダのサンドラ・フェルゼブールも同種目で転倒し、決勝進出を逃した。
これは韓国代表選手だけの意見ではない。男子ショートトラックの優勝候補とされるカナダ代表のウィリアム・ダンジヌ、オランダ代表のイェンス・ファン・ト・バウトも氷質について苦言を呈している。
問題は、ミラノ・アイススケートアリーナの“氷の厚さ”だ。韓国代表の関係者は「フィギュアは着氷の衝撃を和らげるため、氷は約3cmと比較的薄く柔らかく作る。一方、ショートトラックは約5cmと厚く、硬い氷が望ましい。薄い氷は滑走性能が落ち、バランス維持が難しくなる」と説明する。

相反する氷質が好まれるにもかかわらず、同会場ではショートトラックとフィギュアが、午前と午後で分けて実施されている。管理も容易ではない。
だが、大会組織委員会は問題を否定。大会組織委員会のルカ・カザッサ報道官は、12日の会見で「氷質問題を提起した選手は少数であり、試合中もアイスメイカーが温度を測定している。氷質管理は良いという評価を受けている」と述べた。
しかし、現場の体感は異なる。重要なのは組織委員会の立場ではなく、選手たちの声ではないだろうか。
ショートトラックは“流れの競技”だとも言われる。氷質が悪ければ戦略にも影響が出る。選手はコーナー進入時に普段以上に慎重になり、攻撃的な走りをためらう可能性もある。
今大会では金メダル3個以上を目標に掲げている韓国にとって、女子500m、1500m、男子1000m、1500m、リレーと、スケート競技はメダル有力種目の一つだ。0.001秒を争う競技において、鋭いスケート以上に繊細なのが氷の状態だ。韓国ショートトラックは今、ライバルだけでなく氷とも戦っている。
■キム・ヨナ、引退12年でも“更新されない象徴”…ミラノ五輪前に再び召喚 金メダルから疑惑の判定まで


