“ソウルの宝”と呼ばれていた男は、いまや韓国野球の“国宝”と呼ぶべき存在になった。
ムン・ボギョンの神がかった打点本能がなければ、韓国野球にとって17年ぶりとなるWBC決勝ラウンド進出という奇跡もなかった。
崖っぷちに立たされていた韓国代表は3月9日、オーストラリアを7-2で下し、大逆転でプールCを2位通過した。
その奇跡の突破劇を支えた中心にいたのが、ムン・ボギョンの猛打だった。
ムン・ボギョンは今回のWBCグループリーグ4試合を通して、韓国代表の確かな勝負強さを示す存在だった。1試合も欠かさず打点を挙げ、計11打点を記録。大会全体の打点部門で単独トップに立った。
メジャーリーグの名だたるスターが居並ぶWBCで、KBOリーグの若き打者が打点王争いをリードしているのだから、世界を驚かせるには十分だった。

まさに危機のたびに現れた“乱世の英雄”だ。始まりは3月5日のチェコ戦だった。1回裏の打席に入ると、東京ドームの夜空を切り裂く先制の決勝満塁本塁打を放ち、主導権を握る先陣を切った。
1人で5打点をたたき出す活躍で、韓国は大会初勝利への道を切り開いた。
プレッシャーが最高潮に達していた3月7日の日韓戦でも、ムン・ボギョンのバットは冷えなかった。1回からメジャーリーガーの菊池雄星の球をとらえ、2打点二塁打を放った。3月8日の台湾戦でも貴重なタイムリーで1点を加えた。
準々決勝進出への最後の関門となった3月9日のオーストラリア戦では、見事に締めくくった。5打数3安打(1本塁打)4打点を記録し、チーム総得点の半分を1人で担った。
とりわけ勝利に決定打を与える本塁打が飛び出した瞬間、海外メディアの中継陣は彼の姓にちなんで「ムーンショット(Moon Shot)」と連呼し、敬意を表した。

彼は「正直に言えば、プレッシャーがなかったと言えば嘘になる。世界的な投手や打者が集まるこの舞台の重圧は本当に大きかった」と打ち明けながらも、「代表チームが一つにまとまっていたおかげで、その重圧をうまく乗り越えられた。打撃の調子が良く、チームの力になれて良かった」と振り返った。
2009年WBCの栄光をテレビで見ながら野球選手の夢を育んだだけに、「WBCキッズ」世代にとって今回の準々決勝進出の意味はさらに特別だ。「17年ぶりの決勝ラウンド進出という韓国野球の名誉を取り戻す歴史的な現場に、自分が準々決勝メンバーとして含まれていること自体、本当にありがたくて光栄だ」と笑顔を見せた。
1次ラウンド突破の秘訣については、「ワンチーム」を挙げた。「毎イニング、毎打者、1球1球が勝負どころだった。投手たちがマウンドで全力を尽くしてくれたことが、打者にとっても大きな刺激になった」と語り、仲間たちに功績を譲る謙虚さものぞかせた。
いま視線は決戦の地、米マイアミへ向かう。決勝トーナメントは、負ければ即敗退の一発勝負だ。彼は「今のペースをしっかり維持して、準々決勝ではもっと恐ろしい打撃を見せたい」と意気込んだ。
17年ぶりに踏むアメリカ本土の舞台については、「マイアミにはもっと強い選手たちが待っているだろうが、今のように一つにまとまれば、もっと高いところまで上がれると確信している。最後まで全力でぶつかっていきたい」と堂々と抱負を語った。
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