韓国野球の歴史に刻まれるであろう、劇的な突破を演出したリュ・ジヒョン監督の目は赤く充血していた。
17年ぶりの準々決勝進出という“奇跡”を成し遂げた韓国代表は、勢いそのままに決勝トーナメントへと突き進む。
3月9日、韓国代表は2026WBC1次ラウンド・プールCの最終戦でオーストラリアと対戦。「5点差以上での勝利」かつ「2失点以内」という、厳しい条件を満たさなければならない崖っぷちの状況に立たされていた。
しかし、その極めて難しい条件を「7-2」というスコアで見事にクリアし、決勝ラウンドへの切符を掴み取った。逆境に立たされた選手たちを奇跡へと導いた力は何だったのか。リュ監督が最大の要因として挙げたのは「準備」だった。
リュ監督は試合後のインタビューで「準備を徹底的に重ねてきた。昨年2月の監督就任以降、この1年間、ただこの舞台だけを見据えて走り抜けてきた」と切り出した。

実際、今大会は茨の道の連続だった。初戦のチェコ戦こそ快勝したものの、日本戦と台湾戦を立て続けに落とし、事実上の敗退危機に追い込まれていた。チェコ戦では、本塁打を放った選手が、準々決勝の地であるマイアミへ向かう飛行機を模した“飛行機セレブレーション”を披露するなど陽気なムードに包まれていたが、その後の連敗によって状況は一変。チームには危機的状況に置かれてしまった。
リュ監督は「試合が思うように運ばない時の緊張感と挫折感は想像を絶するものだった」としながらも、「何より選手たちが感じていたプレッシャーは筆舌に尽くしがたいものだっただろう。それを跳ね除けて得点を奪い取った選手たちの集中力は本当に素晴らしい」と教え子たちを称えた。
オーストラリア戦で勝利が確定した瞬間、グラウンドで選手たちと抱き合い、熱い涙を流した姿も大きな話題となった。「野球人生で最も記憶に残る瞬間か」という記者の問いに、監督は頷きながら再び目頭を熱くした。
「我慢していたのだが、試合が終わった後に涙が止まらなくなった。もう枯れたと思っていたのに、次から次へと溢れてくる」と笑ってみせた。それほどまでに劇的な幕切れであり、指揮官にかかっていた重圧は計り知れないものだった。
2連敗を喫し、批判の矛先が監督に向けられていた時も、選手たちは黙々と指揮官を信じた。「多くの思いが交錯し苦しい時間だったが、最後は選手たちが私を救ってくれた。コーチ陣と監督を信じ、最後まで諦めなかった選手たちに心から感謝したい。今日の勝利は特定の個人のものではなく、韓国のユニフォームを着た全員で掴み取ったものだ」とリュ監督は力を込めた。

奇跡を起こした韓国代表は、決戦の地アメリカ・マイアミへと向かう。一発勝負の決勝トーナメントも予断を許さない展開が続くだろうが、監督の哲学は確固たるものだ。
「再びゼロから準備する。結局、鍵を握るのは準備だ。どんな不確定要素が生じてもそれを受け入れ、乗り越えられるよう、より徹底して準備し、さらなる高みを目指したい」と誓った。
2009年の第2回大会で世界を驚かせた韓国野球の気迫が、再び東京ドームで蘇った。リュ監督の涙と選手たちの汗が結実した“準備された奇跡”が、次はアメリカで大きなうねりを起こそうとしている。


