「赤ちゃんまだ?」不妊治療が定着した韓国、スターたちが直面する“お節介の嵐”と執着の闇
韓国では今、新生児の誕生における自然妊娠の割合が急速に低下している。
「健康保険審査評価院」が今年1月に発表した最新の統計によると、出生児の約15%、実に7人に1人が体外受精や人工授精といった「補助生殖医療」を経て生まれていることがわかった。
超少子化が進む韓国において、不妊治療はもはや特別な選択ではなく、日常の一部となった。晩婚化の加速による肉体的な限界から決断するケースも多いが、自らの不妊治療を公表する芸能人たちの存在も、この風潮を後押ししている。
ドラマ『キム秘書はいったい、なぜ?』などで愛される女優ファン・ボラは、不妊治療の末に第一子を授かった過程をYouTubeなどで包み隠さず公開し、多くの女性から共感を得た。また、芸能界きってのおしどり夫婦として知られる『太陽を抱く月』のハン・ガインも、流産の痛みや体外受精による出産の苦労をメディアで明かしている。彼女たちが堂々と「医療の助けを借りた」と公言する姿は、不妊に悩む多くの夫婦にとっての希望となっているのだ。

産む手段が増えることで人口が増えることは喜ばしいが、その反面、社会的なプレッシャーも増大する。一般化すればするほど、「なぜそこまでしないのか」という無言の圧力が強まり、「あいつもやっているんだから」という同調圧力も無視できないものとなる。そんな中、あえて「不妊治療に固執しない」という選択をし、注目を集めた芸能人たちの言葉は、この息苦しい社会に一石を投じている。
「良い病院を紹介する」
まずは、元スピードスケート代表イ・サンファと歌手カンナム夫妻だ。結婚5年目を迎え、不妊治療へのプレッシャーに直面していたが、夫のカンナムは「妻の体を一番に考えたい。無理に不妊治療をしてストレスを受けるより、2人の時間を大切にしたい」と断言。子供を持つこと以上にパートナーの健康と幸福を優先する姿勢は、多くの支持を集めた。
さらに、俳優チン・テヒョンとパク・シウン夫妻のケースは、社会がいかに不妊に悩むカップルへ無遠慮な干渉を行っているかを象徴している。彼らは度重なる流産という悲劇を公表しているが、その都度、SNSのダイレクトメッセージ(DM)を通じて「良い病院を紹介するよ」などといった、お節介とも取れる連絡が執拗に届くという。これに対し、夫のチン・テヒョンは「僕たちは今、十分に幸せで、最善を尽くしている」と毅然とした態度を示した。不妊治療が“当然の義務”になりつつある社会への静かな抵抗とも受け取れる。

そして、最も大きな反響を呼んだのが、歌手イ・ヒョリの決断だった。彼女はかつて「子供が欲しい」と切実な思いを語り、禁酒に取り組むなど不妊治療に励んでいた。しかし、最終的に彼女が辿り着いたのは「無理に授かろうとはしない」という境地だった。
彼女は自身の考えについて、「体外受精まではしたくない。そこまでして医療の力を借りたいとは思わない」と率直に述べた上で、「もし(赤ちゃんが)自然にできたら、本当にありがたく産んで育てたい。私の周りには58歳で初めて子どもを産んだ人もいる」と、あくまで自然の摂理に身を委ねる姿勢を強調した。
だが、この潔い“手放す勇気”にも、韓国の世論は冷酷だった。ネット上では「努力が足りない」「有名人ならもっと高度な治療ができるはずだ」といった、個人の選択を否定する無遠慮な批判が相次いだのだ。彼女ほどのカリスマでさえ、産むことが正解とされる社会の同調圧力からは逃れられない現実を浮き彫りにした。

韓国において不妊治療は、子を授かれない夫婦の救いであると同時に、時に倫理を逸脱させ、「産まねばならない」という呪いをかける諸刃の剣でもある。
スターたちの公表や騒動、そしてあえて執着しないという決断は尊重されるべきだ。今こそ、“多様性”という言葉の出番ではないだろうか。
(文=スポーツソウル日本版編集部)


