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フェイクドキュメンタリーの日本、短編オムニバスの韓国――日韓ホラーの対照的な進化

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フェイクドキュメンタリーの日本、短編オムニバスの韓国――日韓ホラーの対照的な進化
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日本のホラー界において、近年「フェイクドキュメンタリー」が圧倒的な存在感を放っている。

2000年前後の『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズや『放送禁止』シリーズを端緒とし、近年では『フェイクドキュメンタリー「Q」』や『TXQ FICTION』といった、演出とリアリティが高度に融合した作品へと進化を遂げた。

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一方、お隣の韓国ホラー映画界では、ある“形式”が独自の進化を遂げている。

それは、複数の短編エピソードを一本の映画にまとめた「オムニバス(アンソロジー)」形式だ。

代表的な作品としては、『ホラー・ストーリーズ』シリーズや、アイドル俳優を多数起用した『ソウル怪談』などが挙げられる。こうした作品は単なる企画物という枠を超え、韓国ホラーの一つの定番フォーマットとして定着している。

なぜ韓国ホラーは、一本の長い物語ではなく、断片的な恐怖を積み重ねる形式を選ぶのか。その背景には、韓国独自のメディア生態系、変化するコンテンツ消費スタイル、そして映画産業の制作構造が深く関わっている。

ウェブトゥーンという“源泉”

韓国ホラーに短編集が多い理由の一つは、その原作供給源にある。現在の韓国エンターテインメント産業において、映画やドラマの重要な原作となっているのがデジタルコミック「ウェブトゥーン」だ。木村拓哉の娘・Kōki,が主演を務めた『女神降臨』も、元はウェブトゥーン作品である。

ウェブトゥーン、特にホラーやスリラーのジャンルでは、スマートフォンでスクロールして読むという特性から、短時間で読者に強烈なインパクトを与える構造が好まれる。そのため、一話完結型、あるいは数話で完結する短いエピソード形式の作品が多い。

例えば、LINEマンガでも配信されている人気作『奇々怪怪』や、都市伝説を題材とする『都市怪談』などは、日常の中に潜む違和感や恐怖を突きつける作品として人気を集めてきた。

こうした原作を実写化する際、90分以上の長編映画に引き延ばすと、物語の切れ味や不条理なスピード感が損なわれる恐れがある。そのため制作者たちは、原作のリズムを保つために複数の短編を組み合わせるという形式を採用してきたのである。言い換えれば、映画そのものがウェブトゥーン連載の“単行本”のような役割を果たしているとも言えるだろう。

「スナックカルチャー」と短編映画の相性

この流れをさらに後押ししているのが、韓国社会に広く浸透した「スナックカルチャー(Snack Culture)」である。これは、移動中や休憩時間などの短い時間に、“スナック菓子を食べるように”気軽にコンテンツを消費するライフスタイルを指す言葉だ。

その最たる例がYouTubeのショート動画と言える。SNSコンテンツが広く普及した現在、長時間の視聴よりも、短時間で強い刺激を得られるコンテンツが好まれる傾向が強まっている。こうした消費習慣と相性が良いのが、短編形式のホラー映画である。

例えば2021年制作の『ソウル怪談』は、複数の短い都市怪談、日本で言う都市伝説をまとめた構成で、SNS世代を意識したテンポの速い恐怖演出を展開している。このように韓国ホラーの短編集は、映画館という従来のメディアでありながら、デジタル時代の“短時間消費型コンテンツ”に近い体験を提供する試みでもある。

その象徴的な例が、2024年に制作された『4:44:Time of Fear』という作品だ。1エピソード4分44秒、計8話からなるオムニバスホラーで、全体の上映時間は44分しかない。本作については制作側が“スナックムービー”と銘打っており、劇場での鑑賞料金も4000ウォン(約400円)と比較的安価だった。それでも手は抜いておらず、SHINeeのオンユなど有名アイドル俳優が多数出演している。

(画像=ロッテエンターテインメント)『4分44秒』ポスター
(画像=ロッテエンターテインメント)『4:44:Time of Fear』。原題は『4分44秒』

短編ホラーは、短い時間で強い印象を残すという現代的なコンテンツ消費と非常に相性が良い。SNSや動画プラットフォームが主流となった現在、恐怖もまた断片化された形で語られるようになっている。

しかし興味深いのは、日本のホラーがむしろ逆の方向へ進化していることだ。近年、日本ではモキュメンタリーやフェイクドキュメンタリー形式の作品が人気を集めている。そこでは短時間で恐怖を消費するのではなく、「一度見ただけでは本質が分からない」構造そのものが作品の魅力となっている。

視聴者は作品の細部を読み解き、考察を重ねながら物語の裏側を探っていく。直近では、『TXQ FICTION / 神木隆之介』(テレビ東京)や映画『放送禁止 僕の3人の妻』といった作品が、その象徴的な例と言える。これらは公開後、ネットやSNSで考察が次々と投稿されるなど、その過程自体も楽しまれている。

映画『放送禁止 ぼくの3人の妻』
(撮影=スポーツソウル日本版編集部)シネマロサで上映中の『放送禁止 ぼくの3人の妻』

韓国がスナックのように手軽に消費できる“断片化された恐怖”へと向かっているのに対し、日本のホラーは、視聴者が何度も咀嚼しながら意味を読み解く“解読型の恐怖”へと進化している。

同じ東アジアのホラー文化でありながら、その発展の方向はむしろ対照的だ。韓国がテンポの速い都市怪談を積み重ねる形式を選んだのに対し、日本は謎と違和感を積み上げるフェイクドキュメンタリーへと向かっている。

恐怖の語り方は、その社会のメディア環境やコンテンツ消費のあり方を映し出す鏡でもある。韓国と日本のホラーは今、まさに真逆の進化を遂げているのだ。

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《スポーツソウル日本版》

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