BTSの復帰作『ARIRANG』が大きな注目を集めるなかで、気になるのが「そもそもアリランとは何か」という点だろう。
アリランは、名実ともに韓国を代表する民謡であり、民族の歌とも呼ばれる存在だ。2012年にはユネスコの人類無形文化遺産にも登録されている。
一般に「アリラン」といえば、一つの決まった歌を思い浮かべるだろう。だがユネスコによれば、アリランという名で伝承される民謡は約60種、3600曲以上にのぼるとされる。
韓国各地には「京畿アリラン」「密陽アリラン」「珍島アリラン」「旌善アリラン」など多くのバリエーションがあり、中国、日本、カザフスタンなど海外で作られたものまであるという。
最もよく知られた歌詞は、「アリラン アリラン アラリヨ/アリラン峠を越えていく/私を捨てて行くあなたは/十里も行かぬうちに足を痛めるだろう」といったものだ。

ただ、「アリラン」の語源について定説はない。「アリ」は“美しい”、“恋しい”に通じるという説もあれば、「胸が痛む」「心がひりつく」という意味の言葉と結びつける説もある。さらには、もともとは労働歌だったという見方もある。つまりアリランは、その意味さえ一つに定まらないまま、長い時間を生き延びてきた歌なのだ。
『韓国民族文化大百科事典』によると、アリランが記録上確認されるのは19世紀以降とされ、1894年の「阿里娘打令(アリランタリョン)」、1896年の「アルラン(Ararung)」、1912年の「オルロンタリョン」、1918年の「アリラン(Areerang)」、さらに1926年の映画『アリラン』など、時代ごとに少しずつ形を変えながら伝わってきたという。
一般には近代以降に広がった歌とみなされることが多いが、一方では、「旌善アリラン」の起源説などをもとに、もっと古い時代にさかのぼる可能性も指摘されている。
また、アリランは「韓国で最初に録音された歌の一つ」とも語られることがある。1896年に朝鮮人留学生たちがアメリカで歌った音源が録音され、ワシントンに保管されているという話が知られている。少なくとも、それだけ早い時期から記録され、近代的メディアに乗った韓国の歌だったことは確かだろう。

アリランの面白さは、一つの完成された固定曲ではない点にもある。昔から歌われた伝統アリラン、1920年代以降に変形した新民謡アリラン、さらに現代的な大衆歌謡アリランまで含めれば、アリランは時代ごとに姿を変えながら生き続けてきた歌だといえる。
だからこそ、BTSが『ARIRANG』というタイトルを掲げた意味は小さくない。単なる民謡の借用ではなく、韓国の歴史と感情、そして文化的象徴そのものをアルバム名に背負ったといえるのではないだろうか。
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