「最近は特に大変なことはないので」「その数字遊び、そろそろやめませんか」
ENHYPENのジョンウォンがライブ配信で口にした言葉は、ヒスン脱退をめぐる一部ファンとの温度差をあまりにも生々しく映していた。
ヒスンの脱退が発表されてから、すでに時間は少しずつ動き始めている。だが、一部のファンはいまだにその場に立ち尽くしたままだ。
ジョンウォンの短い言葉は、まさにそのズレを可視化した。
「最近は特に大変なことはない」

所属事務所BELIFT LABは3月10日、ヒスンがENHYPENから独立し、グループは今後6人体制で活動を続けると発表した。
事務所は、ヒスンが追求する音楽的志向を尊重した結果だと説明し、ヒスン本人も直筆の手紙で「会社が提案してくださった方向に沿って、ENGENE(ENHYPENファン)の皆さんにより良い姿で近づくために大きな決心をすることになった」と伝えた。
さらに3月22日のファンとの映像通話イベントでは、「本当に驚かれたと思うけど大丈夫だ」「でも一方で少し申し訳ない気持ちもある」と、自らの口でも心境を明かしている。
残るメンバーたちもまた、突然の知らせに戸惑うファンを気遣いながら、「ヒスンの選択と新しい出発を尊重し、応援する」というメッセージを出していた。少なくとも当事者たちは、それぞれの立場で前に進もうとしているように見える。

だが、その動きにどうしても追いつけない一部ファンがいる。
ヒスン脱退をめぐっては、発表直後から一部ファンの反発が過熱した。海外から韓国の「国民年金公団」に抗議の電話とメールが殺到し、本来の相談業務が一時麻痺したことまで明らかになった。
ヒスンやENHYPENの問題を扱う立場にない国民年金公団がターゲットになったのは、BELIFT LABの親会社HYBEの大株主だからという理由だった。
さらに、ヒスンと楽曲制作を共にしてきたプロデューサーEL CAPITXNにも批判が向かい、SNS上の応酬はヒートアップした。HYBE社屋近くではトラックデモも行われ、「公式立場を撤回せよ」「ヒスンはENHYPENと共にあるべきだ」「ENHYPENはいつも7人だ」といった文句が掲げられた。
もちろん、長く応援してきたメンバーの脱退にショックを受けること自体は、ごく自然なことだろう。悲しみも怒りも、すぐに整理できるものではない。問題は、その感情がどこへ向かうのかだ。
今回目立っているのは、あくまで一部ファンの行動だ。だが、そこにある感情ははっきりしている。ヒスンの脱退を「悲しい出来事」として受け止めているだけではなく、「ENHYPENは7人でなければならない」という物語そのものを守ろうとしているように見える。

だからこそ、ジョンウォンの配信での言葉が重い。
ファンから「泣いてもいいんだよ」といった趣旨のコメントが寄せられると、ジョンウォンは「大丈夫です。最近は特に大変なことはないので」と笑い混じりに返した。そして、コメント欄に「7人」などの数字が並ぶ状況に対しては、「その数字遊び、そろそろやめませんか。ライブにはただENGENEだけ来てほしい」と話した。
一見すると軽く受け流しているようにも見える。だが、そこで伝えようとしていることはかなり明確だ。
まず、「泣いてもいい」と先回りして感情を与えているのはファン側であり、ジョンウォン本人は「大変なことはない」とその投影をやんわり拒んでいる。さらに、「7」という数字をコメント欄に書き込む行為を、彼は“数字遊び”と表現した。
ファンにとっては切実な抗議や願いなのかもしれない。だが、今ここでライブ配信をしているメンバーからすれば、それは自分たちの時間と空気を支配する反復にしか見えていない、ということだろう。

そして何より、「ただENGENEだけ来てほしい」という言葉が象徴的だ。これは、「7人派」でも「脱退反対派」でもなく、今のENHYPENを見に来るファンであってほしい、というメッセージにも聞こえる。
この温度差は残酷でもある。ファンの一部はまだ「7人」の物語の中にいる。だが、当のヒスンはすでにソロアーティストとしての道へ進み始めており、残るメンバーも6人体制のENHYPENを引き受けて前へ進もうとしている。
コメント欄に「7」と書き続けることで支えようとしているつもりでも、その言葉は今ここにいる6人を見ていない。そうしたズレが、ライブ配信という極めて現在形の場で露わになったのだ。
ファンダムの熱量は、本来グループを支える力に他ならない。だが、その熱が“今”ではなく“過去”に向かい始めたとき、メンバーの言葉さえ届かなくなりうる。
ヒスンもENHYPENの6人も前を向いている。だからこそ今、必要なのは過去を引きずることではなく、それぞれの新しい歩みを支えるファンの後押しではないだろうか。


