最近、日本の音楽ファンの間でちょっとした話題になったニュースがある。
ロックバンド[Alexandros]が、神奈川県相模原市の「名誉観光大使」に就任したというトピックだ。
相模原は、川上洋平(Vo/Gt)と白井眞輝(Gt)の出身地であるほか、磯部寛之(Ba/Cho)も住んだ経験があり、リアド偉武(Drs)は妻の故郷であるなど、メンバーそれぞれが深い縁を持っていることで知られる。
代表曲『ワタリドリ』は小田急線・相模大野駅の列車接近メロディーに採用されているほか、地元で主催フェス「THIS FES’24 in Sagamihara」を開催するなど、まさに地元のスターが街のPRを担う理想的な形だ。
日本には[Alexandros]のほか、Perfume(広島)や福山雅治(長崎)、GLAY(函館)のように、地元ゆかりのアーティストがふるさとを応援する文化が根付いている。こうした縁を大切にする地元のPR活動は、ファンや市民に深い親近感と誇りを与える、日本らしい温かみのある広報スタイルと言える。
だが、お隣・韓国に目を向けると、観光大使という存在の捉え方が少し異なることに気づく。
地元の「顔」か、国家の「ブランド」か
もちろん韓国でも、地元出身者を起用するケースはある。2019年のカン・ダニエル(釜山出身、釜山広報大使)、昨年7月のBLACKPINK・ジェニー(ソウル出身、ソウル観光名誉広報大使)などは、その好例だ。しかし、韓国がより力を入れているように見えるのは、「地元出身かどうか」という枠組みを超えた、トップスターによる戦略的な海外向けPRである。

その象徴が、世界的人気グループのBTSだ。彼らは2017年から長きにわたりソウル市の名誉観光広報大使を務めているが、驚くべきことに、メンバー7人の中にソウル出身者は一人もいない。彼らに求められているのは地元の思い出話ではなく、ソウルという都市を世界最高峰のブランドとしてパッケージ化し、グローバルに発信する力なのだ。
このような広報は、BTSだけにとどまらない。近年の韓国観光やソウル市の顔ぶれを見れば、その徹底ぶりは一貫している。たとえば、Z世代のアイコンであるNewJeansも、2023年にソウル市の広報大使に委嘱された。彼女たちの中には海外育ちのメンバーもいるため、そこに「地縁」という制約はない。あくまで「今の韓国・ソウルを最も象徴するアイコン」としての役割が期待されているのだ。
そのプロモーションの規模も、日本の自治体が制作するポスターやパンフレットの域を遥かに超えている。
BTSの例を見ると、2017年の「BTS’ Life in Seoul」から始まり、パンデミック禍の「See You in Seoul」、そして都市の活力を爆発させた「MY SOUL SEOUL」など、彼らを起用したPR映像たちは、常にYouTubeを通じて世界中に送られてきた。

これはもはや地元の宣伝という枠を超えた、一つの「国家プロジェクト」に近い。洗練された映像美の中で、スターたちがソウルの伝統文化や夜景を案内することで、世界中のファンに「誰もが一度は訪れてみたい、開放的な国際都市」というイメージをダイレクトに植え付けているのである。
つまり、日本が「出身スターによる地元密着型のPR」を通じて、地域との絆や温かい物語を育むことを基本とするならば、韓国は「世界的スターを起用した都市ブランドの輸出」によって、強力な誘客力を生み出すという発想だろう。同じ「観光大使」という肩書きでも、その狙いは「国内のファンを地元に呼び、地域を温める」のか「世界から広く観光客を誘致し、都市ブランドを高める」のかという、戦略のベクトルの違いとなって現れている。
もっとも、どちらのアプローチが正解というわけではない。地道な地元貢献で街の熱量を高める日本のスタイルも、圧倒的な発信力で世界を惹きつける韓国のスタイルも、エンターテインメントの力で地域の活性化を図るという点では、その思いは共通している。
相模大野駅で流れる『ワタリドリ』のメロディーも、世界中に配信されるBTSの姿も、その街を訪れる人々にとっては、都市を形作るかけがえのない要素の一部なのである。

![BTSにソウル出身者は一人としていない?[Alexandros]のケースから紐解く、日韓「観光大使」の違い](/imgs/p/hDN4m_UJPEFczM0wl2KIHdtO9kFAQ0P9REdG/1001235.jpg?vmode=default)
