ミュージカルで主演を務めるK-POPアイドルが、思わぬ議論の中心に立たされている。
渦中の人物は、ボーイズグループTHE BOYZのニューだ。
ミュージカル『ロミオとジュリエット』でロミオ役を務めたニューの歌唱映像がX(旧ツイッター)で拡散し、「ビブラートができないのに主演なのか」「発声も呼吸も足りない」といった厳しい反応が噴出したのだ。
その投稿は2800万回を超える表示を記録し、もはや一公演の感想を超えた“実力論争”に発展している。
“アイドル主演ミュージカル”に向けられる目線
ただ、今回の炎上は突然起きた事故というより、最初から予告されていたことだったのかもしれない。

実際、17年ぶりに『ロミオとジュリエット』が帰ってくると発表された3月時点で、韓国メディア『テンアジア』は、この作品に対して「期待とともに“アイドル中心ラインナップ”への懸念がある」と報じていた。
かつてはミュージカル俳優や声楽家が担っていたロミオ役が、今回は歌手キム・ヒジェ、N.Flyingのユ・フェスン、THE BOYZのニュー、CRAVITYのウビンと、歌手出身者中心に大きく組み替えられていたからだ。
しかも、この作品は甘くない。『ロミオとジュリエット』は演技だけでなく、高難度のナンバーが多いことで知られる。今回、ロミオ役に入ったニューとウビンがミュージカルデビュー作であり、相手役ジュリエットが専門声楽家である点からも、実力差を懸念する視線があった。
つまり今回の騒動は、ニュー個人だけに突然向けられた悪意ではなく、そもそも「このキャスティングで大丈夫なのか」という不安が、実際の舞台映像をきっかけに一気に噴き出した結果ともいえる。
ここで見えてくるのは、“アイドル主演ミュージカル”が毎回抱える、かなり根本的な難しさだろう。
アイドルであってもメインボーカルであれば歌にも定評がある。そして何より、客を呼べる。だからこそ制作側は、話題性とチケットパワーを見込んでアイドルを前面に出す。実際、今回のキャスティングについては、『チケットパワー』を考慮した戦略的選択だという見方が開幕前から出ていた。

だが、ミュージカルの舞台ではK-POPとはまったく違う評価軸が作動する。単に歌が上手いかどうかではなく、発声、呼吸、ナンバーの処理、演技との接続、相手役とのバランスまで含めた“舞台の基礎体力”が問われる。グループ活動の中では見えにくい弱点も、主演として一人で立った瞬間、容赦なく露出しやすいのだ。
それだけに、アイドル主演ミュージカルは最初から二重の視線を背負っている。ひとつは「普段のステージ経験を生かして新しい可能性を見せるかもしれない」という期待。もうひとつは、「結局、実力より人気と話題性を優先したキャスティングではないか」という疑問だ。
ニューに向けられた今回の反応は、まさに後者が一気に爆発した形だ。
ただ、この手の論争は、ニューだけの問題でもない。
今年2月、STAYCのシウンがミュージカル『西便制』(原題)で主人公ソンファ役にキャスティングされた際、彼女のペアにだけ「老年のソンファ」が別途新設されたことが波紋を呼んだ。

作品後半の高難度パートだけを事実上分離したように見えたため、「特定の俳優のために配役構造を変えたのではないか」「主演なのにハイライトを別の俳優が担うのは公平なのか」と、ミュージカルファンの反発が広がった。
このケースでも問題になったのは、実力への不安を前提に、作品構造まで“調整”されたように見えたことだった。
アイドルとミュージカルをめぐる摩擦の核心は単純ではない。アイドルが舞台に立つこと自体が問題なのではなく、制作側が人気と動員を優先して起用したように見えた瞬間、観客はその選択の妥当性を舞台上の実力で非常に厳しく検証し始める。
そして少しでも不足が見えれば、「やはりチケットパワー目当てだった」と結論づけられやすい。それがアイドル主演ミュージカルの最も厳しいところだ。
もちろん、アイドル出身者が必ずしも舞台で苦戦するわけではない。この世界には、時間をかけて実力を証明し、「アイドル出身」という肩書をむしろ過去のものにした成功例もある。東方神起出身のジュンスは、その代表例だろう。

結局、ニューをめぐる今回の炎上が映しているのは、一人の歌唱映像や一公演の出来不出来だけでなく、“アイドル主演ミュージカル”そのものに向けられた懐疑の目なのかもしれない。『ロミオとジュリエット』をめぐる今回の論争は、その問いがいまだ解かれていないことを、生々しく示している。
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