匿名の元マネージャーが出演する動画が、議論を呼んでいる。
韓国芸能界には、芸能人の代わりにマネージャーが罪をかぶる慣行があったと主張したからだ。
自らを「1000万俳優」「国民的俳優」の担当だった元マネージャーと名乗るA氏は、YouTubeチャンネル「職業のすべて All about jobs」に公開された動画に出演した。
動画の中でA氏は、芸能人の身代わりになる慣行があったとし、特に飲酒運転について「記事が出る前にマネージャーが『実は私がやりました』と名乗り出て、その代価として金が支払われる」と語った。
さらに、芸能人の指示で薬の代理処方まで受けたことがあると話した。こうした行為は、医療法違反などに問われる可能性がある。本人はカカオトークの記録も持っているとしたが、動画ではそれを直接公開していない。
つまり現時点で、この暴露のすべてが事実だと確認されたわけではない。それでも、この話は妙に説得力がある。
実際に起きた“身代わり”や代理処方

というのは、すでに韓国芸能界では、A氏が語ったことと似たような例が現実に起きているからだ。
最も象徴的なのが、飲酒運転の“身代わり”だろう。
歌手キム・ホジュンは、2024年5月、ソウル・江南区狎鴎亭洞で飲酒運転を行い、センターラインを越えて対向車線のタクシーに衝突。そのまま現場から逃走した。
その後、彼は自分の服を着せたマネージャーを身代わりとして出頭させ、事件の隠蔽を図った。加えて、所属事務所の本部長チョン氏は、車両のドライブレコーダーのメモリーカードを破壊するなど、証拠隠滅にも加担していた。
最終的にキム・ホジュンは、懲役2年6カ月の実刑判決が確定している。

この実例を振り返ると、A氏の「マネージャーが先に“自分がやった”と名乗り出る」という話は、少なくとも完全な空想とは考えづらい。前例がある以上、匿名の暴露でも急に現実味を帯びてしまう。
もう一つ、A氏の話に妙な説得力を与えているのが、代理処方の問題だ。
代理処方とは、本来は本人が受けるべき診察や処方を、家族や知人、マネージャーなど第三者が代わりに受けたり、薬を受け取ったりする行為を指す。特に睡眠薬や向精神性医薬品のような薬でこれが行われれば、医療法違反などに問われる可能性がある。
こちらもまた、韓国芸能界では繰り返し疑惑や事件が浮上してきた。
例えば、俳優ユ・アインは数年間にわたって父や姉の名義を使って睡眠薬の処方を受けた件で有罪判決が確定している。また、『江南スタイル』の歌手PSYは睡眠薬の代理受領疑惑で警察の捜査を受け、所属事務所も「代理受領」は過ちだったと認めている。
タレントのパク・ナレをめぐっても、元マネージャーが婦人科での代理処方を指示されたと暴露して波紋が広がった。つまり、A氏が語った「自分も薬の代理処方をした」という話は、芸能界の文脈に照らすと決して突飛ではないことなのだ。

韓国メディア『イーデイリー』の記事でも、専門家や現役マネージャーの証言として、芸能人特有の不規則な生活、病院に行く時間のなさ、身分露出への不安、そしてマネージャーと芸能人の境界が曖昧な業務構造が、代理処方を繰り返させる背景だと説明されている。
A氏の話が怖いのは、こうした業界の“ありがち”な構造とぴたりとはまっているからだ。飲酒運転の身代わりも、代理処方も、韓国芸能界ではすでに現実の事件として存在している。そうなると、A氏が「自分もやった」と語ったとき、視聴者は「本当か?」と疑う前に、「ありそうだ」と感じてしまう。そこに、この暴露の不気味さがある。
もちろん、匿名の証言だけで特定の俳優や所属事務所を事実認定するのは危険だ。A氏が持っているとする証拠も、現段階では全面的に公開されたわけではない。だが一方で、この暴露をただの作り話と片づけにくいのもまた事実だろう。
しかもA氏の暴露は、違法行為の疑いにとどまらず、芸能界の閉鎖的な空気までうかがわせる。
A氏は、所属事務所によるマネージャー監視の実態についても語っている。彼は車のドライブレコーダーを外して点検したり、車内で録音がオンになった状態の携帯電話を発見したりしたこともあると主張した。その理由について、A氏は「私がうちの会社の所属芸能人の悪口を言っているか確かめるために、録音機をオンにしていたものだ」と話した。

さらに、芸能人たちの接待文化に関する証言も出た。A氏は「テンプロ(高級遊興飲食店)によく行く。江南(カンナム)にはBJ(配信者)や多く有名なストリーマーも多いので、汝矣島(ヨイド)や永登浦(ヨンドゥンポ)方面によく行った」と述べた。
そして「私のようなマネージャーはその部屋に入れず、ほとんど役員級が入り、芸能人たちと話をする」とし、担当芸能人の要請で「送迎してほしい」という頼みを受けたこともあると振り返った。
少なくとも韓国芸能界では、飲酒運転の身代わりも、薬の代理処方も、実際に問題化してきた。だからこそA氏の暴露は、真偽不明でありながらも、ただの刺激的な作り話としては聞き流しにくい。妙に現実の匂いをまとって響いてしまうのだ。
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