本来は料理で勝負するはずのシェフたちが、いまや“味”以外のことで次々と話題になっている。
Netflixの人気料理サバイバル番組『白と黒のスプーン~料理階級戦争~』は、出演したシェフたちを一夜にしてスターへと変えた。
【画像】「これはひどい」『白と黒のスプーン』料理人のコラボ弁当が炎上
だがその瞬間から、彼らはもう“皿の上の味”だけで評価される存在ではなくなった。
店のトラブル、コラボ商品の出来、不祥事の履歴、レストランのルール、さらには謝罪文の書き方まで、すべてが話題になる。いま起きているのは、シェフの“スター化”による副作用なのかもしれない。
その象徴のように見えるのが、アン・ソンジェの謝罪だ。
“味”以外も求められるように
彼がオーナーシェフを務めるソウルの高級レストラン「モス・ソウル(MOSU Seoul)」は4月23日、メニュー記載の2000年ヴィンテージではなく、2005年ヴィンテージを提供したとされる騒動を受けて、公式に謝罪した。

店側は「正確な案内ができず混乱を招き、その後の対応でも十分な説明ができなかった」と頭を下げたが、消費者の反応は冷たかった。
「本当に何が起きたのか説明がない」「本質を避けた謝罪に見える」といった不満が相次ぎ、むしろ過去の不快な体験談まで続々と掘り返されている。
モス・ソウルはミシュラン2つ星で、ディナーコースは42万ウォン(約4万5000円)、2人でワインペアリング込みなら100万ウォン(約10万8000円)を超える高額店だ。だからこそ、客が求めていたのは料理だけではなく“完璧な体験”そのものだったともいえる。
この騒動が興味深いのは、単なるワインのミスでは終わっていないことだ。
アン・ソンジェに向けられている視線は、ソムリエの現場対応や店の説明責任、さらには店全体の信頼性にまで広がっている。これは、彼が単なるシェフではなく、『白と黒のスプーン』によって“ブランド化された料理人”になった反動ともいえるだろう。
番組を通じて視聴者は、料理の腕だけでなく、審査員としての厳格さ、店の哲学、人格まで含めてアン・ソンジェという存在を消費してきた。だから店のトラブルもまた、単なる店舗事故ではなく、“スターシェフの看板”が試される事件に変わってしまう。
実際、『白と黒のスプーン』出演シェフたちをめぐる議論は、ここ最近かなり続いている。
たとえば、番組を通じて有名になった「酒造りのユン女将」ことユン・ナラは、コンビニとのコラボ弁当を発売したが、「宣伝写真と全然違う」「量が少なすぎる」「期待していたクオリティではない」と炎上した。

本人はSNSで、オンライン上でまずそうに撮られた写真が広まり誤解が生じたと釈明したものの、議論は簡単には収まらなかった。ここで見られていたのも、単なる弁当の出来以上に、“番組で見た料理人の味や感性が量産商品でも再現されるのか”という期待値だったはずだ。
イム・ソングンのケースは、さらにわかりやすい。
彼は『白と黒のスプーン』シーズン2を通じて再び大きな注目を集めたが、その後、複数回の飲酒運転歴が明るみに出て批判が強まり、出演予定だった番組から相次いで外れることになった。ここでも問われたのは料理の腕ではなかった。

スター化したシェフは、料理の出来だけで評価されるのではなく、過去や人格まで含めて“価値”に換算されてしまうということだ。
チェ・ヒョンソクの例は、不祥事ではないが、今の空気をよく映している。
彼が運営するレストラン「CHOI.」では、「露出の激しい服装や、他のお客様に不快感を与える可能性のある服装は控えてほしい」という注意書きがあらためて話題になった。本来なら店のドレスコードや空間づくりの話で済むはずのものが、番組での注目をきっかけにネット上の話題として消費される。
つまり今は、料理だけでなく、店の空気やルールさえもスターシェフの“作品”として見られているわけだ。

こうして並べてみると、いま起きているのは単に『白と黒のスプーン』出身シェフたちが次々と問題を起こしている、という話ではない。番組が彼らを有名にしたことで、料理、接客、商品クオリティ、店のルール、過去の履歴、謝罪の仕方まで、すべてが一体で見られるようになった。
料理人自身が“スター商品”となった以上、世間は皿の上の味だけで満足しない。店での一つの応対、コンビニ弁当の見た目、レストランの注意書きにまで反応する。そこにあるのは、スター化の恩恵であると同時に、その反動でもある。
だからアン・ソンジェの謝罪も、単発のワイン騒動では終わらないのだ。
『白と黒のスプーン』によるシェフの“スター化”によって、いまや彼らは“料理だけで評価される人”ではなくなった。その過剰な期待と監視の反動が、いま一気に噴き出しているのかもしれない。
■【画像】「これはひどい」『白と黒のスプーン』料理人のコラボ弁当が炎上


