「めっちゃ怖かったです」
NCTのユウタが明かした“サセン”被害は、K-POPスターがどれほど私生活を脅かされてきたかを改めて感じさせるものだった。
NCT/NCT 127のユウタとして活動する中本悠太は、5月12日に放送されたABEMA『ナオキマンの都市伝説ワイドショー Season3』に出演し、自身の恐怖体験として、いわゆる“サセン”の存在について語った。
“サセン”とは、韓国語で「私生活(サセンファル)」を意味する言葉から来た表現で、アイドルや俳優のプライベートにまで踏み込む過激ファンを指す。ライブ会場や公式イベントで応援するファンとは違い、宿舎、自宅、移動経路、空港、飛行機、電話番号など、スターの生活そのものを追いかける存在だ。
ユウタは番組で、メンバーと共同生活をしていた宿舎について、「毎回30人くらいのファンがいて、張っている」と明かした。
メンバーが“おとり”になることも

あまりに人が集まるため、メンバーの間では、じゃんけんで負けた人が“おとり”になって外に出ることもあったという。
普通に宿舎を出ることすらできない。誰かが先に出て注意を引きつけなければならない。それは、人気者の笑い話というより、私生活が常に監視されていたことを示す恐怖のエピソードだ。
さらにユウタは、電動キックボードで追いかけられた経験も明かした。
当時、電動キックボードが普及し始めたことで、サセンたちはそれを使って追跡してきたという。ユウタが全速力で走っても、後ろからついてくる。脇道に隠れてやり過ごそうとすると、相手は「すっごい涼しい顔で通り過ぎていった」という。ユウタはそのときのことを「めっちゃ怖かった」と振り返っている。
この言葉は重い。
ファンの側から見れば、「少しでも近くで見たい」「偶然会えたらうれしい」「同じ空間にいたい」という気持ちなのかもしれない。しかし、追われる側にとってそれは、喜びではなく恐怖そのものだ。
推しを見たいという欲望が、推しに「逃げる」「隠れる」「おとりを立てる」という行動を強いている。その時点で、それはもう応援ではない。
“好き”が相手の生活を奪うとき
サセンの問題は、今に始まったことではないだろう。
K-POP界では長年、宿舎前での待ち伏せ、自宅への接近、車での追跡、航空便の同乗、個人情報の取得などが問題になってきた。スターの行き先を把握し、写真を撮り、時には身体的に近づきすぎる。そこには「ファンだから」という言葉では正当化できない行為が含まれている。
ユウタの話が象徴的なのは、サセン被害がスターの生活のかなり基本的な部分にまで入り込んでいることだ。
宿舎は、ステージを降りたアイドルが帰る場所だ。食事をし、眠り、翌日の仕事に備える生活の場だ。その前に毎回30人ほどが張り込んでいるのだから、プライベートがないというより、安心して生活する権利そのものが削られている状態に近い。
しかも近年は、サセン被害がさらに広がっている。
今年3月には、SMエンターテインメントが、デビュー前の男性練習生チーム「SMTR25」に対する私生活侵害について警告文を発表した。宿舎への無断侵入、過度な身体接触、タクシーへの無断同乗、建物内で名前を叫ぶ行為、ゴミの不法投棄、立ち入り禁止区域への侵入などが相次いでいたという。

衝撃的なのは、被害を受けていたのが、まだ正式デビューすらしていない練習生だったことだ。
トップスターだけではなく、デビュー前の段階から、宿舎を突き止められ、移動に割り込まれ、身体に触れられる。これは「人気が出たから仕方ない」という話ではないだろう。K-POPのシステムの入口にいる若者たちにまで、過激な接近行為が及んでいるということだ。
とはいえ、トップスターたちが受けてきた被害も、想像を絶するものだ。
例えば2PMのジュノは、深夜に自宅のベルが鳴ったり、玄関前にサセンが座っていたりした経験を語っている。ジェジュンに至っては、夜中に寝ていたところ、自宅に侵入した人物にキスをされたという信じがたい体験を明かしたこともある。

世界的なスターとなったBTSも例外ではない。JUNG KOOKは除隊直後、自宅玄関のパスワードを何度も入力して侵入しようとした女性が警察沙汰になった。Vも自宅で待ち伏せされ、車を追いかけられたことがある。RMの場合は、韓国鉄道公社の職員が3年にわたって乗車券情報や住所、携帯電話番号などを盗み見ていたことが明らかになり、衝撃を与えた。
もはや、サセンは「過激なファン」ではなく、加害行為を繰り返す犯罪者だ。

距離を守ることも、推し活の一部
ファンがスターを好きになること自体は、もちろん悪いことではない。
しかし、応援には境界線がある。公式に開かれた場所で会うことと、私生活の領域に踏み込むことはまったく違う。「好きだから知りたい」「好きだから会いたい」「好きだから近づきたい」という感情は理解できないものではないが、その感情が相手の生活を壊すなら、それはもう愛情ではないだろう。
むしろ、本当に好きなら、相手が安心して眠れる場所、自由に移動できる時間、誰にも見られずに過ごせる瞬間を守るべきだろう。
ユウタが語った「めっちゃ怖かった」という言葉は、サセン行為の本質をよく表している。近づく側にとっては愛情表現のつもりでも、推しは恐怖として記憶している。そのズレこそが、サセン問題の怖さだ。
K-POPは、ファンとの距離が近い文化として成長してきた。ファンミーティング、サイン会、ライブ配信、空港写真、SNS、WeverseやBubbleのようなコミュニケーションサービス。ファンは以前よりも、スターの言葉や日常に触れやすくなった。
しかし、近さが増したからこそ、守るべき距離もある。
ユウタの告白は、過去の怖い話として消費されるべきものではなく、今も続くK-POPのサセン問題が、スターにどれほどの恐怖を与えているかを改めて示す証言だ。
近づくことが、推しを怖がらせているかもしれない。その想像力を持つことが、これからの推し活には必要なのだろう。
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