韓国で活動しづらくなったスターは、なぜ日本へ向かうのか。
学生時代のいじめ問題で活動を中断していた俳優キム・ドンヒが、再び動き出している。
キム・ドンヒは5月25日、自身のSNSに四つ葉のクローバーの絵文字とともに複数の写真を投稿した。
公開された写真には、水辺の近くで何かを撮影しているような姿や、スタッフに囲まれて髪を整えてもらう様子が写っていた。
韓国メディアは、これを受けて「国内復帰に始動か」と報じている。
キム・ドンヒは今年1月、ネオスエンターテインメントと専属契約を結び、本格的な再始動の準備に入った。
ただ、それ以前から彼は日本のファンとの接点を保っていた。昨年7月には、東京・飛行船シアターで「KIM DONG HEE FANMEETING IN TOKYO SUMMER MESSAGE」を開催している。
韓国での活動が止まっている間も、日本ではファンと会う場を持ち続ける。今回の動きは、その先にある韓国復帰を見据えたものにも見える。
『梨泰院クラス』で注目された若手俳優
キム・ドンヒは、もともと韓国ドラマ界の有望株だった。

2018年のウェブドラマ『A-TEEN』を皮切りに、高視聴率を記録した『SKYキャッスル』、2020年の『梨泰院クラス』、そしてNetflix『人間レッスン』などに出演し、次世代俳優として存在感を広げた。
特に『梨泰院クラス』は日本でも大ヒットした作品だ。キム・ドンヒはチャン・グンス役として知られ、日本の視聴者にも顔を覚えられた。
実際、2023年に日本で初ファンミーティングを開いた際のインタビューでは、日本ファンについて「SNSメッセージで多くの方からメッセージをいただく」とし、「本当に不思議です。ただ感謝の気持ちしかないです」と語っていた。日本での認知度は、彼にとって大きな支えだったはずだ。
しかし、その上昇ムードは2021年に突然止まった。学生時代のいじめ疑惑が浮上したためだ。
韓国メディアによると、キム・ドンヒは当初、疑惑を否定し、暴露者を虚偽事実摘示による名誉毀損で告訴した。しかし暴露者側が「嫌疑なし」の処分を受けると、2022年1月に一部の行為を認めて謝罪した。
キム・ドンヒは、問題となった出来事について「小学校5年生のとき、クラスメートと口論になってけんかをし、先生に叱られた」と説明。母親に叱られたあと、相手の家を訪ねて謝罪したとも明かした。

また、「その後、問題なく一緒に過ごした時間が多かったので、私を許してくれたと思っていたようだ」とし、「私ひとりの考えだったことを知らなかった。その方々に傷が残っていたことを思いやれなかった」と述べた。
一方で、はさみやカッターを持ったことはないと否定しつつ、足で胸のあたりを押す行為などはあったと報じられている。
つまり、キム・ドンヒはすべての疑惑を認めたわけではない。ただ、少なくとも一部の行為については認め、謝罪した。その結果、韓国での活動は長く停滞することになった。
今回のキム・ドンヒの動きが注目されるのは、彼個人の復帰問題にとどまらない。
韓国で物議をかもした芸能人が、まず日本でファンミーティングやライブを行い、一定期間を置いて韓国復帰の機会を探る。そんなパターンが、近年繰り返されているように見えるからだ。
もちろん、すべてのケースを同列に語ることはできない。いじめ問題、飲酒運転、麻薬、私生活スキャンダル、性犯罪では、問題の重さも社会的意味もまったく違う。キム・ドンヒの事案を、刑事事件を起こした芸能人と同じ枠で扱うのは乱暴だ。
それでも「韓国で世論の目が厳しくなると、日本でファンと接点を持ち続ける」という構図自体は、共通している。
日本が“復帰前の足場”になる
例えば、東方神起出身のパク・ユチョンは、2019年に麻薬投薬の容疑で有罪判決を受けた。

疑惑が浮上した当時は「麻薬をしていたら引退する」と潔白を主張したが、検査で陽性反応が出て、韓国芸能界から事実上退場した。
しかしその後、海外を中心に活動を再開し、日本でもファンミーティングやディナーショー、ライブを続けている。5月にもZepp Hanedaでツアーを行い、12月には東京国際フォーラムでの公演も告知されている。
UN出身のキム・ジョンフンも似た構図にいる。
彼は飲酒運転、私生活をめぐる論争、さらに飲酒測定拒否疑惑などで、韓国で強い批判を浴びた。それでも日本でファンミーティングやライブを継続し、2025年にはドラマ『夫婦スキャンダル3-パンドラの秘密』(原題)で韓国ドラマ復帰も果たしている。
韓国で活動しづらくなったあと、日本でファンとの接点を維持し、時間を置いて本国での出演機会を探る。キム・ジョンフンの例は、そのひとつの実例に見える。

それにしても、なぜ日本が選ばれやすいのだろうか。
理由のひとつは、日本にすでにファンベースが残っていることだ。
韓国ドラマやK-POPを通じて一度日本で人気を得たスターは、韓国で活動が止まっても、日本には待っているファンがいる。テレビ出演やドラマ復帰が難しくても、ファンミーティング、ライブ、ディナーショー、FCイベントなら成立する可能性がある。
もうひとつは、日本のファン文化だ。日本では、一度ファンになった相手を長く応援し続けるファンが少なくない。過去の作品をきっかけに応援を続け、韓国で批判を浴びた後も「それでも会いたい」「応援したい」と考えるファンがいる。
さらに、日本メディアは韓国のスキャンダルに対して、韓国メディアほど長期的かつ集中的に追及しない場合がある。韓国で大きく報じられた物議も、日本ではファンイベントの告知や来日ニュースとして比較的穏やかに扱われることがある。そのため、韓国での復帰が難しい芸能人にとって、日本は「完全復帰」ではなくても、活動を止めずに済む場所になりやすい。
もちろん、日本活動そのものが悪いわけではない。日本にも彼らを待つファンがいる。ファンにとっては、好きだった俳優や歌手に会える貴重な機会だ。本人が過去の問題と向き合い、誠実に活動を続けるなら、日本でのファン活動が再起の一歩になることもあるだろう。
ただ、韓国で十分な検証や納得を得ないまま、日本で収益を上げ、時間を置いて韓国復帰を探る構図には、韓国側から批判が出やすい。特に、問題が重いほど「なぜ日本では受け入れられるのか」「日本ファンを復帰の足場にしているだけではないか」という疑問も生まれる。
キム・ドンヒの場合も、今後の復帰は簡単ではないだろう。

韓国では、いじめを含む校内暴力、いわゆる“学暴”問題に対する世論が非常に厳しい。被害者が受けた傷は時間が経てば消えるものではなく、芸能人が「若い頃のこと」として簡単に済ませられる雰囲気でもないことはたしかだ。
今回、SNSに撮影中と見られる写真を投稿したことは、小さな動きに見えるかもしれないが、作品活動を中断して久しい彼にとっては、復帰へのサインとして受け止められても不思議ではない。
日本でファンと会い、所属事務所を決め、撮影現場らしき姿を見せる。それは、韓国での本格復帰に向けた地ならしにも見える。
キム・ドンヒは日本活動を経由して、韓国で復帰を果たせるのか。その姿は、物議をかもした韓流スターたちが選びがちな“再起ルート”を改めて浮かび上がらせている。
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