人気急上昇中のガールズグループRESCENE(リセンヌ)に、突然のブレーキがかかった。
6月20日に予定されていた中国ファンイベントが、開催前に急きょ中止となったのだ。
RESCENE側は「現地の不可抗力的な事由」により中止になったと説明し、すでに購入を完了したファンには一括キャンセルと全額払い戻しを行うと発表した。
ただ、具体的な理由は明らかにされていない。
会場側の事情なのか、現地当局や許認可の問題なのか、あるいは販売状況を含む興行上の判断なのか。公式発表だけでは、正確な理由が見えてこない。
だからこそ、今回の中止は単なるスケジュール変更ではなく、いまのK-POP海外イベントが抱える複数のリスクを浮かび上がらせている。
勢いに乗っていたRESCENE
今回の中止が目を引くのは、RESCENEがまさに勢いに乗り始めたタイミングだったからだ。

RESCENEは、ウォニ、リブ、ミナミ、メイ、ゼナの5人で構成されたガールズグループ。最近では、ウォニの個人YouTubeチャンネル「アンニョンハセヨウォニですよろしくお願いします」(原題)から火がついた“ギャル”と方言のコンセプトがSNS上で話題になった。
特に日本人メンバーのミナミが“ギャル”として登場し、生まれた「巨済(コジェ、地名)ヤッホー」というミームは、K-POPファンの枠を超えて拡散された。
こうした話題性は音源チャートにもつながり、2024年8月に発売されたミニ1stアルバム『SCENEDROME』のタイトル曲『LOVE ATTACK』が、今になって韓国主要音源チャートで“逆走”しているほどだ。

つまりRESCENEは、いわゆる大手事務所の大型新人とは違うルートで注目を集めているグループだ。完成されたステージや大規模プロモーションではなく、メンバー個人のキャラクター、YouTubeの空気感、ショートフォームで拡散されるミームを入り口に、一般層へと名前を広げている。
だからこそ、中国ファンイベントの突然の中止は惜しい。人気が上向きになっているタイミングで、海外ファンと接触する場が消えたからだ。
日本人メンバーの存在は影響したのか
今回のイベント中止の理由を推測する際、真っ先に思い浮かぶのが、日本人メンバーをめぐる中華圏リスクだろう。
RESCENEには日本人メンバーのミナミがいる。近年の中華圏K-POPイベントでは、日本人メンバーの存在がリスクとして浮上するケースが相次いでいるという背景がある。

今年2月には、RIIZEのマカオ公演で日本人メンバーのショウタロウが不参加となった。制作側は「やむを得ない事情」と説明したが、日中関係の緊張が影響した可能性が指摘された。
また、MBC主催の『ショー!K-POPの中心 in マカオ』が電撃中止になった際には、日本人メンバーのビザ発給問題が背景にあったとされ、日本人メンバーを除外して公演を行う案まで検討されたと報じられている。
さらにLE SSERAFIMも同時期、上海で予定されていた新譜のファンサイン会を中止している。宮脇咲良、カズハという日本国籍メンバーを含むグループ構成が、中国側にとって負担になった可能性も指摘された。
CLOSE YOUR EYESも杭州でのファンミーティングを開催したものの、日本人メンバーのケンシンは不参加となった。

こうした前例を踏まえると、RESCENEの中国イベント中止についても、日本人メンバーの存在が影響したのではないかという見方は成り立つ。
もちろん、公式にそう説明されたわけではないが、中華圏で日本人メンバーを含むK-POPグループの活動に不安定な事例が出ている以上、今回の「現地の不可抗力的な事由」という曖昧な説明を見たとき、そこに日本国籍リスクを重ねて見る人が出てくるのは自然だろう。
K-POPは多国籍化によって成長してきた。日本人メンバーも、いまや多くのグループにとって欠かせない存在だ。だが、その多国籍性が、政治や外交の局面では逆に活動制限の要因になり得る。RESCENEのケースも、そのリスクを想起させる出来事だった。
現実的なチケット問題
一方で、もう一つ考えられるのが、チケット販売や採算性の問題だ。
RESCENEは現在、韓国国内で注目度を高めている。『LOVE ATTACK』はチャートを逆走し、ウォニのYouTubeとミナミの“ギャル”コンセプトもSNSで拡散されている。
しかし、SNS上のバズと海外有料イベントの販売力は、必ずしも同じではない。
ショートフォームでミームが広がることと、中国現地でチケットを買ってイベントに来るファンが十分に集まることは別問題といえる。ネット上では話題でも、現地の有料イベントとして採算が合うかどうかは、会場規模、チケット価格、プロモーターの販売力、ファンダムの成熟度によって大きく左右される。

実際、K-POP海外公演やファンイベントでは近年、突然の中止が相次いでいる。
表向きの理由としては、猛暑、技術的問題、体調不良、現地事情など様々な説明が出る。しかし、その背後には、出演料の高騰、無理な日程拡大、不透明な収益構造、不確かな需要予測といった問題があるのではないかという指摘も出ている。
近年、K-POPアーティストの海外公演におけるギャランティは高騰している。現地プロモーターは採算を合わせるため、大型会場を押さえ、高額なチケットを設定する。だが需要予測が外れれば、観客が十分に集まらず、大きな損失を抱えることになる。
そのため一部では、チケットの売れ行きを見ながら開催可否を判断しているのではないかという疑念まで広がっている状況だ。もちろん、これは公式に確認された事実ではない。ただ、そうした疑いが生まれるほど、K-POP海外イベントへの信頼が揺らいでいるのも事実だ。
RESCENEの場合も、人気が上昇していることと、中国ファンイベントの販売が十分だったかどうかは切り分けて考える必要がある。
むしろ、今まさに話題になり始めた段階だからこそ、海外イベントとしての需要を読み切るのは難しかった可能性もある。韓国国内のミーム化、音源チャートの逆走、YouTubeの拡散が、どこまで中国現地のチケット購買につながっていたのか。それは外からは見えにくい。
「現地の不可抗力的な事由」という表現は、非常に幅が広い。行政上の問題にも使えるし、会場や主催側の都合にも使える。あるいは、興行上の判断を柔らかく包む言葉としても機能する。
だからこそ、チケット問題の可能性も消えない。
曖昧な説明が憶測を呼ぶ
今回のRESCENEをはじめ、K-POP関連の突然の中止でファンの不信を招きやすいのは、理由がほとんど説明されないことだ。
イベントが中止になること自体はあり得る。現地事情、許認可、会場、主催側、政治的環境、販売状況など、海外イベントには不確定要素が多い。特に中国市場は、K-POPにとって魅力的である一方、政治・行政・興行の面で予測しにくい市場でもある。
しかし、理由が「現地の不可抗力的な事由」だけで止まると、ファンの側には疑問だけが残る。説明が少ないほど、憶測は広がる。

K-POPの海外公演やイベントでは、すでに「発表されたからといって、本当に開催されるとは限らない」という不信感がじわじわ広がっている。公演やファンイベントは、ファンにとって単なる商品ではない。チケットを買い、予定を空け、遠征する人もいる。だからこそ、開催発表は一つの約束でもある。
その約束が突然消え、理由が曖昧なまま終わる。これが繰り返されれば、ファンの不信は蓄積していくだろう。
RESCENEは今、上昇気流に乗り始めたグループだ。ウォニの個人YouTubeから始まった話題性、ミナミの“ギャル”キャラクター、『LOVE ATTACK』の逆走という流れは、中小ガールズグループにとって大きなチャンスである。
だからこそ、今回の中国イベント中止は痛い。
本当の理由は明らかになっていないが、今回の一件が改めて浮かび上がらせたのは、K-POPの海外展開が広がれば広がるほど、ステージの外側にあるリスクも大きくなるという現実だ。国籍、外交、チケット販売、現地プロモーター、会場運営。そのどれか一つが崩れただけで、予定されていたイベントが突然消えてしまうこともある。
はたしてRESCENEの中国イベントは、なぜ中止となったのか。公式説明が「現地の不可抗力的な事由」にとどまる限り、その答えは見えないままだ。
◇RESCENE プロフィール
韓国人メンバーのウォニ、リヴ、メイ、ゼナ、日本人メンバーのミナミで構成された5人組ガールズグループ。グループ名は「香りで再び(RE)場面(SCENE)を思い起こす」という意味で、大衆の心に長く残る音楽の香りを届けたいというチームの抱負が込められている。メンバー5人全員がビジュアル担当と評されることも。2024年3月に1stシングル『Re:Scene』を通じて正式デビュー。同年12月には東京タワーで日本初イベントを開催した。
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