BTSのVが、車内で流れた一曲に一気に反応した。
流れていたのは、3人組ガールズグループSeeYa(シーヤ)のヒット曲『愛の挨拶』。
前奏が聞こえるや否や、Vはテンションを上げ、「SeeYa先輩たちが再び集まりました。僕は本当にファンなんです」と語った。
最近のK-POpファンに、「SeeYa」という名前はあまりなじみがないかもしれない。
しかし韓国では、2000年代の歌謡界を語るうえで外せない“名グループ”の一つだ。切ないメロディ、圧倒的な歌唱力、3人の濃密なハーモニーで多くのヒット曲を残した。
そして同時に、急な解散、不仲説、長い沈黙、メンバー同士の誤解まで抱えてきた、かなり傷の多いグループでもある。最近、そんな3人が再結成し、改めて注目を集めている。
Vが「本当にファン」と語ったSeeYaは、ただの懐かしのガールズグループではないのだ。
BTS・Vが反応したSeeYaとは?

SeeYaは2006年にデビューした3人組ガールズグループだ。
メンバーはナム・ギュリ、イ・ボラム、キム・ヨンジ。『女の香り』『狂った愛の歌』『深い夜を飛んで』などのヒット曲で愛され、2000年代の韓国歌謡界で“泣けるボーカルグループ”として存在感を示した。
SeeYaの強みは、アイドル的な華やかさよりも、歌そのものにあった。切ないメロディに、3人の声が重なり、ドラマのような感情を作る。いまのK-POPガールズグループとは少し違う、歌謡曲的な情緒とR&Bの色を持ったグループだった。
だからこそ、Vの反応も印象的だった。世界的スターであるVが、まるで一人の音楽ファンのように反応したことは、SeeYaというグループの存在感を改めて浮かび上がらせた。

SeeYaは2011年の『Goodbye』アルバム活動を最後に解散した。
グループ解散後、ナム・ギュリは女優として活動の幅を広げ、ドラマ『カイロス~運命を変える1分~』ではMBC演技大賞の優秀演技賞を受賞するなど、俳優として存在感を示した。
キム・ヨンジとイ・ボラムはソロとして活動し、2018年には2人で『化粧をして』をリリースしたこともある。
その3人が、デビュー20周年を機に再び完全体で集まった。
彼女たちは5月14日、デビュー20周年記念フルアルバム『First, Again』で復帰。タイトル曲『Stay』では従来のイメージから踏み出し、エレクトロニックダンスに挑戦した。一方で、先行公開曲『Still Here, Still Us』では、SeeYaらしい切ない感性も見せている。
復帰後の反応も熱い。『Stay』や『Still Here, Still Us』は韓国の主要音源チャート上位に入り、SeeYaは報道番組『ニュースルーム』、バラエティ番組『憎いわが子』『ラジオスター』、歌番組『不朽の名曲』などにも相次いで出演している。
特に5月30日に放送された『不朽の名曲』でSeeYaは、15年の空白を感じさせないライブを披露。キム・ヨンジの高音、イ・ボラムの豊かな声量、ナム・ギュリの独特なトーンとパフォーマンスが重なり、視聴者からは「単独コンサートを開いてほしい」という声まで相次いだ。

その期待に応えるように、SeeYaは8月から全国ツアー「THE FAN」を開催する。ソウルを皮切りに、釜山、大邱、清州、水原まで、全国5都市を回る予定だ。
ここだけを見れば、SeeYaの復活は美しい再結成ストーリーに見える。だが、このグループの20年は、それほど単純ではない。
長くつきまとった“不仲説”
SeeYaには、長い間“不仲説”がつきまとってきた。
大きなきっかけは、2009年のナム・ギュリの脱退と、その後のグループ解散だった。グループの中心的存在だったナム・ギュリが離れ、SeeYaはやがて活動を終えた。その流れから、メンバー同士に深い溝があったのではないかという見方が長く残った。
2020年に『シュガーマン3』で3人が久々にそろったときも、再結成への期待は高まった。しかし、そこからすぐに本格復活へ進んだわけではなかった。ファンの目には、やはり埋まらない距離があるように映ったはずだ。
しかし、今回の再結成をめぐってメンバーたちが語った言葉からは、少し違う見え方も浮かび上がる。

彼女たちは、不仲説について「大きな問題というより、誤解が積み重なっていた」と振り返っている。再結成のきっかけは、ナム・ギュリがあるイベントでSeeYaの曲を歌うため、音源が必要になり、イ・ボラムに連絡を取ったことだった。
そこから久しぶりの会話が始まり、食事をしながら話すなかで、過去の再結成がうまくいかなかった過程にも、自分たちが知らなかった誤解があったと気づいたという。さらにキム・ヨンジとも個別に会って話し、最終的に3人で顔を合わせたことで、「再結成できないほどの問題ではなかった」と理解し合えた。
SeeYaは、はっきりした決裂によって戻れなかったというより、長く放置された誤解と距離によって、戻るタイミングを失っていたグループだったのかもしれない。
SeeYaの物語で重いのは、メンバー同士の関係だけではない。
解散当時、彼女たちはまだ若かった。人気グループとして走り続けるなかで、十分に話し合い、関係を整える余裕があったとは言いにくい。
また、ナム・ギュリという人物の“正直さ”も、SeeYaの物語を複雑にしている。

彼女は、2011年に整形した事実をテレビで率直に明かし、所属事務所から「あまりに正直すぎる」と警告を受けたことがあるという。これに対しナム・ギュリは、2021年のラジオ番組で「“事実なのにどうすればいいのですか”と言った」と笑いながら振り返っていた。若い頃はその率直さゆえに、事務所から怒られることも多かったそうだ。
このエピソードは、単なる整形告白の話ではないだろう。SeeYaというグループが、歌唱力だけで語れる“きれいな物語”ではなく、メンバーそれぞれの感情や言葉の強さ、そして事務所との距離感まで抱えた存在だったことを示している。
特にナム・ギュリは、解散当時を振り返り、「幼かった私たちの周りに、良い大人が一人でもいてくれたらどれほど良かっただろうと何度も考えた」と語っている。さらに「もしそうだったら、SeeYaはもっと素敵なグループとして、長く残っていられたはず」とも話した。
イ・ボラムも、突然の解散について「正直、あんなに急に解散するとは思わなかった」と振り返り、最後の別れのステージでは「狂ったように涙が止まらなかった」と明かしていた。
若くして人気グループになり、忙しさや会社の事情、メンバー間の誤解、外部の視線のなかで、関係を修復する機会を十分に持てなかった。SeeYaの空白は、メンバーだけの問題として片づけるにはあまりに重い。
“傷だらけの名グループ”という表現が合うのは、そのためだ。
15年かけ自分たちを取り戻しつつあるグループ
再び完全体で戻ってきたSeeYaには、称賛が集まっている。
『不朽の名曲』のステージには「3人が一緒にいるときこそ真理」「ライブの実力は永遠」「すぐに単独コンサートを開いてほしい」といった反応が寄せられた。
ただ、露出が増えれば、別の角度から話題になることもある。
最近は、グルメ番組『食客ホ・ヨンマンの定食紀行』での一幕も注目された。メンバーたちは自然産のハマグリ蒸しを食べる場面で、年長者のホ・ヨンマンがまだ箸をつけていない状態で先に食べ始めた。これを見たホ・ヨンマンは「礼儀がないな。私が食べてもいないのに先に全部食べて」と注意した。
突然の指摘に、メンバーたちは「すみません。先に召し上がったと思いました」と謝罪している。
これは不祥事というより、バラエティでの一場面に近い。それでも、完全体復活によってテレビ出演が増えれば、歌声への称賛だけでなく、こうした小さな言動も話題になる。

15年ぶりの復活とは、過去の名曲をもう一度歌うことだけではない。現在のテレビやネットの視線に、もう一度さらされることでもある。
BTS・Vが「本当にファン」と語ったことで、日本のK-POPファンのなかにもSeeYaに関心を持った人は少なくないだろう。
SeeYaを知るうえで大切なのは、ヒット曲の多さや歌唱力に加えて、彼女たちが歩んできた複雑な時間だ。
彼女たちは、2000年代の韓国歌謡界を彩った実力派グループであり、急な解散と不仲説に長く苦しんだグループでもある。15年の空白を経て戻ってきた今回の復活には、単なる懐かしさを超えた重みがある。
Vが反応した『愛の挨拶』は、SeeYaの過去を象徴するヒット曲の一つだった。そして、いまのSeeYaは、その記憶を抱えたまま、新しい時間をもう一度始めようとしている。
傷を抱えたまま、それでも3人で戻ってきたこと。それこそが、SeeYaの復活をこれほど感情的なものにしている。
SeeYaは15年をかけて、自分たちの歌と関係をもう一度取り戻しつつある名グループなのだ。
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