北中米ワールドカップ(W杯)グループA第1節でチェコを2-1で破り、16年ぶりとなるW杯初戦勝利を挙げた韓国代表。この歴史的白星の立役者となったのが、途中出場から劇的な逆転ゴールを決めたFWオ・ヒョンギュ(ベシクタシュ)だ。
1-1で迎えた後半24分、主将のソン・フンミンに代わってピッチに投入されると、同35分にファン・インボムのクロスから値千金の勝ち越し弾を突き刺した。
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しかし、歓喜の裏には壮絶なコンディション不良との戦いがあった。オ・ヒョンギュは試合直後のフラッシュインタビューで、当日に38度の熱があったことを告白。「“今日の試合に出られるだろうか”と何度も考えた」と打ち明かし、日本でもそれを翻訳して伝えた『日刊スポーツ』の記事がYahooトピックスで取り上げられたと聞く。
それだけ日本でもインパクトがあったようだが、気になるのは「高熱があってもなぜプレーできたのか」ということだろう。前出の記事のヤフコメ欄にも「高熱の原因が感染症である可能性を考慮し、選手は休むべきだ」という趣旨のコメントが多かったようだが、そもそもなぜオ・ヒョンギュは高熱があってもピッチに立てたのだろうか。

その舞台裏を韓国代表の医療スタッフが明かしてくれた。
試合当日の朝はベッドから起き上がれず
韓国代表には複数の医療スタッフがいる。首席チームドクターのソン・ジュンソプ医師とペク・チョングク医務チーフだ。ふたりはオ・ヒョンギュの出場について「奇跡に近い出来事だった」と振り返る。
「実はアメリカ・ソルトレイクシティでの高地合宿からメキシコに移動する際、一部の選手に下痢の症状が見られた。オ・ヒョンギュは試合直前になって下痢と脱水、発熱の症状を示した」(ペク医務チーフ)
ソン・ジュンソプ医師によると、オ・ヒョンギュの体調不良は突発的なものではなかったという。
「オ・ヒョンギュは代表招集前から2つの問題を抱えていた。所属チームでのハムストリングの負傷により、事前キャンプ地のアメリカ・ソルトレイクシティでの序盤のトレーニングから除外された。その後、回復して高地適応を進める中で脱水や発熱を伴ったが、ペクチーフがしっかりと管理してくれた」(ソン医師)
ペク医務チーフによると試合当日のオ・ヒョンギュは「朝はベッドから起き上がることすらつらそうだった。トイレに行くのもままならないほどだったが、症状に合わせた治療を行ったところ、昼食を食べてから回復に向かった」という。
具体的な治療法について、二人は「秘密」だと口を揃えたが、「ペクチーフが解熱剤の投与や水分補給を適切に行ったおかげでパフォーマンスに影響はなかった」(ソン医師)と、メディカルチームの迅速な対応が功を奏したことを強調した。
「オ・ヒョンギュはもともと非常に自信に満ちた選手。“ピッチに立つ”という強い意志を持って準備を進め、見事に結果を出してくれた」と、オ・ヒョンギュの精神力を称えることも忘れなかった。
最悪のコンディションを克服し、一躍ヒーローとなったオ・ヒョンギュ。「絶対にピッチに立つ」という不屈の意志と、それを陰で支えた医療スタッフの迅速かつ的確な仕事ぶりがあったからこそ、あの劇的ゴールは生まれたということか。
なお、ソン医師は鹿島アントラーズに所属するDFキム・テヒョンの状態についても明かしてくれた。
鹿島キム・テヒョンは一時は「登録抹消」の危機も
チェコ戦の2日前のトレーニング中に足首を負傷し、一時は登録抹消も検討されたキム・テヒョン。登録抹消は回避されたものの、「グループステージ3試合への出場は難しいだろう。32強(決勝トーナメント)に進出すれば、その時に走れるかもしれない」と漏らしていたほどだった。
ソン医師によると「ケガは非常に深刻なものと見ていた。ケガの程度はMRIで判断するほかない。そこで現地で急遽MRI検査を行った。(足首の)靭帯が1センチ裂けているのか、2センチ裂けているのかによって診断は変わるが、当時は正確に確認できなかった」という。
「それで内出血の量で判断することにした。24時間後に腫れの引き具合と合わせてチェックしたところ、日常生活の中で足をひねった程度の軽い捻挫レベルだと分かった。プレーに問題はないと判断した」という。どうやら最悪の事態は免れたようで、早ければグループリーグでの出場もあるかもしれない。
いずれにしても、16年ぶりとなるW杯初戦勝利という最高のスタートを切った韓国。次のメキシコ戦に向けてチームは準備を進めている。
【今日のメキシコ】

取材に応じてくれた首席チームドクターのソン・ジュンソプ医師(左)とペク・チョングク医務チーフ(右)


