サッカー韓国代表が苦しむ一方で、日本代表はピッチ内外で存在感を高めている。
北中米ワールドカップのグループA最終戦で、韓国は南アフリカに0-1で敗れた。
1勝2敗の勝ち点3にとどまり、グループ3位に転落。決勝トーナメント進出の可能性は残しているものの、他グループの結果を待つ立場となった。
一方の日本は、グループFでオランダと2-2で引き分け、チュニジアには4-0で快勝。最終戦のスウェーデン戦を前に、グループ突破へ大きく前進している。
ピッチ上で日韓の状況が対照的となるなか、ピッチ外でも日本は世界的な注目を集めている。
試合後、日本サポーターが観客席に残り、青い袋を手にゴミを拾う姿だ。
1985年の日韓戦に残された証言

日本サポーターの“清掃行動”は今大会でも繰り返された。オランダ戦後、日本のファンがスタンドに残ってゴミを回収する様子が海外メディアに取り上げられ、称賛された。
日本のサポーターが試合後にゴミを拾う光景は、もはやワールドカップの定番になったといってもいいだろう。2018年ロシア大会、2022年カタール大会でも大きな話題となり、北中米大会でも再び「日本らしいマナー」として世界から称賛を受けている。
だが、この日本らしい振る舞いとして定着した光景に、韓国との意外な因縁があったという話が浮上している。
この話は、韓国メディアが突然言い出したものではない。きっかけの一つとなったのは、日韓夫婦ユーチューバー「ぱく家」が6月15日に公開した動画だった。
同チャンネルは「韓国のため日本人たちがワールドカップでゴミを拾うようになった理由」と題した動画で、日本サポーターのゴミ拾い文化の原点が1985年10月26日に東京で行われたメキシコW杯アジア最終予選、日韓戦にあると紹介した。
根拠として挙げられたのは、在日本大韓民国民団の機関紙や、浦和レッズのサポーター史を記した『THE RED BOOK 闘うレッズ 12番目の選手たち』などだ。
この1985年の日韓戦で、日本は韓国に1-2で敗れた。韓国は1986年メキシコW杯本大会出場へ進み、日本は初のワールドカップ出場を逃した。
その敗戦後、当時の日本サポーターが見たのが、韓国を応援していた在日コリアン応援団によるスタンド清掃だったという。『THE RED BOOK 闘うレッズ 12番目の選手たち』には、当時の観戦者による印象的な証言が残されている。
「負けた僕らはくやしくて、虚しくって茫然としてスタンドに目をやったら、自分たちで出したゴミを、韓国の人が拾ってるんですよ。涙が出ました。ああ、ここまでやられたら勝てねえよなあって」
この証言は、6月22日の『朝日新聞』も取り上げている。同紙は、ワールドカップで定着した日本サポーターのゴミ拾いの原点として、1985年の日韓戦と、当時の韓国サポーターのスタジアム清掃に触れた。
そのうえで、6月25日には韓国紙『ハンギョレ』が「ぱく家」の動画を紹介する形で、この“日本の善行”の背景に韓国との因縁があったという見方を伝えた。
つまり、1985年の日韓戦をめぐる記憶が、日本側と韓国側の双方から掘り起こされているということだ。
“日本らしいマナー”は韓国への敗北感から?
もちろん、韓国サポーターがゴミ拾いを“発明”したという話ではない。
注目されているのは、現在の日本サポーター文化の形成に、1985年の日韓戦での行動が影響を与えた可能性がある、という点だ。
この構図には、なかなか皮肉が効いている。
今や世界が称賛する日本サポーターのゴミ拾いは、「日本人の公共心」「日本らしいマナー」「幼い頃からの教育」といった文脈で語られることが多い。実際、海外メディアも日本ファンの清掃を称賛し、「来たときと同じようにきれいにして帰る文化」と紹介してきた。

ただ、その原点の一つに、韓国に敗れた日本側の悔しさがあったとする見方は、単なるマナー論とは違う文脈を浮かび上がらせる。
選手が負けただけではなく、サポーターとしても敗北感を味わった。韓国の応援団は試合に勝ったあと、自分たちのゴミを拾って帰っていった。そこまで見せつけられた日本側が「ここまでやられたら勝てない」と感じた。
勝敗だけでなく、応援文化でも差を見せられたという敗北感。それが日本サポーターの行動を変えるきっかけになったのだとすれば、ワールドカップ名物のゴミ拾いは、日韓サッカー史の一場面と結びつけて語られることになる。
しかし皮肉なことに、今大会では韓国が南アフリカに敗れて突破危機に追い込まれ、日本はグループ突破へ近づいている。さらにピッチ外では、日本サポーターの清掃文化が世界から称賛されている。
日本国内からの冷ややかな視線も紹介
もっとも、韓国メディアは、日本サポーターのゴミ拾いが無条件に称賛されているわけではないことも報じている。
前出の『ハンギョレ』は、「家では掃除をしないくせに、外に出ると率先して模範を示しているふりをする」という日本ネットユーザーのX(旧ツイッター)の投稿を取り上げ、日本国内で出ている冷ややかな反応も紹介した。
また『ハフポストコリア』も、日本サポーターのゴミ拾いについて紹介した際、日本の一部女性たちが「外では掃除するのに、家ではどうなのか」といった反応を見せていると付け加えた。
日本の男性たちが公共の場では模範的に振る舞う一方、家庭内の家事分担では女性に負担が偏っているのではないかという問題意識だ。
同メディアは、日本の総務省による2021年の社会生活基本調査を取り上げ、「6歳未満の子どもがいる世帯で、男性の家事・育児関連時間は一日平均1時間54分、女性は7時間28分と集計された」とし、「日本での夫の家事労働時間は妻の4分の1水準」と報じた。
もちろん、スタジアムのゴミを拾う行為そのものが否定されているわけではない。
ただ、その背景に1985年の日韓戦があったという見方は、韓国との勝敗を超えたライバル意識や、サポーター文化が育っていく過程の記憶を浮かび上がらせる。
今大会の現状は対照的だが、サッカーにおける日韓の因縁は、ピッチの外にも刻まれているのかもしれない。
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