ソ・ジソブの主演ドラマ『エージェント・キム:リアクティベーティッド』が韓国で異例の好発進を見せるなか、意外な層から熱い応援が集まっている。
それは、海外の独立・芸術映画を愛する映画ファンたちだ。
韓国のオンライン映画コミュニティでは、同作の放送を前に「恩返しの時間だ」「映画オタクなら本放送を見なければ」といった反応が相次いだ。
なぜ、映画ファンたちはソ・ジソブのドラマにそこまで熱を上げているのか。
異例ヒットのなかで広がる“恩返し視聴”
もちろん、作品そのものの勢いも大きい。
Netflixでも配信中の『エージェント・キム』は、韓国で6月26日に初回が放送され、翌27日に放送された第2話で全国視聴率15.7%を記録した。

瞬間最高視聴率は18.1%まで上昇し、土曜日に放送された番組全体で視聴率1位、同時間帯1位、週間ミニシリーズ1位に立った。
第1話の9.5%から一気に6.2ポイント上昇し、わずか2話で15%を突破。韓国メディアによれば、2話で15%を超えたのは2021年の『ペントハウス3』以来、5年ぶりだという。
同作は、同名ウェブ漫画を原作とする復讐アクションドラマだ。世の中で最も平凡に見える父親が、たった一人の娘を取り戻すため、世の中で最も危険な男へと変わっていく過程を描く。
ソ・ジソブが演じるキム部長は、普段は中小規模の貯蓄銀行で働く平凡な会社員。しかしその正体は、過去に数々の特殊作戦に投入された秘密要員だった。行方不明になった娘ミンジを捜すため、彼は封印していた過去を再び呼び覚ましていく。
つまり、視聴率だけを見ても話題作であることは間違いない。だが、今回の盛り上がりで興味深いのは、ドラマファンだけでなく、映画ファンたちが“義理視聴”ともいえる形で応援している点だ。
その背景には、ソ・ジソブが長年続けてきた海外映画の輸入・投資活動がある。

ソ・ジソブは俳優活動とは別に、2014年ごろから海外の独立・芸術映画を韓国に紹介する活動に関わってきた。商業的に大きな利益を見込みにくい作品であっても、良い映画を韓国の観客に届けたいという思いから、映画の輸入・配給に関わる投資を続けてきたのだ。
韓国メディアによれば、彼は『あなたを抱きしめる日まで』をはじめ、『ぼくを探しに』『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』『関心領域 The Zone of Interest』など、海外の個性ある作品を韓国に紹介するうえで一役買ってきた。
近年も『悪魔と夜ふかし』『サブスタンス』などの作品に関わったとされ、映画ファンの間では、単なる人気俳優ではなく“良い映画を連れてきてくれる人”として知られている。
しかも、それは必ずしも大きな利益を生む活動ではなかったようだ。
ソ・ジソブは過去のインタビューで、映画輸入事業について「正直、簡単ではない。損失も大きく、赤字になる」と語ったことがある。それでも「損をしても、これからも続けたい気持ちがある」と明かしており、映画ファンの間ではその姿勢が支持されてきた。
そうした積み重ねがあるからこそ、今回の『エージェント・キム』にも映画ファンの応援が集まった。
オンラインコミュニティには「映画ファンの救世主ソ・ジソブのドラマ、本放送1時間前」「映画オタクなら本放送を見よう」といった視聴を呼びかける投稿が相次いだ。
放送後にも、「知られていない外国映画をたくさん紹介してくれたから、応援の意味で見る」「ソ・ジソブに恩を返したかったが、ドラマがうまくいって本当にうれしい」「ドラマがうまくいけば、また良い映画を輸入してくれるだろう」といった反応が続いた。
この“恩返し”は、今回が初めてではない。

以前から韓国の映画ファンたちは、ソ・ジソブが出演したミュージックビデオを繰り返し再生するなど、いわゆる“恩返し消費”を行ってきた。
コメント欄には「『関心領域』『サブスタンス』の恩返しに来た」「これからも良い映画をお願いします」といった感謝の声が並んだ。
俳優としての人気だけでは説明できない、少し珍しい応援のされ方だ。
『エージェント・キム』の好発進は、もちろん作品そのものの力によるところが大きい。ソ・ジソブの4年ぶりのドラマ復帰、父性を前面に出した復讐アクション、ウェブ漫画原作のわかりやすさ、そして初回から畳みかける展開が視聴者を引き込んだ。
ただ、その背後に映画ファンからの“信頼貯金”があることも見逃せない。
ソ・ジソブは、スクリーンの外でも映画ファンに支持されてきた俳優だった。損をしても良い映画を届けたいと語り、実際に海外の独立・芸術映画を紹介し続けてきた。
その積み重ねが、4年ぶりのドラマ復帰作に思わぬ追い風を吹かせている。
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