K-POPが世界市場で存在感を広げる一方、その本場である韓国では今、J-POPが静かに存在感を強めている。
象徴的なのが、少女時代テヨンが歌った『晩餐歌』だ。
同曲は、日本のシンガーソングライターtuki.の代表曲を韓国語で再解釈したリメイク音源で、「J-POP REMAKE」プロジェクトの第1弾として6月29日18時に公開された。
リリース直後から反応は大きく、Bugsのリアルタイムチャートとデイリーチャートで1位を記録。7月2日午前基準では、Melon TOP100で13位、HOT100(発売100日以内)で5位、HOT100(発売30日以内)で1位、Genieリアルタイムチャートで17位に入るなど、韓国主要音源チャートで好成績を残した。
日本の楽曲を韓国のトップボーカリストが歌い、韓国の音源チャートで上位に入る。かつてJ-POPが一部マニア層の音楽と見られがちだったことを考えると、これは小さくない変化だ。
しかも、今回の『晩餐歌』のヒットは単発の現象ではない。

韓国でのJ-POP人気は本物か
音楽プラットフォーム「Genieミュージック」の集計によると、2026年上半期、韓国国内におけるJ-POPジャンルのストリーミングは前年同期比29.5%増加した。
2年前の2024年と比べると、なんと57.5%増だという。
韓国国内の年間音源利用量が2019年をピークに減少傾向にあるなか、特定ジャンルの利用量が約30%伸びるのは異例と受け止められている。
では、なぜ今、韓国でJ-POPが聴かれているのか。
『聯合ニュース』は、Genieミュージック関係者の分析として、「日本の劇場版アニメの人気、日本アーティストの来韓公演、放送出演などによって、日本の大衆音楽に触れ、楽しむ機会が増えたことが影響した」と紹介した。
実際、韓国で人気を得たJ-POPの多くは、音楽単体ではなく、何らかの“入口”を持っている。
例えば、Genieミュージックの集計で上半期J-POPの1位となった『IRIS OUT』は、米津玄師の曲で、韓国でも人気を博した映画『チェンソーマン レゼ篇』の主題歌だ。

2位の『Pretender』(Official髭男dism)は、歌手の竹中雄大が『日韓歌王戦2025』で披露し、関連動画の再生回数が1500万回を超えるほど韓国で大きな話題となった曲だ。3位の『ベテルギウス』(優里)も、歌手カンナムが歌った動画が2000万回を超えるなど、反響を呼んだ。
アニメの主題歌、YouTubeやOTTを通じて接触したコンテンツ、あるいは来韓公演や音楽番組出演。かつてのようにCDショップや専門番組を通じて探しに行く音楽ではなく、アルゴリズムや映像コンテンツの中で偶然出会う音楽として、J-POPは韓国の若者の耳に届いているわけだ。
その変化を、より音楽的な観点から説明する声もある。
『聯合ニュース』が紹介した大衆音楽評論家イム・ヒユン氏の分析が興味深い。
同氏は、K-POPアイドルのヒット曲がショートフォームチャレンジやオンライン上のバイラルに集中するなか、「歌の感性的な部分や歌詞が与えるカタルシスに物足りなさを覚える層がいる可能性がある」とし、「その部分をJ-POPが埋めていると見ることができる」と指摘した。
そして「特にJ-POPは、アニメなど物語性のあるコンテンツと結びつくことが多いため、感情的により没入しやすい」とも見ている。

K-POPが洗練されたパフォーマンスやビジュアル、短いフックの強さでグローバル市場を攻略してきたとすれば、J-POPは別の回路で韓国の若者に届いているという分析だろう。
「J-POPはK-POPの心臓部でシェアを広げている」
さらに踏み込んだ見方を示しているのは、韓国メディア『マイデイリー』だ。
同メディアは、J-POPが韓国の10・20代の主流プレイリストに入り込み、その流れがオフライン公演市場に広がっていると分析した。「かつて弘大(ホンデ)周辺の小規模ホールを中心に行われていた日本歌手の来韓公演は、今では1万席以上の大型会場へと場所を移している」と指摘した。
藤井風が高尺(コチョク)スカイドームで再び来韓公演を行うことや、木村拓哉がデビュー38年で初の韓国公演に乗り出すことを取り上げ、「現在の(韓国)国内に吹いているJ-POPブームのチケットパワーを端的に見せてくれる事例だ」と報じた。
そして「これまでK-POPは、トレンディな音楽と精巧なシステムを武器に、日本音楽に対して明確な比較優位を保ってきた。しかし音楽消費の国境が崩れた今、J-POPはK-POPの心臓部である韓国市場で静かにシェアを広げ、主流のヘゲモニーを揺さぶっている」と表現している。
他にも『ニューシス』は、大衆音楽評論家ファン・ソンオプ氏の新刊『聴いてみる? J-POP!』を紹介しながら、J-POPをもはや“辺境のマニア文化”ではなく、フェスティバルやグッズ消費まで含む巨大な「嗜好共同体」へ進化したものとして捉えている。
同記事によれば、現在のJ-POP人気は単なる流行の繰り返しではない。imaseの『NIGHT DANCER』やYOASOBIの『アイドル』が韓国で反応を得た背景には、「音楽消費方式の大きな転換がある」。かつて“探しに行く音楽”だったJ-POPは、今や韓国の若者の日常に自然と流れ込む音楽へと変わりつつある、という見方だ。

K-POPの本場でJ-POPが聴かれる。かつてなら逆説的にも見えたこの現象は、いまや韓国メディアが真剣に分析する音楽市場の変化となっている。
「音楽に国境はない」という言葉はありふれている。だが現在の韓国で起きているJ-POP人気は、その言葉が単なる理想論ではなく、チャートと公演市場の現実になりつつあることを示している。
■仕掛け人は“元日本人” 今さら感のある「J-POPを韓国語で歌う企画」は大丈夫か


